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小話
ガイが小さくなりました そのちょい前
「うっひょー、ちっちぇー」
ちいさくなったガイをルークは脇に手を差し入れて、抱え上げる。
「かりぃー」
抱え上げてぐるぐる回して、満足して大理石の床に下ろすと、次は自分が腰を落として片膝をつく。
「俺が屈んでおんなじくらいか」
掌を自分の髪の天辺に触れながら測る。
「ルーク。ガイはあなたのおもちゃではありませんのよ」
「あーあ、ありゃ相当浮かれてるね」
「ルーク、いい加減になさい」
「背の低い劣等感から開放されてご機嫌なんでしょう。放っておきなさい」
ナタリア達の諌める声は右から左に流れたが、最後のジェイドの言葉だけはしっかり耳に残ったらしく、ルークはくるりと振り返る。
「うるせー、いっつも見下ろされてきた俺の気持ちがわかるかっ」

事の起こりは、セーブポイントで決戦前という事で体力気力を回復すべく皆でグミを口にした。
その時、何故かガイが小さくなったのだ。
ジェイドの試験薬のせいらしいが、張本人は涼しい顔をして「おやおや、大変な事になりましたねえ」と他人事であった。
小さくなったガイは、記憶もそのまま幼少児のものになっているらしく「え?え?お兄さん、お姉さんは誰?」と言った具合だ。

ルークのはしゃぎっぷりに驚いてなすがままであったガイが漸く状況に慣れてきたらしい。
少しもじもじしながら、こわごわとルークの髪に触れる。
「あかい…かみ」
「へっ、ああ、まあ、赤いな」
「赤い髪の人、ぼく、初めてみた。綺麗だね」
髪を一房掴んだまま、少しはにかみながら、幼い口調で話す。
「そっか、ルークの赤毛は珍しいもんね」
「キムラスカでも希少ですもの。マルクトならば尚更ですわね」
「…ルーク、あなたどうしたの!震えているじゃない」
幼いガイの肩をがしっと掴んで、ルークは俯いたまま肩を大きく震わせている。
「………ぃぃ」
小さく震える声に、女性陣が聞き漏らすまいと近寄る。と、同時にルークは顔をがばっとあげる。
「かわいいなぁぁぁ!!ガイ、お前はこれからずっとこのままでいろ!これ、命令な!」
「ルーク!馬鹿な事を言わないの!!」
「そうですわ。ガイとあなたは、命令とか、もうそのような関係ではなくなったのでしょう」
「ナタリア〜、突っ込むところが違うよ」
「だってさ、今まで俺はガイの世話になってきたわけだろ。これからは俺がガイの面倒をみてやるんだ。
風呂もいれてやるし、ごはんも食べさせてやるし、歯も磨いてやるし、寝る前は本を読んでやるし、おねしょも隠してやるし」
立ち上がって女性陣に対して力説するルークに、アニスがニヤニヤと笑う。
「へー、おねしょ、かくしてもらってたんだ」
「ちがっ、こ、こ、言葉のあやって、やつだ!!」
「薬の効能時間は限りがありますよ。それよりも宜しいのですか。あの先にはヴァンがいるはずですが」
その言葉にばっと弾かれたように階段をみると、一段一段のぼっているガイがそこにいた。
「うわああああ、ま、まずい!つーか、ジェイド、あんた見てないで止めろよ!!」
「子供はどう扱ってよいのか」
と笑って肩をすくめてみせる。
「まて、まてええ、ガーイ!!そっちはだめだああああ」
ルークの絶叫がエルドラントで再築されつつあるガイの屋敷に轟いた。





結局大丈夫なんですけどね

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