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リクエスト小説
リクエスト8
公爵ガイと思いきや……なJG (匿名様)


マルクト帝国が誇る頭脳の持ち主 ジェイド・カーティス大佐は大層困っていた。
だが滅多な事では表情を崩さない性分はこの時も発揮され、困惑の様子は相手には伝わってはいないだろう。
それに、ジェイドが困惑を寄せる相手も、それに気づく余裕など全くなかった。
歯を食いしばり、漏れる息は辛そうで、かたく閉じた目からは涙がボロボロと零れている。
参りました、まさか。
内心、溜息をつきながら組み敷いた相手の髪に指を差し入れ、ゆっくりと梳いてやりながら、ジェイドは穏やかに尋ねる。
それを尋ねるのはいささかデリカシーに欠ける行為とジェイドは理解していたが、きちんとしておかねば後々悔いる事になるだろう、と考えたからだ。

「ガイ、あなた、もしかして初めてですか」

一方、必死に痛みと衝撃に歯を食いしばり、不本意な涙を流しながら耐えていたガイは、その言葉が耳にはいると
「当たり前だろう!体質のおかげで女性と色恋沙汰など夢のまた夢の俺がいつ体験できると思ったんだ」
と八つ当たり気味に怒鳴りつけたい衝動に駆られるが、そんな余裕は今微塵も残されておらず、仕方なくコクコクと首を縦に振る。
その様子を見て、ふむ、とジェイドは考える。
普段のジェイドならば、人の心の機微を敏感に読み取る。本人が自覚していない事さえも勝手に読み取ってしまう。
旅をしている間、赤毛の子供は「ジェイドは絶対人の心が読めると思うんだ」と真顔で彼の幼馴染の親友、今裸でベッドの上で苦痛に耐えているガイに告げた事があるくらいだ。
だからわざわざ言葉で確認せずとも、ガイの今の状態から明白な事実を汲み取るのはジェイドの得意とする事であったはずなのだ。
そして、不幸にもジェイドの心を読み取る才は方向違いに発揮された。
「いえ、その意味合いではありません。あなたが女性経験がない事など周知の事実でしょう」
ガイの心の叫びはきちんと読み取って、わざわざ言葉にして返して彼の心の傷をグリグリっと抉る。
気にしている事を…と歯痒く思うガイの耳に、とんでもない言葉が入ってくる。
「私が言いたいのは、男性との経験ですよ。てっきりファブレ公爵あたりと」
それ以上続けるのはさすがのジェイドも躊躇ったようだ。もしかすると、次に起こる衝動に対して構えていたからかもしれないが。
一方のガイはその言葉が耳にはいり、脳に伝わりそれを咀嚼して理解した時、プチンとキレた。
「こ……こ……の……アホかぁぁぁぁっっ!!!!」


それが十分程前の出来事だった。
今、ガイはベッドの上でシーツで裸の身体をがっちり包み込み、いつもは穏やかな青い瞳はかなり剣呑な様子で、小さく唸り声をあげている。
強引に家に連れ込まれた野良猫のようだ。
ジュイドはシャツ一枚を羽織った状態でベッドの端に腰掛け、極上の微笑を浮かべながら
「無神経でした。すみません、謝りますから、機嫌をなおしてください」と謝り倒していた。
少しばかり距離があるのは、ガイがそれ以上近寄るのを許さなかったからだ。


そもそも先に仕掛けてきたのはジェイドの方だった。
何気ない会話の途中で、少しばかり黙った後、徐に告白をしてきたのだ。
ガイも告白された経験がないわけではない。ただ、男性からの告白は初めてであったし、しかも相手がジェイドだ。
その場をなんとか取り繕ってみたものの、数日ジェイドの顔が頭を占め、睡眠すら禄にとれない状態になってしまった。
告白が全く不快ではなく、しかも想いを告げられた時の事を思い出すだけで、顔が熱をもち心臓が早鐘をうち始めるのだ。
どう繕ってみても、自分がジェイドに寄せている想いが恋に変わったのだと自覚し、照れながらも受け入れる事を決めて、晴れて恋人同士になったのだ。
恋人同士になって一ヶ月程経ち、ガイがいつものように気軽にジェイドの邸宅に泊まりにいくと
「もうそろそろ、じゃないですかね」
と困ったように笑われて、いつもとは違う深い口付けに翻弄されて思考が停止しているうちに、あれよあれよという間に事態は急転していったのだ。
こちらが初心者なのも構わずにいささか強引に事を運ばれて困惑しつつも、ガイは腹を括って覚悟を決めたのだ。
そうだよな、恋人でお互い成人しているから当然の成り行きだよな。俺も男だ、覚悟を決めなきゃ次に進めない。
と、内心かなり戸惑ながらも表に出さず、ジェイドに身体を委ねたのだ。
そんなガイに待ち受けていたのは強烈な痛みで、しかもそれに健気にも声をたてず懸命に耐えていたのに、まさかのジェイドの言葉が落ちてきて、ガイがキレたのだ。
当然といえば当然の結果である。
とりあえず一時休戦とばかりに、ガイはジェイドの下から抜け出した。その行為もかなりの痛みを伴ったが、キレたガイの勢いはそれくらいでは止められなかった。
服を、と思ったが部屋の端に脱ぎ捨てられ、取りに行く間にジェイドに阻まれそうだと考え、とにかく自分を守る鎧のようにシーツをグルグルっとガイは身体に巻いた。
そして上目遣いでジェイドを激しく睨み上げる。
その視線に全く効果がないのかと勘ぐるくらいに、ジェイドはひどく上機嫌で、極上の微笑を浮かべて、ひたすらガイに謝辞の言葉を口にする。
「旦那、俺、凄く怒ってんだけど」
「ええ、わかってますよ。私の無神経な言葉のせいですよね、謝ります」
言葉の先を読み取られ、先手をうっての謝罪にガイは苦虫を潰したような顔になる。
「じゃ、もう少し申し訳ない顔出来ないのかよ。あんた、謝っている顔じゃないぞ」
「そうですね、本当に申し訳ないと思っているんですが」
一度言葉をきって、ずいっと顔を寄せてくる。ガイが思わず後退るがベッドヘッドに身体があたり、それ以上の退路がない事を知る。
「嬉しくてつい顔が綻んでしまって。根が正直なものですから」
いつもの人を食ったような発言に、ガイが不機嫌そうに眉を寄せる。
「何が嬉しいんだよ」
「愛する人の初めてになれるなんて、これ以上の幸福はないとおもいますよ」
そう言うと、触れ合う一歩手前まで顔を寄せてくる。
その言葉に思わず、かあっと頬を染めて顔を反らす。咄嗟の行動に頭の隅で、しまった、とガイは瞬時に思う。
これではもう怒りを持続出来ないし、表面だけの怒りを浮かべても効果など全く無いのだから。
それでもなんとか留まろうと「ジェイドが言うと嘘くさいんだが」とちょっと憎まれ口を叩く。
嘘くさいなど微塵にも感じてはいない。実際ジェイドの表情は明るく輝いているし、甘く蕩けるような空気を漂わせているのをガイはわかっている。
だが、このままではなんだか口惜しい。
「信用ないですねえ、私は」と言いながらも、相変わらずの上機嫌の様子だ。
「では態度で示しましょう」
何をベタな事を、とガイが突っ込む前に、無意識に身を纏うシーツを握る力が篭り身体が硬直する。
ガイの態度の原因をわかっているジェイドは、なだめるように、落ち着かせるように金の髪に口付けを落としながら
「大丈夫です。初心者には初心者向けのやり方がありますから」
あるのか、本当に、と疑わしげな視線をガイは無言で送る。あったとしてもあの痛みはハンパじゃなかったぞ、と咎める意味合いもこめて。
視線の意図する所をわかっていながらも、ジェイドは「ええ、大丈夫です。大船にのったおつもりで」とにこやかに笑ってみせた。
泥船じゃないだろうな、と悪態をつきながらも、ガイは素直にジェイドからの口付けを唇で受けた。


結果を言ってしまうなら、ジェイドの言った大船は豪華客船そのものだった、とガイは少し遠くに想いを馳せる事になる。
女性経験はもちろんの事だが、色香を振りまいているのだから経験済みだろうとジェイドから勝手に思われていた男性経験も皆無のガイだ。
初めのうちは触れられると感じるよりもくすぐったさが先にきて、笑いの衝動を抑えるのが大変だった。初めのうちは、だ。
ジェイドは的確に責め立て、すぐに思考が感覚に追いつかなくなった。
他人から与えられる刺激での快楽の波は強烈で、理性はかなり早い段階で跡形もなく流されて言った。
息を詰めないように、無闇に力まないように、などジェイドからガイは教えられた気がするが、それさえも頭には残らなかった。
「ん…ああっ……ジェイ…ドぉ」
と絶え間なく甘い声で喘ぎ、息を詰める暇さえなかった。
ジェイドの口腔で下腹部を含まれ、巧みな愛撫であっさりと達した後は、夢見心地で身体が弛緩して力などはいりようもなかった。
先程は苛烈な痛みを伴った挿入さえも、与えられる刺激に瞼の裏がチカチカ点滅している時に、圧迫感と多少の痛みは感じたが耐えられぬ程ではなかった。
揺さぶられていく内に、ガイの口からはひっきりなしに甘い声があがる有様だった。
ただ、最初は「この格好が一番負担が少ないですからね」とジェイドが言い、実際それで挿入を果たした後背位だったが途中から
「やはりガイの顔がみたいですね」と言い出し、つながったまま器用にひっくり返された時は、そこが引き攣って痛いし、顔を見せるのは恥ずかしいし、で大変だった。
膝裏に手をあてられ身体を二つに折り曲げるようにされると、深く体内に入り込んできて、激しく悶える事になった。
その痛みや圧迫感さえも心地よい快楽にすり替わり、貪るような口付けを交わし合う。
汗も唾液も吐息も融け合って混ざり合って。ひたすら二人で快楽を求めていった。
何もかも初めてづくしのガイにとって、快楽の嵐が体内を吹き荒れた一時であった。


嵐の後は穏やかな天候になるのが世の常である。
だから少しの間意識を飛ばしていたガイがそれを取り戻した時、先程の激しい情欲など微塵も感じさせず、涼しげな様子でジェイドが水差しをもって佇んでいた。
「声が涸れていませんか?」
と尋ねられると、確かにその通りだったので、ガイは素直に頷く。
にこりと笑ってみせると、グラスに水を注いでガイに手渡す。喉を通る冷たさに生き返る思いだった。
ゴクゴクと喉を鳴らして水を飲むガイを見つめながら
「男冥利につきますね」とジェイドがぽつりと呟く。
何が、ともう一度グラスを差出し、おかわりを要求するガイが尋ねると、優雅な仕草でグラスに水を注ぐ。
ガイが待ちきれないといった様子で水を飲み始めると、図ったように
「ガイにとって私は最初で最後の男になるんですから」と、とんでもない事を言って、ブーっとガイが水を盛大に噴出す事になる。




公爵×Gだと思っていたJがGを抱いたら実は初物でしたなJG を匿名様から頂きました。
ネタバレになると思い、初物部分を伏せさせての表示にさせていただきました。
甘く、軽く、んでエロ薄になってしまいましたが、凄く楽しかったです。
有難うございました。

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