[携帯モード] [URL送信]

リクエスト小説
リクエスト7
公爵ガイ←ジェイド 18禁要素含 (朱璃様)

バチカルに到着し、名物の吊り橋を渡りながらガイが
「悪いが俺は今日は宿に泊まらせてもらう」と言い出す。その言葉にルークがすぐさま反応を返す。
「なんでだよ!俺のやし……あ、そっか、そうだよな。」
途中でガイの立場や心情を思い出し、声のトーンを落としてガイの提案に納得する。ナタリアが
「では私のお城に泊まればよいではありませんか」と言ってみるが、それもガイは柔らかい笑みを浮かべながらも硬くなに固辞し、珍しくアニスが助け舟を出す。
「ナタリアは知らないだろうけど、前にお城に泊まった時にそりゃあもう大変だったんだよ。ガイのファンのメイド達が入れ替わり立ち代りでガイの世話をしたがっちゃってさ」
普通の男ならば至極幸福な事象だが、女性恐怖症のガイにすればそれは地獄に等しい行為だ。
「あら、そうでしたの。知りませんでしたわ」
「なら私もガイと同じく宿に泊まることにしましょう。この軍服で城の滞在すると、方々から痛い視線が突き刺さって繊細な私はとてもとても…」
ジェイドが額に手をあててふうっとこれ見よがしな溜息をつく。
それを皆が「誰が繊細だって」「俺の繊細の定義からは大きく外れているんだがなあ」「大佐が繊細……」と一斉に苦笑いを浮かべた。
バチカルでの用事を済ませた一行は、本日は泊まる場所がバラバラなので、ではまた明日と互いに手を掲げて解散する。
連れ立ってバチカルの街を歩きながら、ジェイドが「さて、これからどうしましょうか」と傍らのガイに問いかける。
「すまない、ちょっと先約があって」と、済まなさそうにするガイに「構いませんよ」とジェイドはいつもの薄い笑みをむける。
悪い、と片手をあげて去っていくガイの後ろ姿を見ながら、「あの様子ではあまり気乗りのしない約束のようですが」と小さく独りごちた。
バチカル到着前からガイがどこか落ち着かない様子だった事をジェイドは知っていた。
ガイはジェイド程ではないが、複雑な環境に長い間身を置いていた為か、本心を隠すことに長けている。
人の心の機微に誰よりも敏いジェイドだからガイの異変に気づけたともいえる。
ガイの様子に後ろ髪を引かれつつも、深入りする性格ではないジェイドは雑踏を目的もなく歩く。
歩いて、歩いて、そして歩みを止めて振り返る。ガイが消えた方向を。


敵国の首都を気軽に見て回る機会はそうそう無いことなので、ジェイドは街のあちこちに点在する譜業設備に目をやりながら、要塞都市とはよく言ったものですね、と内心苦笑いをする。
宿に向かう途中、雑踏の中に人目を惹く赤い髪の男の姿が目に止まる。何故このような場所に?とジェイドは不審に思う。
確かにこの先には軍司令部があるが、お抱えの騎士団を伴ないもせずに一人で動くような男ではない事は明確である。
胸騒ぎを覚えて、心なしか足早に宿に向かう。
鍵を開けてみれば真っ先に目に入るのが二つ並んだベッド。片方は大きく乱れている。少し前までこの上でどのような行為が行われていたのかは一目瞭然である。
奥の部屋からは水音が流れている。
ジェイドは一度溜息をついて、珍しく天を仰ぐ。
あと半刻程時間を潰してくればよいだけの話だ。彼はその間には、この部屋に立ち込めている残り香を跡形もなく消し去るだろう。
彼自身も、いつもの人好きのする陽気な笑顔で「遅かったな。そんな格好でこの街を一人で歩いてて平気なのかい」と情交の後を微塵も残さずにいつものように振舞うだろう。
私もいつものように何事もなかったかのように振舞えば良い、それだけの話だ。
だがジェイドはその場を動けないでいた。
踏み込めば壊れてしまうのだ、呆気無く。だが、ジェイドはどこかでそれを待ち望んでいた事を今知ったのだ。
曖昧にして直視しないように奥底に沈めて気付かずにいた己の気持ちは、乱れた寝台を突きつけられただけで、こんなにも呆気無く露呈し、存在を主張し始める。
壊さぬようにとしてきた最後の砦さえも打ち砕こうとしている。
後ろ手に鍵をかける。その音が耳に残る。
いつの間にか水音は止み、少しばかりの間の後に衣擦れの音が聞こえてくる。
浴室へと続く扉が開かれ、ガイが姿を現す。ジェイドの姿が視界に入った時、身体を強ばらせその場に立ち竦む。
「ジェ…イド」
搾り出すように、震えた声でようやくその名を呼ぶ。
ジェイドはいつものように薄く笑いを浮かべて、ガイとの距離を詰める。一歩ジェイドが近づけば、一歩ガイは下がる。だが、すぐに背は扉にあたる。
逃げ場のないガイは、ジェイドが近づいてくるのを直視出来ずに視線をそらす。
扉にジェイドの手が置かれる。逃がすまいとするように、ジェイドはガイを挟むような形で扉に手をつく。ガイの逃げ場は全て失くなった。
柔らかく罵倒されるのか、失望されるのか、侮蔑の視線を浴びせられるのか、ジェイドの次の行動がよめないガイは密かに震える。普段のジェイドならば無言で立ち去っていくはずだ。
ガイを追い詰め扉に縫いつける行動はあまりにもジェイドらしくない。
ジェイドの手が動くのをガイは視界の端で捉える。身体を竦ませると、そっとガイの頬に触れる。
「少し腫れています」
ガイの身体を奪った男に張られた頬を、真綿で包むように優しく穏やかに撫で、そっとガイの手を取り跡のついた手首をそっとなぞる。
動きを封じるためにきつく掴まれ、そのまま押さえ込まれて手首についた紅い跡。
「痛くはないですか」
優しくいたわる言葉に、ガイが必死で堪えていた感情が一気に溢れ出す。泣きたいのか、叫びたいのか、縋りたいのか、わからない。もしくはその全て。
溢れ出る感情のままに、ジェイドの肩口に顔を埋める。ぎゅっとジェイドの青い軍服を握り締めながら。
無言でそっと背を撫でるジェイドの優しい仕草にガイは泣きそうになる。
どのくらいそうしていたのだろう。
激情の波が引いて、ようやくガイが冷静さを取り戻し、ゆっくりとジェイドの肩から顔を外す。
ジェイドの顔を直視出来ずに、軍服を見ながらガイはポツリと零す。
「ありがとう」
「構いませんよ」
宥めるように背を摩っていたジェイドの手はガイの腰に回されている。まるでガイをこのまま離す気はないように。
ガイはその事に気づかずに、未だジェイドの軍服を握りしめたまま俯いている。
沈黙が部屋を支配する。ガイにとってはそれは羞恥による気まずさを大いに含んでいる。ジェイドが何かしら行動をしてくれれば助かるのだが、と胸の中で相手へ助け舟を乞う。
「今日は一緒に寝て差し上げますよ」
冗談を含む言葉に、ガイが漸く顔をあげてジェイドと視線を交わす。
「旦那とかい」
「ええ、眠れないようでしたら子守唄も歌ってあげましょう」
その言葉に思わずガイは吹き出す。その子守唄は聞きたいような、聞きたくないような。そんな軽口を叩きながら、ガイは笑う。
ガイが寝るはずの汚れてしまった寝台を使わないための気遣いに、ジェイドの優しさを感じて胸が熱くなる。
おそらくジェイドは自分が望めばそうしてくれるのだろう。だが、今は別のことを願う。
ジェイドの肩口に顔をまたうずめて、願う言葉を口に出す。
「抱いて欲しい」
ガイは思う。朝になれば、互いに何事も無かったかのように振舞うのだと。それが「大人」なのだとガイは充分に理解していた。
優しさだけで包まれた夜は、朝の光で呆気無く霧散し、表面上は何も残さずに終わるのだと。
ならば夜の名残として身体にジェイドを刻みたいと願う。浅ましい思いだとガイは分かっていながらも、それでもなおジェイドに乞う。
ガイは弱々しく途方にくれた子供のような顔でジェイドを見上げる。
ジェイドは柔らかく穏やかな笑みを浮かべて、ガイの髪に指を入れてゆっくりと梳きながら
「私には大層嬉しい誘いですが、貴方は大丈夫ですか」
問いかける。ガイの身体を労る言葉に、大丈夫だと言葉を返す代わりに啄むようにジェイドに口付けをする。


小さなキスを顔中に落とされて、ガイは羞恥で顔を赤く染める。自らが望んだ事とはいえ、いざ寝台に身体を横たえると恥ずかしさで身を焦がしていた。
俺はなんて事をジェイドに言ったんだ、と手足をバタつかせて、このままどこか逃げ出したくなる。
落ち着かせるように口付けを落としながらジェイドは囁く。ガイの後悔の念などジェイドは見通している。だからガイがこの腕から逃げ出さないように言葉を紡ぐ。
「私は貴方が好きですよ」
突然の告白に目を見張ったガイの様子に、満足そうに笑みを深くして、口付けを落とす。
「だから私に抱かれて下さい」
その言葉にガイは表情を緩める。誘うように、この先をねだるように、ジェイドの首に腕を回す。
また重ねられた口付けは深くなっていく。

「ん……っああ…ぅ……んううっ…」
甘い痺れがガイを襲う。少し前の情交の跡を消すように、全身に隈なく口付けを落とし、吸い上げ、新たな跡を刻んでいく。
一方的な奉仕に慣れぬガイは戸惑ながらも、嬌声は色づいて艶めかしい。
腰の辺りがジンと甘く痺れ、焦れったさに腰を揺らめかせる。
欲しくてたまらないというのに、わざとなのかと勘ぐるほどに緩慢に丁寧に愛撫を施していくジェイドに自分にはない余裕を感じてどこか悔しく感じる。
それともあの男が言うように俺は淫乱なのかと意識の端でガイが考えていると、ジェイドが「どうしました」と耳元で囁く。その吐息に全身が粟立つ。
何か言葉を促すように耳を舌先で舐められ、耳朶に歯を立てられる。身体をしならせ、思わず縋ったジェイドの腕にガイは爪を立てる。
「ジェイ…ド」
爪を立てられても、顔をしかめる事もない平素なままのジェイドにガイは乞う。
「あんたが欲しい」
嬉しそうに、ガイに初めて見せる心からの笑顔をジェイドは浮かべる。ガイのたった一言でこんなにも自分の心が掻き乱される事が素直に嬉しく思う。
それ程までの感情を人に向けたことなど無かったのだから。
ガイの体内に侵入していた指を抜き出し、熱い塊を押し付ける。ガイが息を詰めながら、その先を待ちわびるようにジェイドを快楽に潤んだ瞳で見上げる。
じわりと侵入してくる熱に、噛み締めていた口から「…ぁっ…んっ……」と甘い息が漏れる。
先端が収まったと同時に一気に根元まで腰を進める。その衝撃に、ガイは喉を反らせ、一瞬動きを止めて、身体を痙攣させる。
挿入の瞬間キツク締め上げられ、ジェイドも小さく唸る。
はあはあと荒い息を吐いて、胸を上下させているガイの額に唇を落として「そんなに欲しかったのですか。挿れたら達してしまう程に」と言うと、目の端を赤く染めたガイから睨まれる。
「すみません、嬉しかったものですから」と笑うと、身体に馴染ませるように小さく腰を動かす。その動きに達したばかりのガイにまた快楽の火が灯る。
「ん…はぁっ……」
「もう大丈夫ですか?」気遣うジェイドの言葉に、ガイは無言でこくこくと首を縦に振る。
では、とジェイドはガイの足を掲げて深く中に押入り、奥を穿つように腰を激しく進める。
「ひぁっ……あああっ…ぃ…ああっ…ん」
ガクガクと揺さぶられ、シーツを皺になるほどきつく掴んで、熱に翻弄される自分をどうにか止めようとガイは試みる。
だが、内壁を擦るようにして突きあげられ、激しさを増す抽送に何も考えられなくなる。
言葉はもう思考を通過せずに、思いのままの切羽詰った想いをそのまま口からひっきり無しにあげる。
「あああっ!もう、や……だ、だめ…また…ジェイ…ド……だ、め……ああっ……ジェイドっ。気持ち…い…」
腰から背を駆け抜ける快楽に身体を震わせて、また達すると同時に、身体の最奥で熱い迸りを感じた。


集合場所は宿屋の前。
「女性たちが遅いのなら話はわかるんだがな」
はあっと溜息をつくガイに、「母上があれやこれや持たせようとするのを必死で振り切ってきたんだぞ」と集合時間に遅れてきたルークがぶーたれる。
「誰かさんのおかげで出発時刻が遅れているのですから、そろそろ出発しますよ」とジェイドが大人げなく当て擦ると、ルークが顔を顰めて
「わーってるって。さ、行こうぜ」と先頭を歩き始める。
「やれやれ」とガイが苦笑いを浮かべて、ジェイドに「あんまりルークをいじめるなよ」と苦言を呈す。
「おや、私は誰かと言いましたが、別にルークの事は何も言ってませんよ」といつものように混ぜっ返す。
そこにはいつもの光景。先頭をルークが歩き、そのすぐ後ろで女性陣があれこれルークの世話をしたり、口出したり、からかったり。
最後尾を歩くのは年長の二人。いつものような会話。ただ違うのは、時々触れ合う二人の手の甲。密やかな二人の触れ合い。




朱璃様から「公爵×ガイ←ジェイド」で「公爵との情事後の処理現場をジェイドに見付かってしまう」「18あり」で
リクエストを頂きました。
色々とリク内容からそれてしまっておりますが、楽しく書かせて頂きました。
有難うございました。
朱璃様のみ持ち帰り可能です。


フリリクページに戻る


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!