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リクエスト小説
後編
ガイの身体は、誰のものともわからぬ体液で汚されていた。ぐったりと身体を弛緩させ荒い息を吐くガイを執拗にまだむさぼる男がいる。
ガイへ誘いをかけ断られた男だった。
他の二人が放った後の気だるさから、体力を回復するべく床に座って見守る中、男は飽きることなく、体勢を様々に変えてガイの身体を楽しむ。
力なく揺すられるままのガイに男が下卑た口調で笑う。
「あんな素っ気ない振りしてたが、本当は俺を欲しがってたんだろ。俺のをくわえ込んで嬉しいですって言ってみろよ。
そうしたらこれからも俺が可愛がってやるからよ」
「おいおい、独り占めかよ」見守る男達が野次るが、構うことなく腰を進めながら、ガイの顔に己の顔を寄せて囁く。
「ほら、言えよ。ルーク様だけじゃこんな淫乱な身体持て余すだろ。俺がこれからずっと可愛がってやるさ、な。素直になれよ」
「……が……ん……」
何度も強要された口淫のせいで、ガイの口は乾いて端は切れている。最初に喉を潰されているため、声もロクに出ず、それはあまりにも弱々しかった。
男はガイが何を言ったのか聞き取れず、ガイの唇に耳を寄せる。
「ほら、もう一度言ってみろ」
「…だ、れが、おまえ、みた、い…な、ブタと」
ガイは最後まで言うことが出来なかった。ガツンという衝撃が脳を揺らす。
繋がったまま男が拳をつくりガイの顔面を殴ったからだ。
「っのやろう。下手にでれば調子づきやがって。この淫乱野郎が」
怒鳴りながら、男はガイを殴る手を止めなかった。初めは笑ってみていた男達も、さすがにやばいと思い止めにはいる。
「おい、やめろって」
殴られ続けたガイは視界が昏く狭くなっていくのを感じる。
男達の声が小さく遠くなっていく時に、扉が破られる音と聞き覚えのある怒声が耳に届いた時、全てが黒く塗りつぶされた。



目覚めの切っ掛けは、甲冑の音だった。
頭より先に身体が反応したのだ。ビクリと身体が竦み、それが瞼を押し上げる事となった。
恐る恐る音のする方に目をやると、そこには先日忠告をした副長が立っていた。
「目覚めたか」
最後に聞いた怒号はこの男のものだった事を思い出す。
みっともないところをみられた、掛布を頭まですっぽり被ってまた夢の世界に逃避したくなる。
そうも言っていられないだろう。ゆっくり身体を起こしながら、どう礼を述べたものかと考えを巡らせる。
身体が悲鳴をあげない事に疑問を抱きながらも「迷惑をかけたようで、申し訳ない。この事は出来れば」
頭を下げようとするガイを手で制す。
「私に礼を述べる必要は全くない」
「だが」
「旦那様が」
その言葉にガイが僅かに反応する。
「フォニマーの手配を秘密裏にしてくださった。痛みはもうないはずだが、どうだ」
ガイが眉を少し歪ませたのは、痛みのせいではなく、不快感からくるものであった。
だが、ガイは無言で首を縦に振る。
それを見届けると、「ならば、旦那様に直接礼を述べることだ。今は執務室にいらっしゃる」とガイからすれば苦痛以外の何物でもない事を言い出す。
ガイは腹を括って副長を退室させると素早く衣服を着替えた。
顔を洗うべく洗面台の前にたつと、顔色こそ悪いものの殴られた痕跡はまったく残っていなかった。
はあっと溜息を吐くと、手早く顔を洗って支度を済ませて部屋をでる
部屋の外に立っていた副長はガイの姿を捉えると、無言で歩き始める。ガイはその少し後について歩く。
長い回廊を歩きながら、どうせクビを言い渡されるんだろう、とガイは覚悟を決める。
使用人同士の諍いや喧噪は、両成敗とし、どちらにも等しく解雇を言い渡すのが公爵家の在り方であった。
両者の言い分に耳を傾け、どちらが被害者であり加害者なのか判断する手間を、使用人相手にかける程ここは温情には満ちていないのだ。
執務室の重厚な扉を叩き、「ガイを連れてまいりました」と告げると、中から入室を促す声が返る。
ガイが室内に足を踏み入れると、違和感が足から上がってくる。
床に目をやると、以前とは違った絨毯が敷き詰められている。色合いは同じだが、前のものはもう少し毛足が長かったはずだ。
踏みしめた感触の違いに何か引っ掛かりを覚えながら、執務机で書簡に目を通す公爵のもとへを歩みをすすめる。
「此の度は私ごときに、旦那様がご尽力下さったと」
「痛みはまだあるのか」
ガイの謝辞を公爵は顔をあげずに遮る。
「いえ…」
「そうか」
そう言うと公爵は口を噤んで、書簡数枚にサインする。
公爵の意図がつかめずに、ガイも口をつぐむ。
室内は公爵がペンを走らせる音だけが満ちている。
長い沈黙は、焦れたガイが公爵に問うた事で破られる。
「騒動を起こしてしまった私はいつ屋敷を出て行けばよろしいでしょうか。ルーク様には何も告げずに出て行くつもりではありますが」
「誰が騒動を起こしたのだ」
公爵の問いかけに、言い難いキズを抉る男だ、とガイは胸の内で忌々しげに舌打ちする。
「私と白光騎士団員三名による暴行事件です」
腹を括って言葉を返すと、漸く公爵は書簡から顔をあげる。
「その三名は過日任務のためバチカルを離れ、道中盗賊に襲われて命を落としたばかりだ。いつ彼らと諍いがあったというのだ」
公爵の言葉にガイは瞠目する。
絨毯が何故急に替えられたのか、その理由をガイは知った。
彼らがどこで命を落とそうが、公爵が口にすればそれが真実となるのだ。多少の矛盾や綻びなど大きな権力の前ではそれは霧散する。
国王の義弟であり、軍の最高指揮官であり、国の英雄でもある。
誰が彼に逆らおうとするであろうか。
白と公爵が一言告げればそれは白になるのだ。
改めて、復讐する相手の強大さに、震える拳を叱咤するようにきつく握りこむ。
「では、私は……どのような処分が下されるのでしょうか」
公爵は自分をどう扱うつもりなのか、意図が全く掴めずにいたガイは問いかける。唐突に公爵は立ち上がってガイとの距離を縮める。
距離を詰められて、ガイの全身に緊張が漲る。
自分を陵辱した男達と同じくここで命を落とすのか、と身構える。
公爵の手がゆっくりと挙げられる。その一挙一動を緊張を漲らせながら目で追う。挙げた手はガイの頬にたどり着く。
「処分を下す必要などあるのか。事件など起こってもおらぬのに」
いとおしむように、優しく頬を撫でる手にガイは困惑する。
「お前は常とかわらず、ルークの世話に従事していればいい」
公爵の表情から真意を読み取れない。だが、その声色はガイの背筋を凍らせる程に甘く優しかった。
この時になって、ガイは漸く公爵から寵愛とよばれるものを受けている事を知る。
腹の底からじわりと昏い感情が沸き起こる。それは嗤いの衝動であったり、侮蔑の感情であったり、自分の中にこのような昏く濁ったものを住まわせていたのかと驚くほどであった。
お前が俺を愛するというのなら、従順な振りをしていよう。いつの日か、その心臓を俺の手でとめる瞬間まで。
牙をむくその時まで。
抱き寄せられ胸に顔を埋めながら、ガイは薄く笑った。






なんかもう本当にすみません。
ガイに酷いことしすぎだし、公爵の愛は絶賛空回り中だし(それはいつもの事だと)
色々精進したいです

つーか、展開が色々酷い


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