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10万企画小説
吸血鬼ルーク×人間ガイ(前編)
※現パロ、吸血鬼パロ
※強姦、そして一応鬼畜


目覚めは唐突であった。
パチリと瞼を開けると、降り落ちる赤と輝く翠があった。

「おま…ぇっ、………何やってんだ」
額にひやりとした掌が押し当てられ、ガイは眉を寄せる。
「お前がグースカ寝てるからだろ」
拗ねたように口を尖らせる少年は身体を起こす。覆いかぶさられる形から解放され、ガイも身体を起こし枕元の携帯をたぐり寄せる。
「あー、もう7時か」
少し寝癖のついた髪を掻きながらパイプベッドからおりる。そのまま小さな冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出す。
「俺も喉乾いた」
ベッドの上で胡坐をかく少年に視線をやると、やれやれというようにため息をつく。
「お前の好きなジュースはないって言ってあるだろ。欲しけりゃ自分で買ってこい」
「えー、俺はお客様だぞ」
「勝手に入り込んで何がお客様だ……って、お前、鍵どうやってあけた?」
「開いてた。無用心だよな」
「まじか?」
ミネラルウォーターを喉に流し込むと、ふーっと深く息を吐く。
安アパートに住む貧乏学生とはいえ無用心にも程があるよな、とからかう声に、むっと眉を寄せる。
「ここ数日ロクに寝てなくてな」
どんなに酔っ払っていようが、フラフラになっていようが、鍵だけはきっちり閉める習慣は身に付いていると自負していただけに、この失態にがっくりと肩を落とす。
「で、折角の休日だってーのにサザエさんもみないまま一日終わってどんな気持ちだよ」
「言うな。あー、今日こそ買い出し行かないとやばかったのに」
冷蔵庫には水と調味料しか入っていない。
「今からでも遅くないだろ。行ってこいよ、俺待ってるから」
「そうだな。ちょっと出かけてくる。夕飯遅くなるけどいいか?」
「構わねえよ」
手をひらひらさせて、雑誌のページをめくりはじめる。
「悪いな、ルーク。お前の好きな鳥料理作ってやるよ」
その言葉にルークは顔を雑誌からガイへと向ける。少し戸惑った表情。それからゆっくりと笑顔になる。
「ん、わかった。期待してる」
今度こそ忘れずに鍵を閉めてガイは買い出しに出かける。
鍵が外からカチリを閉められ、カンカンと音をたてて階段を降りていく音を耳にしながら
「お人好しなんだな」と、ルークは小さく笑った。


それから一時間近く経って、スーパーの袋を手にしたガイが戻ってきた。
「悪い、ハラ減っただろ」
「腹すぎすぎて感覚ねえ」
冷蔵庫に食材を入れているガイの背にべったりとルークが張り付く。
ガイの冷蔵庫は一人暮らし用の小さなものなので、食材を入れる時は屈み込んでいれている。その背にルークは乗りかかる形だ。
「重い」
「いーだろ」
その時、ガイの剥き出しの首筋をぞろりと舐められ
「うひゃ!!!」
みっともない声をあげて、その場に尻餅をつく。
「お、お、お前何やってんだ」
「ガイの首が美味しそうだったから」
「今からメシ作るから!だから人の首舐めるな!」
必死の形相で叫ぶと、スーパーの袋をガサガサ漁り目当てのものを背後のルークに渡す。
「ほら、これでも飲んでろ」
差し出されたのはジュース。思わず瞠目し、パチパチと数回瞬かせる。
「え、いいの?」
「ついでにいくつか買っておいたから、勝手に飲んでいいぞ」
違う種類のジュースをいくつか冷蔵庫にしまっている。
「貧乏なのに無理しちゃって」
口では悪態をつきながらも、嬉しそうに付属のストローを紙パックに突き刺してごくりと喉を鳴らして飲む。
「ま、今日遊ぶ約束してたのに、俺が寝てたせいで反故になったろ。そのお詫びってところかな」
「ふーん……。ガイってさ、甘いよなあ」
まな板を取り出して鶏肉を食べやすいサイズに切りながら、ガイは苦笑いする。
「そうかあ?」
「甘いよ。知らねえぞ、痛い目みても」


******


バイトが終わってようやくアパートに着いたガイが鍵をあける。
扉をひらけばすぐそばに狭いキッチンスペースがあり、その奥がガイの寝室兼居住空間の部屋になる。
誰もいないはずのその部屋に灯りとTVがつけられており、中から
「おっかえりー」と陽気な声がかかる。
「……ルーク?」
今日は間違いなく鍵を閉めて出た。と、なると。
スニーカーを脱いで足早に部屋にはいった途端、ぎゅうっと腰のあたりに腕をまわされしがみつかれる。
「お前、合鍵作ったな!この前のあれも鍵の閉め忘れじゃなかったんだろ」
ルークの腕を引きはがしながら問い質すと、悪びれない言葉が返ってくる。
「…あ、バレたか」
「当たり前だ」
ったく、と大仰に息をつくと荷物を下ろしダウンジャケットをハンガーにかけてから、ルークの方を振り返る。
「で、お前飯は?食ったのか?」
「……怒ってねえの?」
「お前相手にイチイチ怒ったら身体が持たない」
「やっぱガイは甘いよなー」
先程強引に引き剥がされたというのに、ルークは懲りずに再び抱きつく。
たださっきと違うのはルークの腕が回されたのは腰ではなく、ガイの首だった。
まるで抱擁のようで、ガイは眉を下げてため息を一つ零す。
「離れろって。どうせなら女の子に抱きつかれたい」
21歳の青年らしいまっとうな言葉に、ルークはニヤッと笑う。
「女性恐怖症はどうするんだよ」
「願望くらい言わせろ」
首に回された腕を掴んで引き剥がすと、ガイは顔を顰めてみせる。
「お前、顔はいいのにその体質のせいで、21にもなってまだ童て」
「言うな!」
核心をつく言葉を大声で遮るガイの反応に、ルークはガイの肩口に顔を埋めて、くくくと笑っている。
「いいじゃん。今時、貴重だぞ」
「21はまだ許容範囲だろ」
「まあ、おかげで俺は助かったかな」
「どういう意味だ」
「へへ。どういう意味でしょう」
ルークの謎掛けがわかるはずもないガイは、やれやれと肩をすくめてみせる。
「で、飯は?」
話を強引に戻すとルークは首を振る。
「今日はいいや」
その言葉にガイは苦笑いして、冷蔵庫を開く。
「お菓子で腹を膨らませたんじゃないだろうな」
昨日の残りのカレーをいれた鍋を取ろうとした時、ルークのために備えていたジュースが減っている事に気づく。
年下の幼馴染は好き嫌いが激しく、それは飲み物にも至っている。
先日買い込んだのは、ルークにとってアタリが多かったらしい。小さな達成感に、ガイは思わず口元に笑みを刻んだ。
鍋から食べる分だけ皿に盛ってレンジにいれる。
ふと気づけばルークはパイプベッドの上で胡坐をかいている。虚空を見つめ何か思いふけるような表情で。
「俺は別に食べなきゃ食べなくってもいいんだよ」
「良くはないだろ。成長期だ、しっかり食べろよ」
「成長ねえ……さすがにそりゃ無理だ」
この偏食児め、小言が口をついて出そうになる。
「食事に興味ないんだよなあ」
炊飯器をあけて白ご飯を別の皿につぎながら、ルークの言葉に耳を傾ける。
「興味なくてもなあ」
「だからたまーに食べるなら極上のものを食べたいだろ」
「お前んち金持ちなんだから、いくらでも食べられるだろう」
いつものように気の置けない会話のやりとりのはずなのに、違和感がガイにつきまとう。
何かが、噛み合ってない。何かが。
レンジが軽快な音を立てる。
温まったカレーを、先程の白いご飯の上にかけるガイの顔は苦い。
何故、こんなに胸がざわめくんだ。
「でもそうなると、故郷に帰った方がいいのかなあって。俺なりに考えてさ」
故郷?
何を言ってるんだ。お前と俺は幼馴染だろう。
家族を事故で亡くしてこの小さなアパートで暮すようになるまで、家が目と鼻の先で。そしてお前ん家はすごく大きくて………。
「年に三ヶ月しか太陽が昇らないあの島。何もないからつまんねーんだよなあ。帰るとアッシュがまた口煩いし」
島?もしかして、彼の両親のどちらかの実家になるのだろうか。
アッシュ……、ああ、ルークと同じ赤い髪の。血のような、赤い、髪の。
血のような。
冷たい戦慄が背を伝う。
近くにいるルークの声が遠くから聞こえる。否、頭の中から聞こえる。
「俺は太陽光も平気だ……ど、…まえ……まだ……」
ルークの声にノイズが走る。ルークの声…声…
心臓が早鐘をうち、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。
ルーク……ルーク………ルーク…ルーク…
凍りついたように動かぬ舌のかわりに、胸のうちで何度も名を呼ぶ。
呼び慣れていたはずの、その名を。
数日前に初めて口にしたその名を。
「おま……え、………誰だ……」
あの日、目覚めたガイが放つはずだった言葉がようやく形を成す。
「なんだ。名前でもう呼んでくれないのかよ」
残念そうな口ぶりをしながらも、ルークは悪戯が成功した子どものような笑顔だ

後編


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