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10万企画小説
六神将(アッシュ)×ガイ 後編
青い目が瞬きを繰り返す。
呆けていた思考がようやく事態を把握したらしい。顔を離し、後ずさるが、すぐさま窓枠に身体があたる。
「うわっ!お、おまえ、なにやってんだ!」
「うるせえ!お前が道具だなんだって言うんなら、お望みどおりそういう扱いしてやる」
まだ混乱しているガイの腰にある紐を解くと、からんと音をたてて剣が床におちる。その音で、はっとガイは気づくが、アッシュの方が動作は早かった。
片足でその剣を後ろにむかって蹴る。床を滑り、扉にあたってその動きをとめる。
「アッシュ!」
体格差は如何ともし難いが、まだガイは躊躇いがまさっている。一気に畳み掛けて、引き倒すしかない。
アッシュは素早く考えを巡らし、まずはガイの足を払う。ぐらりと身体を傾けたが、ぐっとガイは床を踏みしめ耐える。
間髪をいれずに掴んだままだった胸ぐらを、払った足とは反対へと引き倒そうとする。予想外であったのか、あ、と漏らした言葉とともに床に倒れた。
その上に馬乗りになり、ガイの手首を掴んで床に押し付けると、息がはあはあとあがる。
急に激しく動いたせいか、視界がぐるぐる回っている。掴んだ手に力をこめながら、あがった息を整えるのにいつもより時間を要した。
「アッシュ…」
訝しさを含んだ声と共に、見返す瞳にどこか同情の色が見え、また腹の底から新たな怒りが沸き立つ。
苛立つ感情のままに、顔を寄せ唇を塞ぐ。開いていた唇に舌を差し入れると、組み敷いたガイがビクリと大きく反応をみせる。
舌先が、ガイのそれに触れた時、理性が砕け散った。



********

「正気か!おい!」
下着ごとスパッツを太腿半ばまで引きずり下ろす。日にやけてない肌が無防備に晒される。
下腹部に触れると、面白い程に身体を跳ねさせて、激しく抵抗する。
「よせっ!や、めっ……」
必死で抗う声を発していたガイの口は、柔らかな性器が掌で包まれると耐えるようにぐっと噛み締めている。
ゆっくりと上下に扱きだすと、芯を持ち始める。
性器が形を変えていくと徐々に抵抗が弱まっていく。先端を指腹で撫で、茎を緩急をつけて扱くと硬くなっていく。
ガイの素直な反応を揶揄してやろうかと顔を覗きこむと、かたく目を瞑り噛み締めた唇は震えている。
その初めて見せる弱々しげな表情が、アッシュのなにかを駆り立てた。
せり出した喉仏をぞろりと舐めると「うわっ!」と驚く声が上がる。
首筋に鼻先をすり寄せ舐め回し、強く吸い上げると、扱く手が溢れだした先走りで濡れていく。
薄い皮膚を押し上げるようにせり出した血管が脈動するのが伝わってくる。
感じているのだ、と思うとガイの安っぽい挑発で発火した憤りは冷えたが、かわりに別の感情によって頭も身体も熱く昂ぶっていく。
裏筋をなぞりながら扱くと、どんどん溢れる液で、ぐちゅぐちゅといやらしい音が立ち始める。
ぬめりを帯びたそれが、びくびくと震え、そして先端が膨らんでいく。絶頂はそこまで迫っている。
ぐっと唇が白くなる程に噛み締め、かたく目を閉じつらそうに眉を寄せながらも、せまりくる刺激を待ち望むかのように腰が無意識に揺れている。
満足げにアッシュは笑みを深く刻むと、先端の割れ目に爪を立てる。
瞬間。
「――ッ……!」 
大きく目を見開き、背を大きくそらせ、爆ぜた。
びゅくびゅくと精液が迸る。どくどくと間欠しながら出るそれは、アッシュの手に絡まり、うっすら砂埃のたまっている床に垂れた。
不規則な痙攣を繰り返し、ぐったりと力の抜けたガイをみて、己の手による手首の拘束を解く。
ガイが息を整え、思考が冷えていくより先に、手早く半端に引っかかっていたスパッツをすべて引きずり下ろす。
はっと気づきガイが足を閉じるより先に身体を滑り込ませる。
まさか、というように見上げてくる瞳は怯えが差している。その瞳がアッシュに強者の余裕を確たるものとした。
尻肉を開きその奥の窄まりを、濡れた指先がなぞり、それからぷくりと差し入れる。
びくりと身体をこわばらせ「なっ、……」と息を呑む。


ゆっくりとしつこくそこを嬲っていくと、綻んでくる。指を増やし、腸壁をなぞるように動かすと噛み締めた口から切なげな息が漏れ出す。
先ほどの吐精で濡れた性器は、身体の内側から嬲る指の動きによって、既に頭をもたげている。
シャツの裾を捲り上げ、肌がさらにあらわになる。
汗ばんだ肌を掌で撫でさすり、胸の突起を摘むと、面白いように反応をみせる。
指を引き抜くと同時にガイの脚がアッシュの腹めがけて蹴り上げられる。
幸いなのは体勢のせいであまり早さも威力もなかったため、容易に繰り出された足を掴むことが出来た。
ガイの抵抗は虚しく封じられた。掴んだ足を肩にかけ、のしかかるように体重をぐっとかける。
浮き上がった臀部に熱くなった昂りを押し当てると、身体の下で激しく抵抗する。
息を吐き出す時に、一気に奥まで貫いた。
「ひッ、……ッ!!」
背を大きくそらし、ガイの口から悲鳴のような声があがる。
痛みを感じるほどに、ギチギチに締め付けられ、アッシュも小さく呻く。
強引になじませるように、浅く腰を抜き差しする。
まだかたい肉壁はそのたびにぎゅうぎゅうと収縮し咥え込む。
時間をかけた抽送は徐々に馴染んでいき、熱く柔らかい粘膜の煽動が、アッシュの性器を包み嬲ってたかめていく。
「…やっ、めろッ……ンッ」
組み敷いた下でガイが激しく首を振って拒絶の言葉を口にする。だが、その声はねだるような甘さを含んでいる。
足を抱え、左右に大きく開き激しく腰を打ち付ける。
乾いた肉が打つ音と、食いしばった口から漏れる甘い声と、荒く熱い息。
身体の奥深くからせりあがってくる快楽が背を走り、脳髄を熱く溶かす。
くらくらと目眩が起こる。はあはあと息があがりっぱなしで、心臓がどくどくと胸を打っている。
繋がった所から熱くどろどろと蕩けていくようで。たとえようもない快楽に、ただがむしゃらに穿つように突き上げる。
瞬間、がくりと身体から力が抜け落ちる。ガイの首筋に顔を埋めると、身体の最奥で達する。
どくどくと中に注がれる感覚に、ガイが不快げな呻く声をあげる。
汗が一気に噴き出し、呼吸すらうまく出来ずに、繋がったままアッシュの意識はブラックアウトした。


*********



猫がいた。


屋敷の中庭の隅で。まだ少年だったガイが膝をついて草むらに向かって笑っていて。
「何をしている」
自分の声にびくりと身体を震わせたガイの足元から、小さな鳴き声をたてながらフラフラとおぼつかない足取りで仔猫が出てきた。
「なんだ、これは」
「…おそらく、母猫が運ぶ途中、落としてしまったんだと思います」
「母上のお身体の事で、ここでは小鳥すら飼っていない。どんなに小さくとも動物はおいておけない。わかるな。
ラムダスには俺から話をしておく」
ただしい事をしたと信じていた。だが。
すっと場面がかわる。身に着けている服が違うため、数日たっている事がうかがえる。
小さなミルク皿を手にして、あの場所で項垂れているガイが目に留まる。
名前を呼べば、顔をゆっくりあげる。強張った顔を無理に笑顔にして「ルーク様、なにか御用でしょうか」と穏やかにたずねてくる。
正しい事でも人を傷つけるのだと、幼い自分は知らなかった。
あの仔猫はどうなった?俺がラムダスに告げ口したあの猫は。生まれたばかりで、兄弟から、母親からはぐれてしまったあの仔猫は。
言わなくては。謝らなくては。こんな事になるなんて思わなかったんだ。お前を悲しませるつもりはなかったんだ。あの猫はどうなった?なあ、あの猫は。
心のなかでは饒舌なのに、唇はわななくだけで一つも紡げないでいる。
ごめん、ガイ。傲慢な俺は、知らずにいつもお前を傷つけていた。ごめん。


「よく覚えてたな。あの猫は通いのメイドが引き取って、すくすく育ったぜ。甘やかしすぎて横にもかなり育ってしまったけどな」

ゆめ?
優しい穏やかな声。だが、それはいつも俺には向けられなかった。


「夢のなかで謝るくらいなら、目をあけてから言って欲しいもんだ」


ぼんやりとした意識が、その声に導かれるように浮上していく。
アッシュはゆっくり瞼をおしあげると、視界もまだぼんやりとして輪郭をとれないでいる。
瞬きを繰り返すと、鮮明になっていくそこに、ガイがおどけた顔でのぞきこんでいる。
どうしてここにお前が?
夢で過去の情景をなぞっていた脳裏に、今日の記憶が戻ってくる。
「どう、して」
声は震え、掠れている。
あんな酷いことをしたんだ。寝首をかかれても、もしくはここから去っていても当然だ。なのに。
その時額に冷えたタオルが置かれていることに気づく。
「ケツが痛いのを我慢して看病してやったんだ、少しは嬉しい顔しろよ」
思わず顔を顰める。己のしでかしたせいでもあるだろうが、ガイはここまで口が悪かったのだろうか。
「お前の嬉しい顔は、ここに皺を寄せるのかよ」
グローブを外したガイの指が、アッシュの眉間をなぞる。
「ま、お前らしいよ。水はしっかり飲んでおけよ。熱中症の初期状態らしい」
指が離れ、ガイが椅子から立ち上がると、氷水の入ったグラスを持ってくる。
ごくごくと喉を鳴らしながら飲み干すのを、じっとガイは見守って、それからやれやれと肩をすくめた。
「あの時の猫、ラムダスさんが処分したと?」
「……ラムダスがそう言ったんだ」
「まあ、坊ちゃんの手前はそういうか。ラムダスさん、ああ見えても実は動物好きなんだぜ。通いで働いている者全員集めて、猫を飼える者はいないかって尋ねてな。
ただし経験者にかぎる、とあの人らしい一言もついてたな」
ラムダスが動物好きとは知らなかった。いや知らずにいた。
「安心したか?」
ガイの言葉に、素直に「ああ」と答える。
心の隅に引っ掛かっていた棘が一つ溶けてなくなっていく。ほうっと一つ安堵の息を漏らす。


再び水で満たされたグラスを差し出されたが、もういいと手で制すると、ガイは背後のテーブルに戻す。
西日がさして、部屋をオレンジに染めている。
「…悪かった。俺はお前に大人げなく突っかかってばかりだった」
ガイの言葉にアッシュが目を見開く。
「お前を前にすると、どうも感情がうまく制しきれなくてな。安っぽい挑発をして悪かったよ」
どうしてお前が謝るんだ。
ガイが感情を制しきれない理由は過去の自分にある。
記憶をたどれば、自分が正しい、そうあるべきだと信じていた態度は、ガイを悲しませ怒らせ傷つけて。
それでも自分が正しいという気持ちは揺るぐことはなく。
正しさだけを守って、ガイの心が離れている事に気付けないままで。
「でも。ま、色々お前と正面切ってぶつかり合って少しは胸のつかえがとれたな。
色々終わって、お前は身体を治したら、三発殴らせろよ。それで俺はお前への遺恨を捨てられるから」
「…何故三発なんだ」
「まずは、ルークに屑だのなんだの罵倒した事だろ」
まずそれか!と怒鳴りたいが、アッシュはぐっと堪える。
「そして今日の出来事。二発目は思い切り殴らせてもらうから覚悟しとけ」
それには何も言えない。
「さいごは……遠い昔に捨てられたものへの恨みってところか」
3つ目の言葉が引っ掛かり、アッシュの目が不安げに揺れる。それを受けて、ガイは優しく笑う。
「お前もガキで、俺もガキだったんだ。それでも、ま、区切りが一つ欲しいんだよ」
もっとガイを傷つけ怒らせる事をしたらしい。過去の記憶を手繰ろうとする前に、瞼が手によって翳される。


「ほら、もう寝ろ」
優しい声にうながされ、ゆっくり瞼を閉じる。
「……悪かった。いくらでも殴られてやる」
「そう思うなら、身体治すんだな。世界を救ったその後、お前を殴りにいくから待ってろよ」
今、じゃないとそれは難しいかもしれない。
だけど、ガイが俺を殴るためでも俺に会いに来ようとしてくれるなら、それは胸に秘めておく。
道具じゃない。一度もそう思ったことはない。お前の中では違っても、俺の中ではお前は……
それ以上は胸の中ですら形に出来ないでいる。
いつか形に出来ればいい。いつか言葉としてガイに伝えられればいい。
拒絶されても、それでも。


またゆっくりと眠りに落ちていく。意識が途切れる寸前、額にやさしい唇が落とされた。




六神将ガイ 最初は無理やりな感じからほだされていくガイ のリクエストでした。
すみません、相変わらず何もかも違って、好き勝手な事ばかりしております。
でも初めてのアッシュガイは楽しくて楽しくて楽しくて楽しくて。ついあれも書きたい、これも書きたいという風につめこんだので
ごった煮感というか、統一感のない感じになりました。でもアッシュにツンツンなガイは書いてて本当に楽しかったです。そして不憫なアッシュたんを書くのが楽しかったです。
ちなみに3つ目のあれは姉上のリボン(小説設定)
リクエスト、本当に有難うございました

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