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愛人 読みきり連作
道具
奉仕の続き ガイ16歳


幸いな事にあの痴態を晒した翌日、公爵はベルケンド領地の視察に出立した。
元々あまり顔を合わせる事はないが、それでもあのような醜態を晒した後となると、扉を開けた時にあの赤い髪が見えただけで即座に回れ右をして逃げ出していただろう。
ベルケンドへの道程などを考えると、ざっと二週間は帰ってくるまい。
ほうっと安堵の息を吐きながら、午後の穏やかな時間を忌まわしい記憶の蘇る執務室で淡々と仕事をこなす。
ルークは先日の公爵の釘刺しが効いたのか、午後は素直に俺を執務室に向わせてくれた。
そうすると時間にかなりの余裕が出来、公爵の書棚にある「ベルケンド音機関の歴史」等、市井では滅多にお目にかかれない書物を読むなどして、それはそれは静かで穏やかな日々を過ごしていた。


あの赤い悪魔が戻ってくるまでは。


「ベルケンドで面白いものを見つけてきた」
珍しく機嫌の良さそうな公爵が、俺の手を取る。
公爵からはたくらみの香りがたちこめている。思わずベッドの上で後ずさる。
「このような玩具を使うのは私の意に沿わないのだが、私も忙しい身なのでな」
玩具?その言葉に俺は益々警戒を強める。
「暴れない方がよいぞ。私は軍人だから結び目が解ける事はないからな」
天蓋の柱に取り付けられていた布を引っ張ると、俺の片手を素早く結んでいく。
「なっ」
驚く間もなく、もう片方の手を取られると、同じように布が巻かれていく。手を動かそうとしても、布が手首に食い込むだけで、すっかり自由を奪われてしまった。
「だ、旦那さま?」
「そういえばお前は音機関に興味があるそうだな」
嫌な予感が背をじわりと這い上がってくる。「はい」となんとか出した言葉は震えて、俺が思う以上に小さい声だった。
「喜ぶがいい。ベルケンドの職人特製の一品だ」
そういって公爵が俺の目の前にかざした「特製の一品」は、男根を象ったものだった。


それが何なのか、それを何に使うのか、公爵の意図を掴めないでいた俺はまじまじとそれを見る。
よくよく考えてみると、じっくり見るような物ではないのだが、「音機関」「職人特製」という言葉が俺の興味をひいてしまった。
「気に入ったようだな」
くっと笑う公爵をみて、ようやくこれの用途がぼんやりとわかってきた。
「では準備をしよう」
甘い香りのするローションが股間に垂らされる。ひやりとした感触に思わず身を捩る。が、その瞬間手首に布が食い込む。
ゆっくりと孔の入り口まで垂れていく感触に身体を震わせていると、いきなり指を差しこめられる。
「いっ」
思わず息を呑む。乱暴で性急な行動に身体中に鳥肌が立つ。じわりと生理的な涙が浮かんでくる。
風呂に入った時に自分でほぐしておかなかったら、痛みでのた打ち回っていたに違いない。
「大丈夫なようだな」
大丈夫なもんか!と心の内で怒鳴り返す。その怒りがおさまらないうちに、異物感が俺を襲った。
体内に異物がゆっくりと入り込んでいる。
あまり大きなものでないようで、公爵のモノに貫かれるよりは圧迫感を感じずにすんだ。
だが、自分の指や公爵のモノとは違い、温度を感じさせないソレを体内にいれているだけで身体が竦む。


恐らく途中まで押し込まれた時、公爵は手にもった道具のスイッチを入れた。
途端、体内から低い振動がする。いや、ちがう、こ、これは。
先ほど入れられたモノが左右にゆっくり動いている。
内壁を抉るように、押し付けるように、なんともいえない動きに俺は喉を仰け反らせて声にならぬ叫び声をあげる。
なんとか逃れようと身を捩るが、腕の自由はきかない。脚をばたつかせるが、公爵の掌が太ももを押さえつける。
「暴れては抜けてしまうだろう」
そういうと、ぐいっと根元まで押し込む。押し込まれる時にゴリっとあの一点に何かが押し当てられた。
電流が流れたように身体が跳ねる。下半身は公爵の手によって押さえ込まれ、手首に痛い程布が食い込む。
だが、痛みを感じられない。それ以上に逃れられない刺激が身体を覆っていた。
無理やり勃たせるような、射精を促すような、激しい苦しみと果てない快楽を織り交ぜた感覚があの箇所からせりあがってくる。
いつの間にか振動は激しさを増していた。
苦しいのに、俺の前は痛い程に勃ちあがっている。
「ひいっ…ああっ、あっ…んんっ…ああああっ」
熱い涙が、同じく熱をもった頬を伝っていく。
「気持ちよいのにお前は泣くのか」
不思議がっている公爵の声が遠く聞こえる。正常な思考ならば怒りに目がくらむような言葉だ。


止めて欲しくて懇願の言葉を出そうとするが、言葉にならない。喘ぐだけしか出来ずにいる。
「だぁ……ああっ。ひっ…ん」
目の裏がチカチカと光っている。腰を震わせ、この湧き上がる射精感をどうにかしたくて、必死で首を振る。
限界が近い。近いのに出せない。
そんな俺の切羽詰った様子など意に介さずに、公爵は淡々と話す。
「いつまでも私の掌を使っていないで、一人で出来る様になりなさい」
「な…ら……つっ…ああっ、か…ひっ、もう」
ならば自分の手を使わせて欲しい、という懇願さえ、もう言葉にならない。
逃れたい。体内の過敏な所を強引に蹂躙され続け、もう頭の中はこの快楽から逃れる事だけだった。
瞬間、ビクリと身体が大きく跳ね上がり、心臓が一瞬掴まれたかのように痛みが走る。
足の指先から頭のてっぺんまで、何かが駆け抜けていった。
荒い息が吐き、心臓がバクバクと痛いくらいに打っている。
息を整えながら下をみると、白濁した精液が腹や胸に飛び散っている。
もしかして、達したのか。
「ようやく前を触らずとも達する事が出来たな」
公爵の満足そうな声がかかる。
太腿に置かれていた手が離れていく。
呆然とする俺に、公爵は薄く笑う。
射精した瞬間、おそらく押し戻してしまったのだろう。ベッドにベルケンド職人の一品が転がって、低い唸り声をあげている。
どんな悪趣味な職人なんだ。いや、こんな悪趣味なものを注文する方に大いに問題がある。


「まあ、一度出来たからといってこれから出来るとも限るまい」
何を言い出すのだろう。思わず眉根が寄る。
転がっている逸品を公爵は手にもつと、再度ローションをそれに零す。
まさか。思わずベッドの上ににじり寄る。
「ここから出るものが透明になるくらい回数を重ねてみた方がよかろう」
そう言ってまたソレを一気に奥まで押し込んだ。
喉を仰け反らせて耐える俺を横目に、ベッドから降りて、卓においていたワインとグラスを取りにいく。
椅子をベッドの傍まで持ってくると、そこに座って優雅にワインを飲み始める。
「それまでゆっくり見ておくとしよう」
目を瞠って、どうにか逃れようと身体を揺らす俺をあざ笑いながら、公爵は手にしたスイッチを最大にした。




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