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愛人 読みきり連作
奉仕 鏡 後編
重い気持ちで続く部屋への扉に近づく。
あの部屋に昼間足を踏み入れるのは、羞恥を正面から向き合うようで躊躇う。
己を奮い立たせるように溜息を一つはくと、ゆっくりノブを回す。
そこには、いつもの違うものが鎮座していた。


「旦那さま、あれは一体」
扉をあけて、あれが目に入った時、思わずポカンを口をあけた。
執務室との続き間である、公爵の寝室は客室を改装しただけあってかなりの広さと豪華な部屋であった。
広い部屋中央に鎮座するのは、4人は並んで寝れそうな天蓋のついたベッドだった。
今日はそのベッドを取り囲むように大きな姿見が立てられている。
「鏡だ」
「何故…」
「お前も一度みておいた方がいいだろう。自分がどのような顔をして私に抱かれているのか」
その言葉に思わず身を捩って部屋から逃げようと試みる。が、あっさりと腕を掴まれる。
掴んだ手に力を篭められ、ずるずるとベッドの上まで連れて行かされる。
俺の寝るベッドとは違い、スプリングもきいて、上質の絹のシーツはひんやりとする。
拒否は一切許されていない。だから俺ができるのは目を瞑って子供のように頭を左右にかぶり振る事くらいだった。
ゆっくりと自身の服を脱ぎながら声をかける。
「何故嫌がるのだ。素直になれぬのなら素直にしてやろう」
そういうと冷たい掌で俺の身体をまさぐりはじめた。

痛みには耐性がある。
だが、この手の耐性は皆無に近い。女性恐怖症という事もあり異性に触れる、触れられる機会は全くない。
艶めいた事とは無縁のままだった。精々自分で慰めた事が数える程だ。
だから身体を他人から愛撫されると、どうしてよいのかわからなくなる。
乱暴に、モノのように扱われるほうがまだ救われる。
意志とは関係なく、腰の辺りにビリビリと甘く疼いて、もどかしくなってしまう。
反応している事が公爵にわかれば、面白がって手を休めることはないだろう。
声を出さぬように最大限の努力をするが、鼻から抜ける息は自分でも驚く程に甘ったるい。
内腿をゆるく撫でながら、胸の先を冷たい節くれだった指が摘む。
円を描くように弄ると、腰が知らずに浮いてしまう。指の腹で押し付けられると、口から荒い息が漏れる。
執拗にそこを責め立てられ、我慢できずに声が漏れた。慌てて手の甲を口に押し当てる。
「よい声を出すな」
そういうと胸先のぎゅっと摘み上げる。つまみあげて擦り合わせるように動かすと、全身に電撃が走る。声にならぬ悲鳴をあげて身を捩る。
瞑っていた目をようやく開くと、視界がぼやけている。知らずに涙が溜まっていたようだ。
揺らぐ視界のなかで、俺を見下ろす男は満足そうに冷笑しているのが見える。
屈辱に身を震わせていると、ぐいっと腕を引かれ上体を起される。
そのままぐいっと顎を掴んで鏡の方を見させられる。
「少し弄っただけで、こんなに赤くなって。面白いだろう」
子供が実験に成功したかのように、面白がっているのを隠しもしないでまた胸の突起を弄る。
「ほら見なさい。弄られていないほうはまだ桜色のままで平坦だが、こちらはバラのように色づいて物欲しげに立っているだろう」
チラリと目を走らせると、公爵の言うとおりだった。自分の身体なのに、公爵によって違うように塗り替えられているようで、思わず視線をはずす。
立ち上がった突起に赤い髪が落ちる。ん?と思う間もなく、胸の先を舐められる。
「っひっ、あ、ああッ…ぁっ」
初めての感触に声があがる。鳥肌がたち、腰に熱が一気に集まる。
ピチャリ、ピチャリとわざと水音を立てて舐められると、耳まで侵されているような錯覚に陥る。
「あ、あああ、っっつ、ひっ…だ、だん…なさ」
内股がびくっと痙攣して、腰が勝手にうごめく。
思考がじわりじわりと快楽に侵食されていく。

今まで触れられなかった方に、公爵の濡れた舌が触れた時、全身が震えた。
これ以上進められるとどうにかなりそうで、公爵の腕をつかんで押し止めようと試みる。
やめてください、と言えればどんなに楽か。それを言えずにただ首を振って、制止にもならない喘ぎ声をあげるだけ。
胸先を弄られただけで、先ほど出したばかりだというのにそこはもう熱をもって頭を上げている。
それを隠すように内腿に力をこめるが、それを見透かしたように、空いた手でぐいっと大きく開かされる。
鏡に映る自分を見ていたくなくて目を再び閉じる。視覚を失うと身体は過敏さを増す。
ザラリとした手で脇腹を撫でられると「あっ…」と信じられないくらいに甘くねだるような声が漏れる。
柔らかく歯を突起に立てられると、どうしようもなくなっていく。
触れてもいないのに立ち上がった俺の分身は、先端から透明の雫がだらだらと流れて自身を濡らしている。
出したい。早く出したい。
公爵が耳元で囁く。
「身体は正直だな」
息を吹きかけられ、背筋がびくびく震える。もうどうしようもなくなる。
「だん…な…さ、ま。お慰みを……いた…だきたいです」
普段なら口が裂けてもいえない言葉。だが、身体の中心に溜まった熱で何も考えられなくなる。
「よろしい」
何の前置きもなく指を二本後孔に差し入れられる。グジュリと粘り気のあるイヤらしい水音がする。
焼け付くような快楽が頭の中でスパークする。だがイケない。
先ほどまで公爵のモノを咥えこんでいたそこは、二本の指をやすやすと受け入れている。
「私のが出てきたな」
ドロリとした感触が腿を伝ってくる。
その感覚に震える。触って欲しい。痛いくらいに張っている俺のものに触れて欲しい。
わざと公爵が触れていないのはわかっている。自分で触れるにも目の前の男に伺いを立てねばならない。
「触っても…よろしいですか」
「それはまだだ」
必死の願いを冷たく却下され、下唇をかみ締める。快楽から逃れようと、子供のように泣きながらイヤイヤと頭を振る。

身体を持ち上げられ、後孔に公爵のものがあてがわれる。そのまま身体を落とされると、一気に根元までくわえ込む。
その衝撃に声にならぬ悲鳴をあげて、身体を痙攣させる。
「あっ、あああっ」
ゆっくりと腰を動かし、ベッドの振動を利用して下から突き上げたりと、緩急をつけた動きにどうしようもなくなってしまう。
少し身体をずらして、ある箇所を擦るように動かすと、これ以上になく張った前がさらに膨れ上がる。
我慢ならなくなって、自分の手をそこに添えて扱こうとしたが、手首をつかまれる。
おかしくなる。腰を揺らめかしながら、泣いて公爵に必死に慈悲を請う。
「おねがい、おね…。触って」
「ならば目をあけて今の自分を見なさい」
かたく閉じていた目を開ける。ぼやけた視界。何度か瞬きをすると鮮明になっていく。
目の前の鏡にうつるのは、どこかしこも赤く染めて、だらしなく開いた口からは喘ぎ声を絶え間なくだしている、見知った顔のはずなのに初めてみる顔。
快楽に蕩け、仇である公爵のものを離すまいと咥えこんで、触って欲しいと嘆願している男の顔。
「どうだ、淫らな自分の姿は」
淫猥な表情の自分など見たくないのに、目が離せない。
そのまま公爵の手が、爆発しそうなモノをそっと撫でる。
「あっ!ああああっ!」
歓喜の声をあげて、もっと強く触れて欲しくて掌に押し付けるように腰を揺らす俺を鏡は映している。
心の奥で守っていたプライドが崩れ落ちていく。
「上出来だな」
掌に包み込まれ、二三度扱かれる。待ち望んだ刺激に嬌声があがり、全身に電流のような刺激が走り、目の前が真っ白になる。

全身の力が抜けてズルズルと倒れこみそうになる。が、公爵の手が俺を支える。
荒い息を吐きながら、必死に意識を飛ばさぬように踏みとどまる。
快楽の波が引かぬのに、ゆっくりと俺の身体の奥深くにある公爵の分身が動き始める。
過敏になっている俺の身体は、背中をしならせて、新たな刺激から逃れようとする。
「自分が出したものは舐めるように言ったはずだが」
命令を下す公爵の声は珍しく上擦っている。熱い息を耳に吐きかけられ、うっすら目をあけると、鏡にべったりと精液がついている。
何も考えられずに、素直に言葉に従い冷たい鏡に顔を寄せる。そのせいでズルリと公爵のものが抜けたが、咎める声は聞こえなかった。
鏡に舌を這わせる。鏡の向こうでは快楽に蕩けた厭らしい表情で、赤い舌を出して美味しそうにドロリと落ちて行く白濁液を舐める俺がいる。
生臭い苦い味が口の中に広がる。だが、その行為で身体の奥が疼き始める。
肩を掴まれると、強く引き寄せられる。そのままベッドに押し倒され、曲げた両脚を胸に押し付けられる。
そのまま一気に奥まで突き上げられ、激しく攻め立てられる。豪華なベッドがギシギシと軋む音をたてる程の激しさだった。
「ひっあっ、ああっ!いっ、っつああああ」
激しい律動に意識を半ば飛ばしながら、俺は嬌声をあげていた。




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