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愛人 読みきり連作
番外編 ジェイド 浴室
好青年を絵に描いたような人物だと思っていた。
女性に対して必要以上に物腰柔らかに接するくせに、女性恐怖症という厄介な性質をもつ男。
最初はギスギスして互いに壁を作りあっていたPTの中、気まずい雰囲気が満ちると穏やかな方にもっていこうとさりげなく気を配るのが彼だった。
心の奥底に燃やしていた復讐の炎さえも「もう終わった事だ」と葬って、その対象者だった赤毛の少年に柔らかな笑顔を向けた。
どこまでも人が好い、と私は胸の内でそっと苦笑いしたものだった。
だから今。
この状況下で彼が初めて見せる表情に私は戸惑う。
戸惑いながらも理性を失くした彼をもっと見たくて、彼の胎内に深く入り込んで激しく律動する。



彼が一人早めに夕食を切り上げて、浴室でシャワーを出しながら自分を慰める行為をする事に私は早くから気付いていた。
男の生理現象の一つとして、健康な成人男性なら当然の行為なので、気付かぬふりをしていた。
昼食後、各自自由行動をとる事となり、私は書物を読むために宿屋に戻ることにした。
部屋に戻ると流れる水音が耳に入ってくる。ああ、彼も戻っていたのか。
ただその水音の流れる中、か細く切なげな声をあげているのを耳にした。
「た…りな…い。もっ……ああっ」
その言葉に惹かれるように、浴室の扉を細くあけた。
そこには浴槽に上半身を預け、双丘の奥になにやら男根を象ったものを出し入れさせながら、前を扱いている彼の姿だった。
表情は見えなかったが、白い身体が紅く染まって、水音にかき消される喘ぎ声は、誰かに甘えているように媚びを多く含んでいる。
気付かれる前にそっと扉を閉める。
彼の初めて見せる痴態に、身体が熱く昂ぶった。

「という訳で、お手伝いをしてあげようと思い立ったわけです」
いつものように、幼馴染からは「何を考えているかわかんないから、その張り付いた笑顔はやめろ」と酷評されている笑顔を彼に向ける。
ぽかん、と。
突然の私の闖入に、今自分がどんな格好をしているのかを忘れ、彼はまさにポカンと口をあけて私をまじまじと見返している。
「あなたは物足りないのですよね。まあ、そんな貧相なモノでは満足出来るはずもありません」
ようやく私の言葉が思考に繋がったらしい。自分の痴態をみて、顔を真っ赤にして騒ぎ始める。
「ちがっ、これは!というか、あんた、デリカシーないのかっ!!!」
「充分持ち合わせているつもりですが。それよりも親切心の方が勝ってしまいました」
「な、な、なんの親切だ!」
「こういう親切ですよ」
そういうと彼の奥に埋もれていたモノを一気に取り出す。
「あっ」
抜き出された感覚に、身体を一瞬震わせ、声を漏らす。慌てて手の甲を口に押し付けて、顔を益々赤くしている。
浴室の床に転がったモノに視線を向ける。左右に不規則に動いているが、いかんせん小さく細すぎる。
「あんなおもちゃよりは私の方があなたを満足させる事が出来ますよ」
「あんた何急に言い出すんだ」
「見たところあなたはかなりこの行為に手馴れているようです。でもあれでは足りない、と漏らしていましたよね。
そして私は先ほど貴方のその行為を見て、淡白なはずですが久々に熱くなってしまいました。これはギブアンドテイクというわけです。
ルークが戻ってくるのにまだ時間はあります。さあ、始めましょうか」
「……あんた…」
呆れているのか、珍しく眉根に皺を刻んで溜息をついている。
その顎をつかんでこちらを向かせる。シャワーの湯にあたって、いつもふわふわしている髪は水を多く含んで彼の顔に張り付いている。毛先から水がポタポタと落ちて彼の顔を濡らしている。
頬は赤く染まって、蒼い瞳は私だけを映している。
小さく開いている唇をペロリを舐めると、慌てて身体を離そうとする。
それを阻止すべく、私は彼の股間に手を添える。先ほどまで勃っていたペニスは、今は萎えてしまっているが、少し手を加えるとすぐさま堅さを取り戻す。
「や、やめっ……あっ…。た、たの…む……やめ…」
小さな拒絶は力がなく、むしろ、もっと、と誘い込んでいるようだ。
今まで聞いた事のない甘く切羽詰った声に、添える手に力が入る。
「ああっ、やっ………。ジェ…イ…ああああっ」
先端に溢れ出る液を指の腹で弄ると、甘い叫び声をあげ、私の腕にしがみついてくる。
「やっ…ジェ…イド」
「素直になりましょう。互いが気持ちよくなればそれでいいのでは」
「だが…あっ」
素直にならないのならば、身体から先に素直にさせればいい。身体とは裏腹な声をだす口を塞ぐことにする。
彼の口腔内をじっくり舌で味わう。
歯列をなぞり、上顎を舐め、奥に引っ込んだ彼の舌先をつついて、絡ませる。
「んっ…」
鼻からぬける息が甘くなってくると、ようやく彼もおずおずといった風に舌を絡ませてくる。

ようやく口を離すと、彼の口の端に唾液が流れている。それを指で拭って
「可愛いですね」と思った事を口にする。
いつもの健康的な彼と違い、それだけでも十分色香を放っている。
顔をまた赤らめ視線を外す彼を抱き締めながら
「どうやら我慢も限界にきてしまったようです。どうしましょうか、あなたを先にイカせた方がよろしいですか?
どちらの方があなたの身体に負担がかからないのですかね」
そう問うと、視線を外していた彼が驚いたように私を見返してくる。
「何か驚くような事でも?」
「い、いや。……あんた、優しいんだなって」
「常日頃からそう言っているはずですが」
「そうだったかな」
と彼は笑う。優しい、ですか。それは誰と比べて優しいと思ったのでしょうね。
きっとあなたをこのようにした男なのでしょう。彼の置かれた環境を考えると、一人だけ思い当たる人物がいる。思わず昏い感情が沸き起こる。
その時、部屋の扉が開く音が耳に届いた。

「ガイー!って、あいつまたシャワー浴びてんのか」
私の腕の中で、ギクリと彼が身体を強張らせる。彼の耳に口を寄せ、囁く。
「扉の鍵を閉め忘れました」
目を見張ってあわてて私の腕から逃れ、浴室の鍵に手をかける彼の背を抱き締める。
鍵が既にかけてある事に、訝しげに首をねじって私をみるガイにもう一度囁く。
「すみません、私は優しくはないようです」
そう言うと、彼の腰をしっかり掴んで、あのおもちゃが入れられていた場所に自分のペニスをあてがう。
「や、やめろ。ルークがいるんだぞ」
小声で怒ったようにいう彼に
「そうですね。だから声をたてないでくださいね」
そう優しく諭すように言うと、一気に捻じ込んだ。
そこは狭く熱く、私を押し戻すように締め付けてくる。
声にならない悲鳴をあげて、身体を震わせて耐える彼の首筋に誘われるように口付けを落とす。
狭い箇所を抉るように押し進めていく。苦しそうに息を吐き、耐える彼が一瞬ビクリと身体を震わせた。
少しぬいて、もう一度ゆっくり内壁を擦るように押し進めていくと、また背をしならせて、ああっ、と甘く切ない息を漏らす。
ああ、ここが世に言う前立腺というものですね。
そう冷静に考えていると
「ガーイ、いつまで入ってんだよ。ナタリアとアニスが買い物に付き合えって煩いんだよ」
と部屋の中から声がかかる。
もう一度、その前立腺を刺激するように腰を動かしながら囁く。
「応えてあげないとこの扉の前まで来てしまいますよ」
おそるおそるこちらを振り返る瞳は潤んでいる。
その瞳に誘われるように、腰を激しく打ち付ける。
「んっ。あっ……。悪い、もう少し入らせて…くれよ」
いつものように、浴室で男と交わっているなど感じさせない声をルークに向ってかける。
「ちぇ、仕方ないなー。つーかジェイドはどこ行ったんだよ。俺だけ荷物持ちかよ」
ブツブツと文句を言いながら、部屋の扉は閉められた。
はあ、と安堵の息を吐くガイに「良かったですね。ルークにばれなくて」と声をかけると、ぎっと睨み返される。
「あんたがこんな事しなきゃ」
「こんな事って、こういう事ですか」
笑いながら、抜き取るギリギリまで引いて、それから一気に根元まで突き上げる。
「ああ!……ひっ…やあぁ」
そのまま律動を激しく、彼の身体をひたすら貪った。


「ガーイ。もういい加減……って、どうした、ガイ」
ルークが部屋の扉を開いた途端、彼の寝ているベッドに駆け寄ってきた。
心配そうに彼を見詰めるルークに、彼は力なく笑ってみせる。
「すまん、のぼせた」
「ば、バカ。何やってんだよ」
「うん、悪い、心配かけちまったな」
「そんな事はいいけど。夕食どうする?」
「んー、無理だ。まだちょっと頭がグラグラするんだ」
顔を赤くしてルークを見上げる彼は、確かにまだ立って歩くのは避けたほうが賢明に見える。
「わかった。ゆっくりしてろよ。……ってジェイド、あんたいつ戻ってたんだ」
「おや、ようやく私が目に入りましたか。浴室でのぼせていたガイを介抱したのが私なんですけどね」
「あ、そうだったんだ。ジェイド、夕食は外で食べようって話なんだけど」
「すみません、先に早めの夕食を取りましたので。私はここでガイをみていましょう」
「そうか。わりいな。ガイ、何か軽いものテイクアウトしてくるから、水分とって横になってろよ」
そう彼に声をかけると、その事を仲間に伝えにいくためにルークは慌しく去っていった。
その足音が遠ざかると、彼の寝るベッドの端に腰をかける。
「さて、どうしましょうか」
「わざわざあんたが残るって言い出したって事はそういう事だろ」
「おや、つれないですね。もう少し可愛く誘ってくれると嬉しいんですが」
「誰がやるか」
そう口で言いながらも、顔を寄せると、当然のように唇が合わさる。ギシリとベットの軋む音に誘われるように、彼に掛かっている掛け布をはぐ。
全裸のままで横たわる彼の身体をゆっくり撫でながら、再び身体を交わらせるべく口付けを深くする。



間男その2 ジェイド編
その1はヴァンです。
ジェイガイは初めてだったけど、書けるものだと思いました。でもエロが薄くてすみません。



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