創作短編『それぞれのゆく年くる年』
社員食堂にて (前編)
お昼休みの社員食堂はガヤガヤと賑わっていた。
12月も末の真冬に射し込む太陽の光は淡く、時折分厚い雲に覆われて光が遮られた。
食堂も暖房が入っているとは言え、節電の為に温度を一定以上は上げずやはり足元などは冷えるので、太陽光が射し込む窓際の席はいつもすぐに埋まる。
その特等席をキープ出来た若手社員達のグループが、陰った空を恨めしそうに見上げている。
「ちぇ、せっかくいい感じに太陽照ってたのに、さみー! 雪でも降るんスかね?」
今年入った新卒の男の子がぼやく。
同じテーブルに着いている先輩の女子社員がフォークの先で野菜サラダを突つきながら手を振り、
「あー、降らない降らない。年内は無いよねー、絶対。だってクリスマスあんな冷えた割りには降らなかったじゃん」
「この娘(こ)ホワイトクリスマス期待してたからね〜」
と、その隣の席に着いていた女の子がからかう。
「だって天気予報であれだけ推してたら降ると思うでしょ絶対! 何だったのアレ一体〜」
「ホワイトクリスマスは厳しいっスよ…この辺雪あんま降らないっスから」
「そうそう、話変わるけどさー、諫山(いさやま)課長って奥さんと別居してるらしいよねー」
諫山課長というのは、彼らの属する部署の上司だった。
30代前半と比較的若くして課長に上がったが、どこか冷たい印象があり、あまり部下に慕われるようなタイプではない。
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