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散歩
ブロッケンはいったいなにしてんだろう、とバッファは首を傾げた。拍子に量の多い髪はモシャリと揺れる

風もなくひどく鮮やかな青空にのうのうとした様子で真っ白な雲がうかぶ、目に痛いほどまぶしい初夏の事
テイクアウトしたアイスコーヒーのプラスチックの容器はびっちり汗をかいていて一口飲むとぬるくて薄くて。しかし不思議と心地よく喉をすべる

「ブロッケン」
「んあ」
「いったいさっきからなんで」
目をとじてんだ?
眠いということでもなし、川沿いの住宅地からちょいと離れた道を散歩しながらのことで。ブロッケンはコーヒー屋でテイクアウト商品を選んだあとからこうしてずうと目をとじて気持ち顎を上げて、歩いてる。
転ばないように横にいるバッファのシャツの裾は握ったまんまで

「気になるのか」
そりゃあまあ。当たり前のこと聞くなばかやろう、と軽くつっこみのパンチでもいれてやりたいところだ。
そんなバッファの表情を薄目で眺めてブロッケンは、ふふ、とひそやかに笑う。するとだ。なんだよ、とバッファはまた拗ねたように言うのでさらにブロッケンの笑みは増長される。ふふふ




「ひなたぼっこ」

しばらくしてブロッケンは大きな眼を開けて、
(その鮮やかなブルーの瞳はひどく久しぶりな気がして、バッファは宝物でも見つけた気分になった)
そう言う。一瞬その瞳に見惚れたバッファは、間を空けてから再び首を傾げた
「ひなたぼっこ」
子供みたいにブロッケンの言葉を反芻して

「まぶたってあんまり日にあたらないだろ」
だからまぶたのひなたぼっこだ。
ブロッケンはそう言うとひとり満足したようにして、それからバッファに、まぶたにキスしろ、とねだった。

風もなくひどく鮮やかな青空にのうのうとした様子で真っ白な雲がうかぶ、目に痛いほどまぶしい初夏の事
まぶたから唇に移動した軽いキスは、ほんのりとコーヒーの味がした。



end




【散歩】




アトガキ

まぶたのひなたぼっこはE國K織先生の小説から引用してしまいました、なるほどなあ〜と思って。ふたりは場所かまわずイチャイチャしてたらいい。散歩がにあうふたり


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