zzz
真夏の恋人
「………ロー…………」
「………ロちゃん…!」
「ジロちゃん起きて!」
真夏の恋人
寝てしまっていた。
だって仕方ないよね。ここは地域の図書館。さらに言うとその図書館に併設された自習室。いい感じに利いている空調に、いい感じに調節されたBGMの音量。さあどうぞ!寝てください!とでも言っているような環境下。これで寝ないほうがおかしくない?おかしいC
「………おはよぉ」
「おはよぉじゃないよ?まだ1ページしか進んでないよ?」
「あっ、へへ」
よく晴れた火曜日。
夏休み初日なのになぁ。徹子(名前)が、宿題は前半に終わらせようとか何とか言うからこうしてここに来ているって次第。
起きたはいいけど全然やる気が出なくて、机に伏した状態で徹子(名前)に目をやる。まつげ長いんだなぁ。少し焼けてるけど健康的でいいんじゃない。
外では蝉が命を搾り取るように、力一杯鳴いている。冷房が良く効いた部屋には、蝉の鳴き声が季節が夏であることを伝えている。
「ねえジロー。もうすぐ全国大会じゃん。その前に終わらせて、大会終わった後たくさん寝ればいいじゃない」
「う〜ん」
そういうことではないんだよなぁ。
少し困った顔の徹子(名前)が面白い。
困り顔をしたすぐあと、あ、と声を漏らし
「ねえ、大会、がんばってね」
応援しに行くから、と続けて徹子(名前)は下を向いた。宿題をしてるふりをして見せた。絶対振りだね。だって顔が真っ赤だ。気恥ずかしさからか、普段は応援しに行く、なんて言葉にしないのに。なんだかこっちも気恥ずかしくて嬉しくて、口がほころぶ。
「うん、がんばる」
へへ、と照れ隠しの笑いを残して、姿勢を正す。宿題はまだ始まったばかり。でも本気を出せば、すぐ終わる、はず!
こんなおれでも、成績は悪くはない。はず。
「今日の分終わったら、遊ぼうよ」
「えっ寝ないの?いいの?」
「寝なくても死なないC」
クーラーでよく冷やされた部屋で、タオルケットに包まって寝る、あの感じに少し似ている。
つまるところ、幸せだなあ!
真夏にしか感じられない、幸せのα波を感じて、再び静かに瞼を閉じる。
少し速めの心臓の音と、空調の音だけがこの部屋に響いていた。
「ジロー起きて」
「あっはいしゅみましぇん」
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取って付けたようなアルファベットがジワリます。
最後噛ませてすみません。
2015.7.22
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