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鏡の外から
鏡の外から
女なんて全員同じ様なものだと思っていた。互いに写しあった、コピーの様な存在であると。きゃあきゃあ騒ぎ、媚びを売り、泣く。きゃあきゃあ騒がれる辺りだけは、正直悪い気はしなかったが、色々と面倒な生き物であるとは常々感じていた。こいつらは、疲れないのだろうか。つまらないし、鬱陶しい。騒いでいる女子たちに関わった所で、自分のメリットになる物は何一つ無い。(益々くだらねーな)
生徒会の書類確認、報告書、部員の練習メニュー調整、試合のオーダー作成など、やらなくてはいけないことが山ほどある。授業が終了し、仕事を片付けるため早々に部室へ向かおうと身支度を整えていると、背後から明らかに自分に向けられた声がした。
「跡部って、疲れないの?」
「…あん?」
後部席の女子。
黒柳(苗字) 徹子(名前)。
騒ぐ様な奴では無いので印象には薄かったが、奴は確かに後ろにいた。黒柳(苗字)は気怠そうに口を開いた。
「あの子たち、鬱陶しくないの?」
「悪い気はしねーな」
「女子なら誰でも良いんだ?」
「そんなわけねーだろ」
「へえへえ、意外だね」
頬杖をつきながらため息を吐かれたが、俺にはその理由がよく理解できない。
「てめー」
「…なに?」
意味が解らなかった。
知らないうちに俺には理解が出来ない世界が出来上がっていた。
そう言えばこいつは俺に騒がないし(特に自意識過剰になっているわけではないが)、他の女子とは何か違う。
「いや、何でも、ない」
ただ唯一解ることは、こいつが鏡の外の世界に住んでいると言うことだ。
(ハッ…面白ぇじゃねーの)
あいつだけは、鏡の外だ。
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