L・Love song(本編)
<285話>機動六課A [合同編]
*1年前*
-ミッドチルダ臨海第8空港-
[視点無し]
1年前、ミッドチルダの臨海地区。
ある危険な密輸物が原因で起こった空港での火災は、あっという間に全体に広がった。
近隣の陸上部隊も航空隊も緊急召集される大事件になってしまった。
はやて「203、405、東側に展開して下さい。魔導師陣で防壁張って燃料タンクの防御をっ」
リインU「はやてちゃん、駄目です。まるっきり人手が足りないですっ」
はやて「そやけど首都からの航空支援が来るまで、持ち堪えるしかないんよ……。頑張ろっ」
リインU「は、はいっ」
陸士部隊で指揮官研修をしていたはやては、前線指揮で作戦に参加していた。
休暇を利用してはやての所に遊びに来ていたなのはとフェイトも、救助に参加した。
……………。
『……航空魔導師、本局02。応答願います』
救助の為に、空港上空を飛行するフェイトに無線が入る。
フェイト「はい。本局02、テスタロッサ・ハラオウンです」
『8番ゲート付近に要救助者の反応が出たんですが、局員が進めないんです。お願い出来ますか?』
フェイト「8番ゲート……、バルディッシュ」
『Arrival in approximately 2 minutes』
フェイト「……すぐ向かいます」
………………。
局員A「駄目だ駄目だっ!こっちは駄目だ!!」
局員B「この先に子供が取り残されてるんだ!!何とかならないのか!?」
局員A「さっき本局の魔導師が突入したっ。救助は彼女がしてくれる!」
炎が立ち上ぼる中、救助隊は進めずにいた。
その先のフロアには要救助者の女の子が取り残されているが、彼等はそれ以上進むことができずにいた。
しかし一人の本局の魔導師が救助に向かっていた。
エース・オブ・エースと呼ばれた"彼女"が……。
………………。
?「お父さん……、お姉ちゃん……」
一人の女の子が涙を流しながら、フラフラと歩き回る。
その瞬間、突如隣りのフロアを繋ぐ窓が爆発を起こし、少女は吹き飛ばされる。
バックドラフトという現象だろう。
?「…い、痛いよ……、熱いよ…、こんなの嫌だよ……。帰りたいよ……」
吹き飛ばされた少女は、何とか起き上がるも、歩き回る元気はなかった。
?「助けて……」
その刹那、少女が跪く背後に存在する女神像の土台にヒビが入る。
?「誰か……助けてっ」
その瞬間、土台が腐敗した女神像が少女に向かって倒れる。
?「……あ……」
少女が気がついた時には、もう避ける余裕などなかった。
その恐怖のあまり身をかがめる少女だが、女神像が少女を押し潰すことはなかった。
女神像はピンク色のバインドによって固定されていた。
それに気がついた少女は見上げると、そこには一人の魔導師、管理局のエース・オブ・エース高町なのはがいたのだった。
なのは「……よかった、間に合った…。助けに来たよっ」
相当急いだのだろう。息を切らしながら少女に声をかけるなのは。
なのはは少女の元に舞い降りると、優しく声をかける。
なのは「よく頑張ったね。偉いよ」
すると安心したのか、少女は更に泣き出してしまう。
なのは「もう大丈夫だよ。安全な場所まで一直線だから」
するとなのはは少女を抱き抱え、レイジングハートを天井に向けて構える。
『Upward clearance confirmation』
ピンク色の魔法陣を展開する。
『A firing lock is canceled』
なのは「一撃で地上まで抜くよ」
『Alright,load cartridge』
カードリッジをロードする様子は、まるで天使の羽が舞い散るようにさえ見えた。
少女はただその様子に魅入っていた。
『Buster set』
なのは「ディバイーン……、バスターっ!!」
………………。
なのは「こちら教導隊01。エントランスホール内の要救助者、女の子1名を救助しました」
ディバインバスターで天井をぶち抜き、そこから上空へと脱出。
なのはに抱き抱えられた少女は、不思議な気持ちで地上を見下ろしていた。
『ありがとうございます。さすが航空魔導師の"エース・オブ・エース"ですねっ!!』
無線からの称賛に少し照れ笑いを浮かべるなのは。
すぐに次の行動に移る。
なのは「西側の救護隊に引き渡した後、すぐに救助活動を続行しますね」
『お願いします』
………………。
はやて「そのまま南へっ」
リインU「はやてちゃん、護衛部隊の指揮官が到着ですっ」
?「すまんな。遅くなった」
そこに現れたのは40歳前後の男性だった。
はやて「いえ。陸上部隊で研修中の本局特別捜査官、八神はやて一等陸尉です。臨時で応援部隊の指揮を任されてます」
ゲンヤ「陸上警備隊108部隊のゲンヤ・ナカジマ三佐だ」
手早く自己紹介を済ませる。
はやて「ナカジマ三佐、部隊指揮をお願いしてもよろしいでしょうか?」
それと共にデバイスを取り出すはやて。
ゲンヤ「あぁ…。お前さんも魔導師か」
はやて「広域型なんです。空から消火の手伝いを」
その時、なのはからはやてへ無線が入る。
『はやてちゃん。指示のあった女の子を無事救出。名前はスバル・ナカジマ。さっき無事に救護隊に渡したんだけど、まだお姉ちゃんが中にいるんだって』
はやて「了解。私もすぐ空に上がるよ」
『了解』
リインU「ナカジマ……」
リインがその珍しい、そして聞き覚えのある名字を口にする。
ゲンヤ「ウチの娘だ…」
リインU「え……っ!?」
リインもはやても驚きを隠せない。
ゲンヤ「部隊に二人で遊びに来るように言った…」
ナカジマ三佐も親なのだろう。
娘達を心配して、いてもたってもいられない様子だ。
はやて「……ではナカジマ三佐、後の指揮をお願いします。リイン、しっかり説明頼むな。説明終わったら上でウチと合流や」
リインU「はいですっ」
それだけを言い終えると、はやてはすぐさま自らのデバイス、シュベルトクロイツを展開し、空へと上がる。
……………。
一方フェイトは…
フェイト「管理局です」
壁を突き破り、そのフロアに侵入すると、バリアに守られた数名の救助者を発見した。
?「こ、ここですっ」
フェイト「もう大丈夫ですから」
『Defenser Plus』
張られていたバリアは弱々しいものだったので、その上からバリアを張る。
フェイト「すぐに安全な場所までお連れします」
?「あ、あの…」
救助者は少し苦しそうにだが言う。
フェイト「はい?」
?「魔導師の女の子がこのバリアを張ってくれて、それから妹を探しに行くってあっちに……」
その方向に目をやるフェイト。
そっちには炎が延々と燃え盛っていた。
フェイト「わかりました。皆さんを安全な場所までお連れしたらすぐ探しに行きます」
……………。
?「スバル……?…いやっ」
爆発が巻き起こる中、妹を探して進む一人の女の子。
?「スバル…?スバル…、返事して…。お姉ちゃんがすぐに…、助けに行くから……」
フェイト「そこの娘、ジッとしててっ!!今助けに行くから!!」
するとその少女をフェイトが発見する。
その声に振り向く少女。
だが、その瞬間、少女の足下が崩れる。
?「…ああっ!!」
『Sonic Move』
咄嗟にソニックムーブで少女の下に回り込み、どうにか抱き留める。
フェイト「危なかった…。ごめんね、遅くなって……。もう大丈夫だよ」
そしてすぐに出口に向かって飛行を始める。
フェイト「妹さんの名前は?どっちに行ったかわかる?」
?「あの…、エントランスホールではぐれてしまって……、名前はスバル・ナカジマ。11歳です」
すると少女の言葉に無線が入る。
『こちら通信本部。スバル・ナカジマ、11歳の女の子。既に救出されてます。救出者は高町教導官です。怪我はありません』
?「スバル……、よかった……」
そこでやっとホッとしたのか、少女は笑顔を浮かべる。
フェイト「了解。こちらは今、お姉さんを保護。……お名前は?」
ギンガ「あ、ギンガ…、ギンガ・ナカジマ、陸士候補生の13歳です」
すると今度はフェイトが笑顔を浮かべる。
フェイト「候補生か、未来の同僚だ」
ギンガ「き、恐縮です」
………………。
ゲンヤ「補給は?」
リインU「あと18分で補給車が7台到着します。首都航空部隊も1時間以内には主力出動の予定です」
ゲンヤ「遅ぇな…。要救助者は?」
リインU「あと20名ほど…。魔導師さん達が頑張ってますから、なんとか……」
ゲンヤ「最悪の事態は回避できそうか?」
リインU「はいですっ!」
ナカジマ三佐に現状を伝えるリイン。
ゲンヤ「よし…。おチビの軍曹さんも、もういいぞ。自分の上司のところに合流してやんな」
現状を理解したのか、ナカジマ三佐はリインに告げる。
だが…
リインU「いえ、もう少し情報を整理して、地事系統を調整してからにします」
ゲンヤ「そ、そうかい。まぁ助かるがな」
そのリインの様子にナカジマ三佐は驚きの表情を浮かべていた。
………………。
はやて「仄白き雪の王、銀の翼以て、眼下の大地を白銀に染めよ」
上空で魔法陣を展開するはやて。
局員A「八神一尉、既定ブロック避難完了です。お願いします!!!」
はやて「了解っ!……来よ、氷結の息吹……。アーテム・デス・アイセスっ!!!」
圧縮した気化氷結魔法を空港に打ち込む。
すると空港から熱を奪い、次第に全域を凍結させた。
局員A「す、すっげぇ…」
局員B「これが、Sランク魔導師の力……」
身体に着いた氷を払い落としながら驚きの声をあげる。
はやて「巻き添えごめんな。私一人やと、どうも調整が下手で…」
局員B「い、いえっ」
……………。
その後、駆け付けた首都航空隊の協力により、事態は大事には至らなかった。
………………。
『おはようございます。早速現場を呼んでみましょう』
翌朝、研修中のはやての部屋からは無機質にTVの音が流れる。
『こちら現場です。火災は現在は鎮火していますが、煙は未だに立ち上ぼっている状態です。尚、現在は時空管理局の局員によって危険な調査と、事故原因の解明が行われています。幸いにも迅速に出動した本局航空魔導師隊の活躍もあり、民間人に死者は出ておりません』
はやて「……う〜ん、やっぱりなぁ〜」
なのは「う〜ん?」
寝ぼけ眼を擦りながら、はやての言葉に耳を傾けるなのはとフェイト。
はやて「実際働いたんは、災害担当と初動の陸士部隊となのはちゃんとフェイトちゃんやんか」
なのは「あはは。まぁ休暇中だったし…」
フェイト「民間の人達が無事だったし…」
すると3人で横になっていたベットから、はやてが身体を起こす。
はやて「あんな、なのはちゃん、フェイトちゃん…」
はやての表情は真剣そのものだったので、なのはもフェイトもまじめに聞く。
はやて「私、やっぱ自分の部隊を持ちたいんよっ。今回みたいな災害救助はもちろん、犯罪対策も発見されたロストロギアの対策も…」
ミッドチルダ地上の管理局部隊は行動が遅すぎる。
後手に周って少人数ばっかりの動きじゃいけない。
はやて「私も今みたいにフリーであっちこっち呼ばれてたんじゃ、ちっとも前に進めてる感じがせえへん。少数精鋭のエキスパート部隊、それで成果をあげていったら上の方も少しは変わるかもしれへん」
すると、はやては改まって姿勢を正す。
はやて「……でな、私がもしそんな部隊を作ることになったらフェイトちゃん、なのはちゃん、協力してくれへんかな……?」
するとなのはとフェイトは顔を見合わせる。
はやて「も、もちろん二人の都合とか進路とかあるんはわかるんやけど…、でも…その……」
それを見てはやてはあたふたする。
なのは「はやてちゃん、何を水くさい」
フェイト「昔からの付き合いじゃない」
二人ははやてに身を乗り出してくる。
なのは「それに、そんな楽しそうな部隊に誘ってくれなかったら逆に怒るよ。ねっ、フェイトちゃん」
フェイト「うんっ」
二人のその優しさに、はやては心の底からうれしくなった。
はやて「おおきに……。ありがとうな、なのはちゃん、フェイトちゃん」
………………。
=続く=
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