L・Love song(本編)
<283話>理解ある教師と進展 [合同編]
-鳴海学園-
[蒼真視点]
マオ「ほぇ〜。ここが蒼真の通う学校なんだね」
蒼真「ああ」
鳴海学園はスポーツ、学問、行事、全てに力を入れているこの辺りでは少し有名な学校だ。
それだけに校舎に限らず、敷地などが半端なく大きい。
マオ「広いな〜、おっきいなぁ〜」
その鳴海学園に、耳を隠すために帽子を被ったマオはひたすら感心するばかりだ。
蒼真「ほら、行くぞ」
オレははぐれないように、辺りをキョロキョロと落ち着かないマオの手を引く。
マオ「……あ、うん…」
マオの頬が紅く染まっているようにも見えるが気にしない。"あの人"がいるであろう宿直室へと向かった。
……………。
-宿直室-
蒼真「失礼しやーす」
軽くノックをして、宿直室へと入る。
さくら「およ?珍しいお客だね〜」
そこには去年のオレの担任、芳乃さくらが軽い調子でオレ達を招き入れる。
さくら「そっちの娘は?」
するとさくら先生はマオを見て問う。
マオは帽子を被っているため、まだ獣人だとは気付かれていないようだ。
蒼真「実はコイツのことで相談があるんだ」
きっと魔法使いであるさくら先生に相談すれば大丈夫だろう。
そう思ってオレは事情を説明した。
………………。
こちらの世界にきたマオと出会い、エンディアスに行ったこと。
エンディアスとこっちの世界との違い。獣人族やエルフなどの人種。
向こうの世界で経験したこと。
そして和弥達と共に飛ばされた枯れない桜により帰ってきたことを説明した。
さくら「なるほどねぇ…」
オレの説明を聞き終えたさくら先生は、最初のような脳天気な笑顔はなく、真剣な表情だった。
蒼真「それでコイツを学園に通わせたいんだけど…」
さくら「うん。大丈夫だよ」
蒼真「えっ!?」
あまりに簡単に即答したので驚いてしまった。
さくら「何を驚いてるの?ウチの学園は神族だって魔族だっているんだから」
確かにそう考えれば大丈夫な気もするが……。
さくら「秋月君は一人暮らしだったよね。学費は奨学金を貰えば問題無いしね」
さすがオレ達と同い年で教師をやっているだけあり、頭が回るなあ。
蒼真「さすがさくら先生。サンキューな」
オレは隣りに座り、よくわかっていないマオの頭を手で押し下げる。
マオ「あ、ありがとうございますっ」
するとマオも状況がわかったようで、お礼を言う。
さくら「うんうん。一応理事長にはボクから話を通しておくから。それより……」
するとさくら先生は真剣な表情を解き、再び脳天気な表情になる。
さくら「その帽子とってみてよ。耳が見たいなぁ〜♪」
マオ「…え?あ、はい」
マオは戸惑いながらも帽子をとる。
すると頭部からピョコっと猫耳が現れた。
さくら「にゃーっ!?かわいい〜♪」
するとさくら先生はたまらずマオへと飛び付き、マオの耳をふさふさと触る。
マオ「あ、アハハハハ……」
マオはただ笑うしかないと言った状況だった。
ただ、そのさくら先生の様子は年相応……、いやもっと子供に見えたのだった。
…………………。
-学園前-
蒼真「いやぁ、大変だったな」
オレは先程の様子を思い出し笑いしていた。
マオ「可愛い先生だったね。あんな先生がいるなんてエルデは凄いなぁ」
蒼真「いや、あんな教師がいるのはウチの学園だけだぞ」
むしろウチ以外の学校に、あんな教師がいたら大変だ。
そんなことを話しながら家路へとつく。
……………。
-桜並木-
[和弥視点]
瑠伊はずっと聖を想い続けて、そして引きずっていたんだろう。
いや、きっと今でもずっと…。
それだけ大好きな人が管理局の裏切りにより殺された。
恨むのは当然だ。
もし俺が同じ状況になったらどうする……?
今の瑠伊のように、憎しみを自分の中のみにとどめることができるだろうか……。
そんなことを考えながら、俺は学園へと足を伸ばす。
理由はただ一つ。
蒼真の住所を聞くためだ。
実は俺が考えているのは、忍であるマオに教えを乞おうということだ。
だけど俺は蒼真の家を知らなかった。
一人暮らししているとは聞いていたが、場所までは知らなかった。
なので学園まで足を伸ばしたというわけである。
次第に桜並木の向こう側に学園が姿を現した。
和弥「あ…」
蒼真「お、和弥」
マオ「和弥おはよ〜」
すると学園内から蒼真とマオが現れる。
もう11時だ。
おはようには遅いと思うが…
蒼真「あれ?お前眼鏡なんて掛けてたか?」
和弥「ん、いや今日からだよ。元々目が悪かったからな」
俺はその言葉を適当にあしらう。
まあ目がよくないのは事実だが。
和弥「それより学園から出てきたけど、何してたんだ?」
蒼真「マオを学園に通わせるためにさくら先生に相談してたんだよ」
マオを学園に通わせる。
そのことに少し不安を覚えたが…
和弥「まあ、さくらに相談したなら大丈夫だろうな」
あんな身なりでも、さくらは信用できる優秀な教師だ。
それに加え、魔法使いであるさくらなら今回のことも理解してくれるはずだ。
マオ「それで和弥はどうしたの?」
和弥「ちょっとマオに話があって、蒼真ん家に行こうと思ったんだけど場所がわかんなくってな」
蒼真「ならとりあえずウチに行くか。すぐそこだから」
そうして俺達は蒼真の家へと向かった。
………………。
-蒼真の部屋-
そこは学園から5分程度歩いた、桜公園のすぐ近くに位置したアパートの一室だった。
蒼真「それで話ってのは?」
和弥「……実はマオに忍術を教えてもらいたいんだ」
そして俺は二人にそう思うに至ったきっかけを話し始めた。
……………。
俺が魔法を始めたきっかけ。
今回の敵、スカリエッティのこと。
そして吉村和樹のこと。
マオ「うん。和弥の戦闘スタイルに忍術を取り込もうってのはいいアイディアだと思うよ」
マオは少し考えると、すぐに頷いてくれた。
マオ「……うん、それならいいよ」
まあマオの人柄的に断られるとは思ってなかったのだが。
和弥「サンキュー。助かるよ」
マオ「ただ、最後に一つだけ聞かせて」
マオは真剣な表情になる。
マオ「和弥が戦うのは何のため…?」
その問いに俺は戦い始めた時から決まっていることを口にするだけだった。
和弥「好きな人を守りたい。ただ一緒に歩いて行きたいんだ…」
俺の言葉を聞くとマオは頷いた。
マオ「忍術の修業ってのは大変なんだけど、それだけの決意があれば大丈夫そうだね」
そうして俺はマオの下で忍術の修業を積むことになった。
………………。
=続く=
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