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いにしえからのこもりうた
6、相棒よ


病院から出た後に、遊戯はエメラに強くなる。といった。
そんな彼の覚悟を感じたのか、彼女は力強く頷いたのであった。

フレイは二人が早退になっていることを確認したのちに、エメラに了承を得て彼を自宅に招いた。
高級住宅に比較的に近い場所のマンション。
その最上階よりも一つ下がったフロアが彼女らの家である。
ワンフロアが丸々自分らの部屋なので、3LDKでも一つ一つの部屋が広いのだ。

一つはフレイの部屋、一つはエメラの部屋。一つは書簡室になっている。
カードキーと指紋、声紋の称号をマンションの出入り口で行い、その後に自分らの部屋のドアで再びカードキーと指紋、声紋、網膜スキャンまで行うという厳重ぶりである。
この部屋のセキュリティはフレイがわざわざ取り付けたもので、それだけ彼の仕事が会社に影響がある証拠であった。
驚く遊戯にエメラとカオスは苦笑した。
最初、私も驚いたんだから…と呟くエメラにフレイは、静脈のも取り付けたかったと呟いた。

フレイがドアを開けたので、遊戯はお邪魔します。とエメラの後について部屋へと入って行く。
リビングに行くと、エメラらの帰りを待ちわびたと言いたげに彼女に飛びつく白いふさふさが遊戯の目に飛び込んできた。
何かと思えば、真っ白く黒い縞の入った猫。



「猫…?」


「正式には猫”科”だけどな。」


「!?」



フレイの言葉にこの白いのは猫ではなく、虎であることを遊戯は悟った。
くすぐったいよ…と頬を摺り寄せてくる小さな虎にエメラは抱き直して遊戯に向き直った。
彼女の腕にいるのは、確かに小さな虎である。彼女に喉を撫でられて嬉しそうにゴロゴロと鳴らしている。
フレイは自分の部屋に何かを取りに行ったので、エメラがお茶を入れるわ。と抱っこをしていた虎を床に降ろしてキッチンへと向かう。
降ろされた虎は彼女の後を着いていってしまった。
紅茶でいい?とキッチンから顔を出すエメラにあぁ。と遊戯は返事を返した。

エメラがお湯を沸かしている時に、遊戯はリビングの窓から外を見た。
窓の外はベランダになっており、そこには数個のプランターがある。それはエメラが育てている花や野菜である。
こんなに立派なマンションに住んでいるが、細々と家庭菜園をしている彼女が可愛らしく感じ、カードゲーム全世界チャンプだなんて思えない。と感じた。
遠くを見ると、童実野高校の校庭が見える。
突然早退してしまったので、明日にでも杏子らに謝らなくてはいけない、と遊戯は感じた。
しかし、その前に、もう一人の自分と呼んでくれる”遊戯”に謝らなくてはならないと感じ、遊戯は目を閉じた。



向かうは心の部屋。
部屋に入ってきた闇の遊戯を先程の表の遊戯が優しい表情で迎えた。
互いに会うことがあまり出来ないので、表の遊戯は闇の遊戯に会えて嬉しそうである。



「あ、もう一人の僕!」


「相棒…。」


「エメラちゃん、綺麗な女の子でしょ?」


「あぁ。」



あんな美人さんが世界の頂点だなんて、正直びっくりしたよー。でも、フランスの女の子って聞いたけど日本語ぺらぺらでびっくりした!たまにフランス語が混じるけどね。という表の遊戯に闇の遊戯は笑みを零した。
そういえば、どうかしたの?という表の遊戯に、闇の遊戯は学校を勝手に早退したことについて頭を下げた。
まさか、彼がそんなことをするとは思っていなかったようで、表の遊戯は慌てて彼に頭を上げるように言った。



「もう一人の僕、僕はそんなことで怒らないよ。」



僕だって、エメラちゃんのことを追っていたよ。追いかけたのが君だった。それだけだよ。と優しく言う表の遊戯に闇の遊戯は苦笑を浮かべた。
今日はみんなに励まされているな…と申し訳ない様な表情を浮かべる闇の遊戯に表の遊戯はそういう日もあるよ。と言ったのだった。




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