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04
奴が転校してきてから2週間、とは思えないくらいクラスに馴染んでいるのは天性の才能なんだろうか。今日も教室の真ん中で、男子の大きな輪の中で弁当を広げる橋本夏樹の溶け込みようは驚くべきものだ。



「みなみ!」

「なに、莉子ちゃん」

「橋本くんってかっこいいよね!しかも優しいしフレンドリーだしさー」

「…そう?」

「みなみの元幼馴染なんでしょ?紹介してよ!」

「声かけなよ、莉子ちゃん美人だから絶対あいつ喜ぶよ」



鳴り響く予鈴にそれぞれがやんわりと授業の準備を始める。莉子ちゃんと別れて自分の席に着く、そこにタイミング良く真崎くんと夏樹が揃って一緒に戻ってきた。



「瀬尾聞いて!こいつやきそばパン食うのめちゃくちゃ下手なの!」

「…そうなの?」

「しょうがねーだろ難しいんだから!」



そして2週間前と比べて、私も身の回りも劇的に変化している。あの真崎くんと、お互いに夏樹を通して話す機会ができたのだ。今みたいに、本当に楽しそうに細められた目で笑いかけられるとぎゅうっと胸が狭くなる。どうしよう、私変な顔してないかな。いつも通り返事できてるかな。どうしよう、どうしよう、私こんなにすきだったんだ。夏樹がやきそばパン食べるの下手で良かった!今だけは奴に感謝。



「…あ!」

「な、なに?」

「みなみ前髪切ったろ?」



ばっ、慌てて額を両手で押さえようとする、も、時すでに遅し。隣から伸びる手に素早く腕を掴まれてしまった。そして、みっじけー!なんてお腹を抱えて笑う姿にこのうえない怒りと恥ずかしさが込み上げる。このバカ、真崎くんのいる前で、ばかばかばか!





「お前笑いすぎ!瀬尾、全然変じゃねぇから大丈夫」

「真崎、慰めはよせってー」

「慰めじゃねぇよ」






「ほんとに似合ってると思ったんだよ」






だから心配すんな!そう続けられた大好きな声が、言葉が、頭の中で反響する。いつの間にか私の手を離した夏樹と真崎くんが次の授業について話し始めた中、私は顔が上げられない。こんな顔、夏樹に見せたら絶対からかわれるに決まってる。




本鈴が鳴った瞬間、夏樹が机に伏せったのを確認して天井を仰いだ。クーラーの風が頬に当たって気持ちいい。…私、こんなに単純だったんだ。








(前髪切って良かったかも、だなんて)
(ほんとに単純、ばかみたい)

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