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溺れてしまう(夜昼)※パロ

※パラレルです。別人ばっかりです。許せる方はどうぞ↓










体育の時間はサッカーで、元気よく走り回った。だって子供は風の子だ。走って遊んで笑わなければ損をする。最近はゲームだとか、部屋で遊べる機械が出来ていた。皆内に篭っている。だから僕は誇るべきだ。だって子供という従来の観念をそのまま体現してるんだから。(仮にそれが授業だとしても、だ。)そうだ、何も恥じることはないんだ!


「少しは反省しろ」
「いてっ!」


と、心の中で高らかに演説をしているところで小突かれた。明らかに不満の色が濃くて、思わずてへへ、と笑い方も窺うような情けない状態に陥る。わあ、なんて僕は気の毒なんだ。


「いいじゃない、きちんと授業こなしてきたんだから」
「よかったな、体育が6時間目で…っと」
「いっつ!」


消毒をし終え、擦りむいた膝小僧に力強く絆創膏が貼られてしまい思いっきり呻いた。加減が無くてこちとら涙目だ。痛い、と抗議の声をあげると傷がな、と涼しげにあしらわれる。うう、容赦ない。


「夜先生酷い!怪我人だよ、僕」
「怪我人ならその口は慎もうぜ」
「口は怪我してないので無理」


ちなみに僕は弁論に関しては誰にも引けを取らないらしい。いわゆる言い訳させたら天下一、なのだそうだ。…今までごまかしたことは無いはずだけど。


「その前に敬語を使わねぇのか…その口は」
「んー誰に対してでしょーか」
「…いい度胸だな、おい」


むっとした表情に変わった彼は(といっても、余り変化はないのだが)ある程度の時間を置いたあとに諦めたようで、その表情を崩した。ここら辺りが大人だなあ、なんて思う。でもきっと小さなときは親御さんの手をたいそう煩わせたに違いない――――勝手な推測だけど。
そんなことをつらつら思い浮かべて、ただ先生だけを見る。何も言わずにただ見つめる僕に困ったのか、照れたのか、彼は僕を呼ぶ。


「おい、リクオ」
「ん。なーに?」


名前で呼ばれたのが嬉しくて、つい顔が緩んだ。その瞬間彼は口を手で覆い、目を逸らしたのだが僕は気づかない。自身の考えだけにとらわれ、もう先生の顔も見ているはずなのに視えていなかった。

例えば、端正な顔立ちは誰に似たのだろうか、とか。目立つ長い長い髪を揺らして、同じくらい白い白い白衣を羽織るその姿は神々しく、いつもどこか一線を画していた。人間では、ない。
またおい、と声が聞こえて意識が浮上しかける。声の主はやはり先生だった。


「下校時刻だ―――…とっとと失礼な考えやめて、帰れ」
「…え、もうそんな時間なの」


帰れ、という言葉を聞き取って現実に舞い戻る。
確かSHRが終わってさっさと来たつもりだったのに、時間は瞬く間に過ぎ去っていったようだ。だが時計を見上げて見るとまだ最終の、締め出される時間ではなかった。しかもたった20分しか過ぎていない。驚き、そして騙されたことを知り、咎めるような視線を夜先生に送った。


「なんで帰らせようとするのさ!」


ただ憤慨して僕は言う。
僕がこの保健室に長居するのは常であり、彼も最初は呆れてしかめっつらを曝してはいたものだが、だんだん何も言わなくなっていた。それが嬉しくてついつい調子にのり、何かあれば夜先生のもとに訪れていた。
もしこの高校でどの先生が好きかと問われたら、やっぱり夜先生が一番だ。その人って養護教諭じゃないですか、と妙に落胆して黒先生は言っていたが、やはり突出しているのは彼なのである。もうどうしようもない。

だから今追い出すために嘘をつかれ、ただ単純に悲しかったのだ。


(うんざり、したのかな)


確かにしつこかったのかもしれない。そんな気持ちで見つめると何故か困ったように諭された。


「―――…いや、今日は帰ったほうがいい。危ないから、な」


何が、とは聞けなかった。そして見てしまった。その瞳の奥に未だ触れたことのない、怪しく激しい色が燃えているのを。

ぞくり、とする。

僕は瞬間的にはい、とらしくない返事をしてしまった。そして急いで持ってきていた鞄をひったくって、扉から逃げるように外に出た。




走る走る。夕闇に身体を紛れさせながら僕は走った。先生から逃げたいわけじゃない。むしろもっと居たかった。だが、あの眼からは離れろと本能が告げていたのだ。


(なんだったんだろう)


随分走ったあとに、駅までのあと少しの道のりは歩きに変えた。思い返し、また同時に動悸を鎮めさせながら。

身体が、震えている。それが驚きからなのか、怒りからなのか、はたまた興奮からなのかは、分かりはしない。



ただあの眼は―――――。あの眼は、紛れも無く雄の眼だったのだ。



何かが始まりそうで、けれど気付きたくも無くて、緩めていた歩調を加速させる。
鼓動は不思議な程に、高く早く鳴り響いていた。









****
サブタイトル「男は皆狼なのさ☆」(謝れ)

高校生昼若に保健医夜若が色々踏ん張りどころを見せて堪えるという奮闘記。←
ただ単に夜若に白衣を着させたら…という願望からだなんて言えない…!←←
ちなみに理科の先生と迷った。本当はリクオを中学生にしたかったんですが流石に……笑



続く…わけがない\^o^/



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