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貴方が欲しかった(牛鬼と若)






幼い頃から「妖怪の首領になるんだ。」と言うその子供が、眩しくもあり、光って見えた。


「…彼が就くなら、私は頼もしい限りです」
「そんなことを牛鬼に言われるんなら、こりゃ相当なもんじゃな!」


かっかっか、と外で遊んでいるリクオを見つめたまま総大将は笑った。二代目が亡くなってから少し影を落としていたその背中が、今は活力が戻ってきているように見えて、ああこの組も安泰だ、と思った。私は彼の組が好きだ。だから今日までついて来れたのだ。
リクオは今日も今日とて妖怪たちを罠に嵌まらせて遊んでいる。まだ何も知らない純粋な子供は、妖怪を恐れもしないでけらけらと笑っていた。



異変は突然だ。突発過ぎた。




「………リクオ様が?」


あの日の総会の出来事は脳裏に新しく、困惑していた時だった。書物を読んでいたとき、誰に聞いたかは知らなかったが組の者が噂しているのが聞こえたのだ。私は直ちに本部へ向かった。素直に嬉しかったのだ。喜びが体中を支配する。彼はやはりあのぬらりひょんの孫だったのだ。ただの「人間」の子供ではなかったのだ。



しかし純粋な幼子は頑なな態度のままであり、何も事態は進行していなかった。



私は絶望した。確かに彼は今だに我らには親しんでいるように思う。しかし、もう三代目を継がないなどと言うなら話は別だ。私は他の者と違ってリクオが一番相応しいと、今でも思っている。あの「畏れ」の代紋に似合う奴は、他の妖怪どもには決して見当たらない。ただ傷つけて、その傷を見て笑う者など受け継ぐべきではない。

私は考え抜いた。考え、苦しんだ。反対派に腰を据えもした。が、何の解決も見られなかった。

ああ夜のリクオよ、何故変化するのは気まぐれなのだ。

何故昼のお前は全て拒むのだ。

お前は全ての混沌の源だと言うのに…!



「そんなことは知らねぇよ」


不敵に笑うその姿。いつぞやの若き彼の姿が、その目の前で悠々と立っている青年と重なって見えた。
私は頭を振った。また所詮当て外れ。彼を「希望」にしてはいけない。二度と同じ過ちをしてはならないのだ。


「どうすればよかったのだ、どうすれば…っ!」


しかし自問自答しても答えが出ることは永遠にない。自分に問い掛けても納得し得るものなど浮かぶことはなかった。
苦しみ、今なお心を砕きながら苛まれ、地を這う私を尻目にリクオは、とうにあれから四年もの月日が経った姿の彼は、昼の彼からは想像できはしない冷たさをともなって、毅然としてそこに立っていた。

それはまるで一筋の光明と錯覚するような感覚を私に与え、


「なあ…牛鬼よ」


甘美な色で私を誘惑する。
彼は目に自信を携え私に、切り掛かった私に微笑むのだ。


「確かにお前のやったことは罪だ…だがな」


一拍置いた後に、彼は言うのだ、


「安心しな、俺もあいつも三代目になって…この組を変えてやるぜ」


と。
縋っていいのだろうか、もう一度。
あと一度だけ望んでもいいのだろうか。
希望を託していいのだろうか。


「牛鬼よ…それを見届けるのも悪かねぇだろ」


勝手な物言いは誰譲りなのかは明白だ。彼以外に、いったい誰があの座に就くことができるだろうか。

だから私は、答える代わりに、笑った。久々に夜明けが、見えていた。





****
牛鬼編のラスト辺りのところを勝手に捏造でw
二巻のはしゃいでる(?)牛鬼さんがいたコマから彼の好感度はさらに上がっちまいました。
好きだからこそ謀反をしてしまう、彼の気持ちがよく分かって辛いですよね…あの話は。


………アレ微妙にネタバレ?

いやいや別に触れてないから大丈夫……なはず……。


際どいネタですいませんorz



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あきゅろす。
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