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今、此処にある幸せ(牛リク?)





思えばここまで執着したのは久方ぶりなのかもしれない。


「あれ、牛鬼じゃないか」
「……若、お邪魔しております」
「ははは、ここはじーちゃんの家だし僕にそんなに畏まら無くても…」


相変わらず飄々としている、と思った。いや、謙虚というべきか。夜の彼がもし武の体面ならば、昼の彼は智と言ったところなのだろう。四分の一もあのぬらりひょんの血を受け継いでいるわりには、やはり昼の彼はどこか頼りなく見える。それはきっと仕方がないことなのだ。彼は、まだ幼い。


「どう、最近は」
「…静かに住んでますよ。もともと騒々しいのは二人だけだったもので」
「ははは…彼らに会ってきたの?」
「ええ、先程」


俯くと自然に笑みが零れた。牛頭丸も馬頭丸も元気そうで何よりだった。
本当に、二人には感謝していた。あの己でも突発的だと思った計画に最後までついて来てくれたことを。二人の姿が山の中から消えてしまったことは悲しくも寂しくもあるが、それだけ自身の罪が重いというものだろう。ああ、しかしまたこうして収まったのは夢ではないのだろうか。
夢ならどうか、醒めないでほしい。


会話が続か無くなり、縁側にお互い座ったまま、まるでひなたぼっこをしているように穏やかなときが流れていた。いやまるでもなにも、傍からみたらしているように見えるのだろうか。
だがこのまま時が過ぎ去るのは別に嫌いではなかった。寧ろ、性に合っている気がする。


しかし意外にもその沈黙を破ったのは若だった。


「その…ごめんなさい。二人を本家に留まらせてしまって」
「…貴方は甘いですな」


何を言い出すかと思えば、いきなり懺悔とも取れる言葉に面喰らう。
そして思った。あのぬらりひょんと比べるとやはりそこが劣るのだろう、と。

たった一つ、冷徹になれるか否かという、一点において。

夜のリクオも敵には容赦はないがそれでも、どこか優しい。今の昼の彼など言うまでもない―――――ただある種の非情さは持ち合わせているようだが。しかしそうは言うもののもやはり、わざわざ人質という言葉を避けて喋る辺りがまだまだ甘いのだ。彼の祖父なら自業自得だな、と言って微笑をちらつかせながら切り捨ててしまうだろう。想像できて、震えてしまった。若かりし総大将は今でも私の中で絶大な地位を占めているようだ。
そんな私に気づいたのか、少々拗ねたリクオがこちらに視線を合わせた。


「甘くていいよ…それが僕だし」
「ほほう」
「だからさあ、おじーちゃんと比べないで欲しいんだ」


真剣な、その視線に私はまたもや身震いしてしまった。そして、口許が僅かながらも緩んでしまう。
なんだよ、と更に頬を膨らました若を見ても特に焦る気持ちも起こらない。寧ろ、可愛いと思うのは罪なことなのだろうか。


「いえ、今のリクオ様と彼を比べる気はございませんよ」


しかし可愛いとは言え無かった。それでは彼の気分を極度に損ねるだけだ。だから私はそれに、と付け加えた。


「貴方は貴方のままでいいと思いますぞ」
「な、なに言い出すの!」


滅多に褒め言葉の類を口にしないせいか、若の反応が初々しい。照れているのが分かって、微笑ましく思う。


「貴方の優しさで救われるものもいるのですから…―――」


その言葉はさすがに顔を見て言うことは出来なかった。我ながら恥ずかしく、秘めたる想いをさらけ出しているようで正直、むず痒い。小声だったのも致し方ないと思う。


「…今日の牛鬼、変」
「私はいつも通りですよ」
「…認めなよ」
「難しいですね、それは」


笑うとカンに障ったのか腕に何回か圧力が加わって、空気が動く。痛くも痒くもなかったが、心だけは勝手に温まっていった。









****
なんか牛リクというよりはおじいちゃんな牛鬼と戯れる孫の図になってる気が…笑

二代目ってやっぱりお父さんだと思うので、たまに甘えん坊にリクオはなりそうです。←偏見

幸せな感じが感じれたら嬉しい限りです。



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