理由は特にない
テンテンは寝相が悪い。
悪いと言ってもベッドから落ちたりはしないし、蹴りをくらうなどということも無い。ただ少し寝返りが多かったり、その動作が大きかったりするだけ。
初めのうちは、気付いたら端に転がっている彼女を引き寄せて抱き込んでいたが、いつからだったかもう最初から抱き締めて寝るようになった。
自分にとってはそれが当たり前になり始めた頃、ひょんな事からそれに気付いたテンテンは問いを投げかけてきた。
「ネジってクッションとか抱き枕が無いと寝れないタイプ?」
そうきたか。
自分の寝相についてテンテンは自覚が無いらしかった。その問いに俺は素直にお前がすぐ転がってくからだと返してやった。だが彼女が「はいそうですか」とすぐに認めるはずもない。
「そっ、そんなこと言っちゃって。ぎゅーってして寝るのホントは好きなんでしょ」
もう眠かったので一瞬だけ考えて、もうそれでいいと返した。適当な返事に満足しないテンテンは抗議の声をあげたが、いつものように腕の中に閉じ込めてしま うとアッサリ諦めてくれた。実際、正解でも間違いでもある。抱き枕代わりではないが彼女を抱き込んで寝るのは嫌いではない。むしろ彼女がいない日はなんだ か物足りないくらいだったから。理由はもうなんでもいいのだ。
fin
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