名乗る
あの夜。火を鎮火させた後、ネジは刀を山の奥深くにある社へ持って行った。刀を掴む時に見えたのは、破られた封印のための札。何か千切れた感覚がしたのは 恐らくこれだろう。封が無理やり破られたせいで刀も憑いている霊体も不安定。ただ森にいるよりは、神聖な力に満ちた社の方が落ち着くのではと考えたのだ。

その予想通り、女はハッキリ姿を現した。だが途端に慌てふためき、ここはどこだあんたは誰だ刀はどこだと騒がしく質問攻め。


「お前が居た寺は燃えてもう無い。刀はそれじゃないのか」

「違う!もう一本あるのよ、二本なかったの!?」

「無かった」


ネジが正直に答えると女は酷く落胆した。一体何なのか。恐らくこの女は付喪神。そうなっている事実からして、その刀に執着があるのは理解できるが、一本だけでは駄目なのだろうか。二本とも失うよりマシではないのか?
これまで何かに執着するという経験が無いネジには、執着心そのものが存在である付喪神の心理はよく分からない。



「あんた、名前は」
「ネジ」
「そう。私はテンテン」

「付喪神だろ、お前」
「そうだったと思うわ」


助けてくれてありがとう。
多くを聞いてこないネジをとりあえず敵ではないと判断したのか、テンテンと名乗る女は礼の言葉と共に頭を下げた。
そして話を始めた。



「私が作ったのよ、この刀」
「お前が?」

「だから私、元々は人間なの」


fin


続きは未定。

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あきゅろす。
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