一粒の欠片
6
「榎緋!こっちこっち!!」
本当に大きな声でありがとう。
聞こえてくる方角的に入り口近くだと思うんだけど…、なにぶんこの人の多さだ。ちょっとやそっとでは分からない。
…それとこの前髪。鬱陶しくてしょうがない。いっそ上げてしまおうか…
いやいや、それはマズイ…うん、いろいろと…
「右斜め前!」
俺の葛藤に気づいてくれたのか、位置を知らせてくれた。
マジ助かる
声的にあいつだと思うし、こんな俺に声を掛けるのも1人しか思いつかねぇから分かってるんだけど…赤い王冠はど〜こだ?
じーっと右前方を見つめると、まさしく赤い王冠がピョコピョコしてた。
入り口近くのあまり人目につきにくい場所。俺の一番のお気に入り席だ。
窓際のくせして日陰だから暑くならないし、その上心地よい風がいい感じに吹いてくれるというbestplace!!
俺にとって、至れり尽くせりの豪華席
他の連中にしたら、「やだぁ〜あんな暗いところ〜」らしいが
※男子の発言です
人がいるから駄目だと思ってたんだけど、知り合いだったなんてなぁ…
無駄な体力使った・・・。
人の波に若干逆らいつつ、どうにか目的場所にたどり着く。
「お疲れさんw」
ふらふらと疲れた俺の手を取り先程まで陣取っていたのであろう6人席の一つに座らせてくれた。
上機嫌な笑顔を浮かべたコイツは王響 夕也[オウキョウ セキヤ]
俺のルームメイトでこの学園で友人と呼べる希少な1人。
黒髪に金と赤のメッシュが入った頭をしていて、不思議とそれは遠くから見ると何故かしら王冠の形のように見えるんだ。
本人は別に狙って染めたわけではなくって、なぜかそうなったらしい。しかも赤と金を入れる時は毎回・・・・
あれか?
名前に“王”って入ってるからか?
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