一粒の欠片
3
『また、いる〜!』
『お二人が穢れる!消えろよオタクが!!』
うんうん、聞えよがしにありがとう。
まったく、ありがたくないけどさ
校舎を抜けて食堂への道を歩いていくと自然に耳に入ってくる声。
その大方が俺への侮蔑。
人が多くなるほど、比例していく声、声、声。
それも、両隣りにいる二人が多大な人気をお持ちになる御方達だから。
まぁ、当人たちにとってどうでもいい話(むしろ迷惑この上ない)なんだろうけど。
現に、聞こえてくる言葉に葵は眉を顰めているし幸汰は目つきが厳しくなっている。
毎日繰り返されているから、当初よりはマシになったけど。
初めの頃は、葵が殴りかかりそうになってマジでびびったもんだ。幸汰に至っては、視線だけ殺っちゃいそうだったけど…。
うん、まぁカッコイイからなぁ
ノーマルな俺もたまに見惚れる時なんかがあるぐらい
だから、カッコイイ俺の自慢の親友にそんな似合わない顔はしてほしくないわけで…
「葵、幸汰。俺いつも言ってますよね?気にしてないからそんな顔しないでくださいって、きちんと覚えてます?」
周りに聞こえたら、何様?って言われるのが目に見えてるから囁くように2人に告げる。
「覚えてる」
「俺も覚えてるけどさ…むかつくのはむかつくんだ」
むむむ・・・と益々眉を顰める葵
「俺は慣れてしまいましたけどね。」
「榎緋はおかしい」
あれれ、幸汰におかしい人宣言されたちゃったよ
でも、本当に慣れたしな。
それに、いちいち反応してたら身が持たねぇし
「俺は何を言われても、二人がいてくれたら大丈夫なんですって」
これも、毎回言っているセリフ
だって、本当だし
「榎緋はそう言ってくれるけどさぁ」
「はい、今日はこれでお終い」
根暗、オタク、ガリ勉。何言われようが俺は平気。
葵と幸汰がいてくれるし。
まだ見えない食堂に向かってさくさく歩くぞ!
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