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一粒の欠片



「緒輝?なにしてんだそんなところで?しかも座り込んでさ」


階段の上から1人の青年が尋ねる


「人とぶつかったんですよ」


「はぁ?なんだそれ」


緒輝と呼ばれた彼は立ち上がり、制服についた汚れを払う


「頭、取れてんじゃん」


長い銀の髪が肩に流れているのをみて青年が少しばかり驚いている

灰羅は窓側まで行くと、紅い玉がついた簪を拾う。そして、取り出したハンカチで壊れ物でも扱うかの如く丁寧に汚れを拭き取ってゆく。


「怒ってないのか?」


あまりに何事もなく動く灰羅に青年は問いかけた


「思いのほか激しかったので、しかたありません」


「今までの緒輝なら一発入れてたと思うけど?」


なのに、今日の灰羅は怒ってさえいない。

緒輝は綺麗になり淡く赤に光る簪を見つめた


「アイツに貰ったやつだろ?」

「そうですね」








――
『コレやるよwお前似合いそうだし』

『かんざし…女物ですよね』

『気にすんなってwあ!高かったんだから無くすなよ!』

『無くしませんよ。ありがとうございます』
――








黙り込んでしまった緒輝にこれ以上この問答をしても無駄だと思ったのか青年は話を変えた


「ぶつかった相手は?」

「行きましたよ。多分教務室へ」


緒輝は簪から視線を外すと、銀糸の髪を束ね上げた。馴れているのか、その姿に男という違和感はない

ふと、すぐ下の渡り廊下を見ると先程の少年が走り抜けていくところだった


「はぁ?お前放置で?…風紀委員長っていうお方が無様だな」


はっと鼻で笑う青年は灰羅のいる階をすぎ、まだ階段を降りていく


「どうも…調子を狂わせられるみたいです」


その言葉に振り返った青年は、優しい笑みを浮かべている灰羅に今日何度目かの驚きをみせた


「…誰だよ、そんなヤツ」

「…またの機会に紹介します。さ、行きますよ」




一瞬で表情を変えると灰羅も彼を追って階段を降りていった









―つかの間の時間
 砕けたガラスは
  キラキラと
 確かに何かを
 映し出したんだ―




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