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GIRLs@研究所
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………翌日………


久々に、古都と洗面所でいっしょになった。
古都は寝坊ばっかだから、新学期始まってからあまり一緒に登校したことがなかった。

朝ご飯は作り置きして、私は先に出発していたから。

「あぁ〜暑くなってきたね!!」

顔を洗い終わって目をつむったまま、古都は手探りでタオルを探している。
私は優しいので歯磨きを中断してタオルを渡してやった。

「水で顔洗った後に言うセリフか、それ」

「………朝起きて思ったの、今思ったんじゃないのっ!!」

「はいはい」

私たちは朝から小さな喧嘩を繰り広げつつ、着替えてリビングに降り立った。

琉古に作ってもらった朝食を食べて、まだ時間にゆとりがあるから、三人(本当は二人と一体)でだらだらとしている。

「こないだまで肌寒かったのに、最近あったかくなってきたよねー。」

「そうですね、ぽかぽかですね〜」


………。




「え、ちょっと待ってよ。琉古って暑さとか分かるの?;;」
スカートとエプロンをパタパタしながら、琉古が言うので、私は聞いた。

だって……機械なのに!?;;

「Σあ〜っ!!私を馬鹿にしてます!!ヒドいです〜っ!!」

琉古はジタバタと動めいた。

「別に馬鹿にはしてないってば…。GIRLsって、凄いなぁ〜って思っただ「そうなんですよ〜伽衣様!!GIRLsは凄いんですっ!!人間により近付かせるために、キリカン博士が作り上げた、汗と涙の結晶なんですっ」

ぐわっ!!と顔を近づけたと思うと、琉古はエプロンを外し、壁に掛けた。まぁ、なんとすばやい。


ていうかどうでもいいけど、なんで琉古はこんなに自慢げに話してるの…?

GIRLsの誇りって奴かしら。


「ねぇるぅちゃん、キリカン博士ってだーれ?」

「そう言えばまだ聞いた事ないけど…」

琉古は私の横のイスに座り、上機嫌に話し始める。

「キリカン博士は、GIRLs研究所の創立者であり、GIRLsを生みだした、すっごい人なんですっ♪」

「ふーん…なんか忙しそうな人だね。」

「そうですよねぇ…。普段は、博士専用の研究室に閉じこもりっきり、って聞きましたぁ〜」

「まぁ…あんたを作ったくらいなんだから、まともな人じゃなさそうだけどね」

「え〜っ!!か、伽衣様ヒドいですよぉ、それはどういう意味ですか〜!!(泣)」

琉古はポコポコと私の肩を叩く。
本気出されたら骨が砕けるんだろうな…怖い怖い。

「伽衣、そろそろ時間だよっ。学校行こう。」

「はいはーい…」

私たちは鞄を持って、玄関に行く。

「じゃあね、琉古。いってきま−す」
「るぅちゃんいってくるね〜」

「はぁい!!いってらっしゃいませ〜♪」

玄関の外までついて来て、ブンブンと手を振る琉古に、私たちは振り向き、手を振りかえした。


★★★★★★

あ、桜ちゃん

はい…なんでしょうか?

私のこと、今度『水城様』…っなぁ〜んて呼んだら、罰金だからねー。

えっ…で、ですが…。

私のことは、普通に伽衣でいいからさ!!

あの、ですが…………。…は、はい……。では…『伽衣さん』…と呼ばせていただきますね…?





昨日の帰り際、私は伽衣様にそう言われました。

私は登校中、そうして昨日の事を思い出しながら歩いていましたから、いつの間にか門を越え、学園敷地内にいるという事に気がつきませんでした…。


しかも……私が顔を上げますと、そこは私の、大好きな場所でした…。


図書室の裏…。
そこにはもう散り終わろうとしている一本の桜の木が。


私の足は、知らないうちに此処へと向いていたようです…。

私は桜の木に近付き、幹に手を当て、静かに体を預けました…。


此処は伽衣さんと始めて出会った場所……私が紺柳学園への入学を決めた、きっかけ。


伽衣さんはあの日、とても寂しそうに桜を見つめてらっしゃいました。

伽衣さんは決して一人ではないのだと…励まして差し上げたくて…。

夢の中でなら、いつも思ったことが言えるのに……現実は……

キーンコーンカーンコーン


「た、大変っ!!」
予鈴です!!

思い出に浸り過ぎて、時間を忘れてしまいました…!!
早くしなければ……、遅刻になってしまいます…!!


私は急いで靴箱へと向かいました…。



伽衣さん…。あなたは、私があなたをとても慕っているとお知りになったら……どう思われますか…?

…いいえ。たとえこの気持ちを、誰かに批判されたとしても、私が伽衣様をお慕いする気持ちは……微塵も消えません…。


あの時……私が感じた不思議な気持ちは、真実だと思いますから…。



★★★★★★


………昼休み………

「何見てたのっ?」
昨日せっかく図書室に寄ったのに、返すのを忘れた本を、もう一度返しにきた私と古都と李来。
私ってば意外とおっちょこちょいなのね。ははは。

「あそこ。」

私たちが今いるのは、第一図書室。
窓から、図書室裏の桜の木の前で、ボーッとしている桜ちゃんが見えた。

私は桜ちゃんのいる方向を指差す。

「あの娘知り合いなの?」
「2年の総委員長の、神沢桜ちゃん。」
「ふーん…。真面目そうな子だね」

私は桜ちゃんが昨日言っていた、お祖母さんが描いたと言う絵本を持ってるのに気付いた…。

やっぱりあの絵本は、とても大切な物なんだ…。



「委員と言えば、今日の放課後も委員長会があるみたいだよ。」

「ひひひひひ、光くんっ!!」

光が私たちの背後からそっと現れた。

「古都静かに!!!ここ図書室!!」
私は小声で古都を叱る。

古都は「ごめん…」と言って縮こまった。

「あはは、びっくりさせちゃってごめんね」

あははじゃねーよ。

古都はブンブン首を振っている。

飛ぶぞ?頭。

「というわけだから伽衣、ちゃんと伝えたからね?」

「えー本当に今日もあるのー?」
私は怪訝そうに聞く。
昨日もあったのに今日もなんて面倒すぎる…。

「あるよ、会長直々のお言葉だからね。」

にこやかにサラッと言う光。
この暇人め……。

「ハァ……まぁ行くしかないよね……」

ちなみにそういう光は男子のクラス委員だけどね。
そんで古都の好きなヤツ。
どこがいいのかは謎。


「もうそろそろ予鈴が鳴るぞ。教室に戻ろう。」
「そうだねー」

私はもう一度桜ちゃんを見てから、古都と李来の後に続いた。

桜ちゃんまだいるけど授業間に合うのかな…?

そういえばあの桜の木……。
私が初めて見つけたのは、入学式だったっけ…。

あのとき小学生の女の子が迷い込んで来て……てあれ?あの子そういえば……

「伽衣遅いよぉーはやくー」

「あぁ、はいはい。」


私はあいていた距離分走った。

「伽衣、廊下は走らない。」
「……はいはい」




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