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綺麗な鳥(エース)
今日の船の見張り番は一番隊だ。
こう言う時、隊長のマルコが一番高い見張り台にいる事を知っているエースは徳利酒を片手に台をよじ登った。


「よっ、と。マルコ!」

「…何だ、エースか」


マルコは音が聞こえるや否や緊急の連絡かと振り返ったようであったが、目当ての人物を見付けられるや否や、犬みたいに駆け寄るエース。


「へへ、良い酒持って来たんだ」

「見張り番に酒を進める隊長があるかよい」

「どうせこれ全部飲んだってマルコは酔わねーんだろ?」


差し出した徳利酒にけちをつけられ、唇尖らせて文句を言ってしまう。
一度くらい酔った姿を見てみたいのに、宴でも自分を含めた誰かと飲み比べをしていても勝つのは大抵マルコだ。


「あ〜…まァな」


建前上断ったが、確かにと納得すればマルコは徳利酒を貰う。
コルクを開けては直接、口を付けて一口二口酒を流し込み、そしてまた海へとその視線を流した。
満月だ。
眩い月明かりがキラキラと自分とそしてマルコを照らす。


「マルコってさ…」

「…ん?」

「……」

「ちょっ…!言い掛けて止めるなよい」


海を見ていたマルコの顔が、エースに戻される。


「い、言わねェ…!」

「はァ…!?」


こんなおっさんに“何か綺麗だよな”何て言い掛けた事をエース自身も認めたくなくて自分の口を思わず両手で塞ぐ。


「言・え・よ・い!」

「ん〜!」


マルコもマルコで切られた台詞が気になるのか、その腕を口から引き剥がそうと試みながら続きの言葉を強要する。
その綺麗なマルコに恋をしているのだとエースが気付いたのは、随分と後になってからであった。

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