5 a gale warning!!
今日もあいたいなぁ、って思ってたのも本当だけど、会えて、も、どうしたらいいのやら。
act.5 a gale warning!!
授業を進める北条先生の声は一応聞こえるけど、いやほんと、それどころじゃ、無い。
伊達君は今も普通に私の隣の席に座ってて、授業だって普通に始まってて、クラスのみんなだって一瞬騒いでたけど今は静かなのに(驚いて何も言えないだけかもしれないけど)、私の心臓だけは、一人でバカみたいに騒ぎ続けている。早鐘のような、ってこういう状態の事をいうんだなぁ、と数学の時間なのに国語的な事を思った。
伊達君の座っている左側の方が気になって、でも見たり、とかそんなのは何かは出来なくても(だ、だってこの状態で伊達君とか見たりしたら、ヤバイ、と思うんだ!まじで)、体の左半分がちりちりちりちり熱くなってる気がした。
うわ、ほんと、どうしよう。もう今日は会えないんだろうなーって一度諦めてた分、今隣の席に伊達君が座ってるなんてことは、本当に、おおき、すぎる。
私はこっそり両手を組み合わせて、いるかわかんないけどとりあえず神様にありがとうございますほんと感謝します!と心の中で叫んだ。
てかこの状況を作り出してくれた全てにありがとうって感じだよもううわぁぁああ!
「雪嶋」
まだ異常な速度で動き続けている心臓に手を当てて深呼吸をしていたら、呼ばれた。
誰かの声かは、すぐ分からなかった。
そんなに大きくないけど、よく響く、少し掠れた低い声。
ちゃんと聞いたのは昨日が初めてだけど、聞くだけで本当に死んでしまいそうなほどドキドキしてしまう声。
北条先生じゃないし、かすがじゃないし、前田君でもないし、前の席の徳川君でもないし、右隣の長曽我部君(爆睡中)でもない。……これ、は。
伊達君の、声だ。
「おい、雪嶋」
私がなんというか、もうわーってなって固まっていたら、もう一度呼びかけられた。さっきより少し大きい。
怒らしてはマズイと思って慌てて伊達君の方を見て、「は、っはい!?」と返事したら、伊達君が一瞬びっくりした顔して、それからちょっとだけ口の端を持ち上げて笑った。
う、わ、やっぱりこの人、かっこいい。
「そんな驚かなくてもいいだろ」
「あ、うわ、ご、ごめんなさい」
「…なあ、雪嶋、教科書持ってるよな?」
「え?うん、いちおー持ってるけど」
「忘れたから、見せてくれねぇか?」
「…うん?」
私がそのままの姿勢(椅子に垂直に腰掛けたまま伊達君の美人さにドッキドッキしてほんのりにやけた状態)(わ、なんか冷静に整理してみたらキモイな私!!)で静止していたら、私はまだいいとも言っていないのに伊達君が席をくっつけてきた。がたんがたんって机と椅子がたてる音と一緒に。
その瞬間クラスのみんなはもとより北条先生までもが緊張して息を呑んでいますよ!みたいな空気が固まっている私の方にも伝わってきた。
伊達君は私の机に自分の机をくっつけた後、また普通に腰掛けて、私の机の上に適当に放られていた教科書を勝手にとって142ページを開いていた。
ぱらり、と乾いた音がする。
私よりずっと身長が高いのに、私とそんなに変わらない位置にある伊達君の横顔(こ、これはきっと足が長いということだよね?私座高高いから座ったら同じくらいだ…)を呆然と眺めていたら、伊達君が教科書を見たまま。
「授業、うけねぇのか?」
とおっしゃった。ギ、ギャー!!!(見てたのばれてるー!!)
「すいません受けますごめんなさい数学大好きですホント」
あっれー右側は眼帯あるから見えないんじゃねーの!?とか思いながらも必死で弁解(?)しながら慌てて超光速で黒板の方を向いたら、さっきよりもっと近くなった隣の席で、伊達君がクッ、っていう、笑いを噛み殺したような声で笑った。
え、ここ、笑う、とこなのか?(なぞだ)
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