4 the eye canter of a typhoon
(See you tomorrow)
だって、そんな風に言われたら期待するじゃん、明日も会えるのかな、って。
朝教室に入る時から実はちょっとドキドキしてた。
朝のSHRが始まった時も、一時間目が始まった時も、んで2時間目からはちょっと無理かな、って思い始めて、3時間目(さっき)は諦めて窓の外ばっかり見てた。
……そして今、ちょっと期待していた自分に、後悔。
…やっぱり、来る訳ない、よな。
うん、わかってたよ。私はバカだけど、それはちゃんと予想できてた…はずだ。
もともと伊達君はほとんど授業になんて顔出さない人だし(のくせに成績は常に学年で5番以内らしい)(ありえねえ)、英語だったけどまた明日って言われたからって、教室に来るはずないって事くらい。
でもやっぱり、心のどっかで、いや結構本気で、もしかしたら、なんて期待とかしちゃってた私は、本当にばかな子だなぁ、って思う。
最初から期待とかしてなかったら、きっと今日ものんびり楽しく過ごせたのに。
好きな人が出来ると、ちゃんと楽しいはずの毎日が、ちょっとした事で寂しくなったり辛くなったりするからイヤだ。…でもその分、ちょっとした事で嬉しくなったり幸せになったりも出来るから、やめたいなぁとかもう絶対しない!って(本気では)思えないんだけど、ね。
はああ、って本日何度目かわからない溜息を吐いて、手元にあったオレンジジュースを啜ってたら、ズズズーっていうあんまりお上品じゃない音が響いた。
「織、売店に行かなくていいのか?お前の好物のオムライス弁当、売り切れるぞ」
「あー……今日はもういいや。もうすぐ4時間目始まるし」
「は、じゃあお前昼は?食べないのか?」
「うん、食欲無いし。いらない」
「……ほう?」
「…なに?かすが」
「織!そりゃあもしや、恋の病ってやつかい!?」
「………げふぇふ」
意外そうな表情でかすがが目を瞬いた後。
いきなり横から黄色い乱入者が現れた。
楽しそうに笑いながら言われたその言葉に、なんか、地味にジュースを噴いてしまった。
「ななな、なんば言いよっとね前田君!つかなんで話聞きよっとね前田君!!」
「いや、今日織の様子おかしーなーって思ってたら、なんか行動が恋する乙女そのまんまでさ」
つい乱入しちまった!
そう言ってからからと笑う同じクラスの前田慶次君。制服の下の黄色いTシャツがなんだか眩しいぜ前田君。
違いますから早く席に着けー!!って怒鳴って半ば無理矢理につかせた。
かすがは前田君の乱入に、少し、いやだいぶ鬱陶しそうに顔を顰めて睨みつけてたけど、否定はしなかったから、同意見だったらしい。
かすがも前田君もこういうのに鋭いので困る。そこはかとなく。
かすがは国語の上杉先生に恋してる乙女だし、前田君は『色恋大好き慶ちゃん』という看板持ちだ。その名は伊達じゃないな…。あああ伊達って考えてまた伊達君思い出した(ため息)。
普段だったら授業開始のチャイムが鳴る前に席になんて絶対ついたりしないけど、今日はなんていうか、座ってたい。って思った。
隣を見れば、空いたままの伊達君の席。
窓の外の景色はやっぱり綺麗で、空だって青いし雲だって面白い形だったのだけど、何だか伊達君の席ばかり気になってしまってあまり集中して眺められなかった。
…私ついに窓の外を眺める事でさえも集中できなくなってるんだ。やばい、なぁ。
心なしかいつもより熱い気がするほっぺたを両手で包んだら、のどの奥からぅうあ、っていう変な声がでた。
次の授業、数学かー。苦手なんだけどな…なんて思いながら、のろのろと机の中から教科書を取り出していたら、突然ドアの方で女子の悲鳴…っていうかやたらと黄色い声と、男子の息を呑むような声と、早めに教室に来ていた数学の北条先生のちょっとびびったような声(う、うぉう!?みたいな感じの)がして、それからすぐに教室が静まり返った。
…何だ?この空気。
私が伊達君の席側に向けていた視線を教室に巡らせようと振り返ったら。
すぐそこに、昨日私にまた明日とか言って恋に落ちさせた張本人、伊達君がいらっしゃった。(ど、どうして彼はいつも振り返るとそこにいるのだろう…!!?)
「…ぅおっ、おはよ、う?伊達君」
「Hey雪嶋、Good morning」
半分裏返った声で挨拶したら、伊達君も流暢な英語で普通に(英語は普通に入るのだろうか)(まあいいか、伊達君だもの)返してくれてそれから彼は普通に席に着いた。
しかし教室の空気は、明らかに普通じゃない。
キーンコーンカーンコーンっていつも通りに呑気な音で始まりを告げるチャイムが、静かなままの教室に響いた。
ど、どうなるんだこの状況!?
(私的にはうれしい、けどさ!!)
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