[携帯モード] [URL送信]
銀時と酔い潰れた話




「あ゛ーー」


頭がぐわんぐわんする。
そういえば昨日……あれ?どこで飲んだんだっけ?


えーと、うーんと…………


はっ……やべ、また寝てた……。


そうそう、昨日は零くんとばったり会って、あいつの馴染みの店に連れて行ってもらって小鉢とか酒とか色々サービスしてもらったんだったな。
そうだ、そうだ。
そうだった。
思い出してよかった。
最近飲んで記憶をなくすことが多いから、自分がどこで何をしてたか不安でしょうがねえっ……て、ボケたジジイかよ俺ァ。


「かぐらぁー……水ー……」


あいつまだ起きてねーのか?
水ーーおーーい、水持ってきてくれーー


「ぱっつぁーん、さだはるぅー」


誰でもいいから銀さんに水持ってきてーー


「あれ……ここどこだ……?」


少し身体を起こして部屋中を見渡してみれば、ここが万事屋の寝室でないことに気がついた。
家具といえる物は机しかなく、他には山積みにされた紙の山があるだけ。

うん、明らかに俺の家じゃないな。

俺ってば、一体誰の部屋でのんきにぐーすか寝てたわけ?
……なにここ?ラブホ?どこ?


「んぅ……」
「!?」


な、なに……
なになになに!?
今布団の中から声がしなかったか……!?
ん?
というか、よく見れば俺の隣、やけにこんもりと布団が盛り上がってるような。


「あ」


待て。
オイ、なんだよこれ。
枕元に散らかりまくってるティッシュってこれ……え……?
しかもアレって俺のパンツ?
え?


「か……神様……」


ど、どうか横に寝てるのが顔見知りじゃありませんように。

いや、つーーかよ、まだ俺がナニをしたかどうか決まったわけじゃない。
あのティッシュの山も、突然花粉症かなんかが来たんだろ。
はいはい、俺と一緒にマヌケ面して寝てたのはどこのどいつですかー?


「失礼しまぁす……」


布団をゆっくりめくってみると、目ン玉が飛びでるかと思うくらいびっくりした。
というかむしろ目ン玉落ちてくれって感じだった。

この際隣に寝てるのが見ず知らずのクソババアでもクソビッチでも最悪顔見知りだったとしても、性病持ってなきゃ責任くらいとってやるという気持ちだったのだが、これは……あの……。


「うっ……さむ……」


真選組鬼の副長の愛犬……じゃなかった、副長補佐の北村零くんじゃねええかあああああああッッ!!!??
素っ裸で縮こまって寝てる零くんにびっくりしてしまい、また元の形に布団を戻した。

まずい、まずいって……俺も零くんも裸。
枕元に転がっている大量のティッシュが嫌でも線で繋がる。


冷静に考えろ銀時。
べろんべろんに酔っ払ってるからと言って、零くんに手を出すか?
相手はあのメンドクセー副長の相方だよ?
アッハッハッないないない!
さすがにないわ!
いくらなんでも酔った勢いで零くんとベッドインなんて……



1ミリくらいなら可能性あるかもなあァーーーッ!!!!



会うたびにセクハラしてるし、黙ってりゃ可愛い顔してるし、抱けるか抱けないかで言ったら抱ける。
抱ける……?え……?抱いたの?本当に?俺が?零くんを?


「も、もう一回……失礼しま……」
「……銀さん……」


布団をめくったら、ただでさえでかい目を見開いて零くんが固まってた。
そ、そっか……君も気づいたわけか……。


「オハヨーゴザイマス……あ、あの……坂田です……」
「オハヨウゴザイマス……えっと……北村です……」


知ってるよオオオォオーー!
オメーが北村だってことも俺が坂田だってこともお互い大分前から知ってるよおおォオーッ!!
誰か助けて、300円あげるから誰か助けてお願い助けて。
この状況を切り抜けるアイディアを……誰か、誰かアアァーッ!!


「……ぎ、銀さんがなんで俺の部屋に……」
「え!?お前の部屋!?」
「しかもなんで……裸……?」
「だ、だよね……なんでだろうね……」
「……え゛」


零くんがカピカピになってるティッシュの山に気がついた。
横顔しか見えない零くんの表情は髪に隠れてよく見えないが、耳がめちゃくちゃ赤くなっている。

慌てるな零くん、まだそうと決まったわけじゃない。


「……これって……」
「ば、ばか!んなワケねーだろ零ちゃ〜ん!お前ってばチェリーの癖に妙なとこだけピンとくるなよ〜!俺ひでえ鼻炎でさあ!夜中にくしゃみと鼻水が止まらなくなって、それで」
「んッ!?」
「どした?」
「…………」


やたらと尻を気にする零くんが、青ざめた顔で俺を見る。

嘘……?え?


「俺……酔って尻からカルピス飲んだのかな……」


自分の尻を触った零くんの指先に、白い液体がねっとりとついていた。
よく見れば、零くんが寝ていた場所に怪しいシミがたくさんついている。

俺と零くんの顔はみるみる引きつっていって、全身を震わせていた。


「零くんんん!!許してくれ!!頼む!!この通りだ、すまねえ、俺ァ!!!お、ッ、うおおおおッ!!」
「銀さん!!俺、なにも思い出せないし、銀さんとナニかあったと思ってないから土下座はやめろよ!!カルピスの原液を尻から飲んだということにしよう!!な!?」
「くっ……でもよ、零くん……」
「う、うん?」
「俺の金玉が……やけに軽いんだ。いつもパンパンなのに……」
「えっ」
「……それに、零くんさっきから腰をかばってない……?それってさ……」
「そ、そんな……!ちが……!これは俺がもともと腰痛もちで……」
「……ごめんな零くん……」
「う……」


どうせエッチしたなら何か覚えておきたかった……じゃなくって、こんなに若くてマヨラー侍一筋に生きてる公務員の男の子を、もうすぐ三十路のオッサンが犯しまくったって……こんなことバレたらやべーぞ……。

あー……俯いた零くんになんて詫びたらいいかわからない。
まさか童貞より先に処女を喪失することになるなんて、思ってもみなかっただろうな……。


「俺こそ……ごめんな銀さん……。もっと俺の尻の締りがよければ、銀さんの侵入を阻止できたのに……」
「いや、いいんだ……悪いのはどんなバリアも突破する俺の聖剣エクスカリバーのせいなんだからさ……。はぁ……なんでこんなことになっちまったんだ……」
「わからない……けど、最後に飲んだテキーラのせいだろうな……」
「俺もそう思う……」
「……」



「零、起きてるのか?」



「うおっ!?土方さんだ」
「ゲエエエーーーッ!!?」


そうか、ここは真選組屯所だった!
あンの糞ヤロー空気読めや!!


「まずい!!開けられるかも!銀さん、着替え持って押入れに隠れて!!」


散らばっていた服やらパンツを抱えて、裸のまま狭い空間に押し込まれた。
四の五の言ってられない状況だが、もうちょっと優しくしてよ零くん!


「イダダダダ!!指挟んでる指!足の指!!」
「五月蝿い!!早く!!」



「零?どうした、騒がしいぞ」


襖をちょっとだけ開けて部屋の様子を窺っていると、零くんが慌ててパンツをはいて着流しを羽織っているのが見えた。
散らかったティッシュを布団に隠してるその間も、土方が部屋の外から大丈夫か?だのなんだの、執拗に零くんの名前を呼んでいて苛々する。
彼氏かテメーは。

あ、障子が開いた。

うーーーわ!部屋に入ってきやがった!あっち行け!失せろ!!!
つまみだせ零くん!追い出せ!!いけ!!


「おはようございます土方さん!!」
「なんだ、今起きたのか」
「あは……あははははッ!い、いやあ、はは……」
「ま、今日は非番だしゆっくりすればいいさ。昨日は遅かったんだろう?」
「えっ!?あ、ああ!はい!」
「お前……顔色が悪いな?」
「顔!?普通ですよ!!普通!!アハハハ!」


ッダアアアアーーー!!!よく見えねえええ!!!
見えねえけどすげーイチャイチャしてるうゥウウー!!!
ッウオェ!!吐きそう!!
とっとと出ていけやアアッ!!ブチ殺すぞ!!


「あのぉ土方さん、な、なにかご用で……」
「そうそう、お前に渡していた書類の中に、間違えて三番隊へ渡すものが混ざってたようでな」
「えーっと……あ、備品購入の申請書ですかね?それなら見た記憶があります。ちょっと待ってくだ……!?」
「あぶね!」


……ねえ、ナニコレ。
俺は何を見せられてるの?

腰の調子が悪い零くんが布団に足をとられてこけそうになったのを、土方が腕を引いてかばった。
そのまま腕を離せばいいのに、どーしてコイツはがっつり抱擁してるわけ?
なーんで髪にすりすり顔を寄せてんの?
拳銃がありゃここから狙撃して殺してやるのにクソ……。
早く離れろ……!離れろ離れろ!


「……お前、甘いニオイがするぞ?」
「はッ!?」
「うーん……あんまり好きじゃねえ……」
「あ、あはは……なんのにおいでしょうね……!?しっかり身体洗いますね……あはは……」


零くんに俺の体臭がうつってた?
ちょっと嬉しいかも……とかなんつって。
つーーーかおめーに好かれたって嬉しかねーし、ニコチンマヨネーズ臭より甘い方がマシだバーカバーカ!


「ん?なんだこのティッシュの山は」
「うわあああああああーーーー!!???違うんです土方さんこれは!!」


げ!しまった!
零くんがつまずいたせいで、布団に隠してたティッシュが出てきやがったのか!


「あっ、あのっ、違うくて……!」
「そ、その……なんだ……お前くらいの若さなら一晩でそれくらいティッシュを使っても不思議じゃない。俺も18の頃は1箱使い切るくらいハッスルしたもんだ」


フォローしてるつもりかよオォオオオ!!!


「え……!!?土方さん、その話詳しく聞かせて下さい」


テメーも食いついてんじゃねエエエエエエーーーッ!!!!


「とにかく、ちゃんと始末しとけよ。寝癖ついてっから、出かけるならちゃんとしろ」
「はい……」


あ、出て行った。

障子が閉まったのを確認して、俺はそろりと外に出た。
何はともあれまずはパンツをはくか。


「はあ……」
「元気出してくれよ零くん。責任とるから結婚しよう」
「はぁーーーー……」
「やめろよ!しょうがないだろ!?俺もお前もなにも覚えてないんだから!」
「そうだよな……銀さんだって可愛そうだよ……いくらモテないからって俺なんかにちんこ突っ込んでさ……」
「てめえ一言余計だぞ」
「……」
「……?」
「……」
「……なんだよ」
「……うっ」
「照れてんのか?」
「……なにも覚えてなくてよかったかも」
「そう?俺はちょっとくれえなら覚えててもよかったなって思うけど」
「たえられないよ」
「何が?」


あれ。


「俺の顔を見たら思い出すから、とか?」


零くん、顔真っ赤。 


「……うん」


あれ?
あれれ?


「あの、零くん」
「……なに、早く服着て」
「勃っちゃった……」
「ハアアァ!?」
「いやいやいや、普通だろ!!だってお前!オイ!!さっきの顔はダメだわ!!狙ってんだろ!?」
「狙う!?何をだよ!!ちんこ折るぞ!!」
「折るの!!??ばっ……!とんでもないこと言うな!!大体お前だって俺のこと意識してんだろうが!ちょっと勃ってんだろオイ!」
「勃ってねーわ!!」


ムキーーー!!
俺ばっかりコイツにムラムラしてるみたいで腹立つ!!
零くんだってムラムラしたから俺と寝たんだろ!?
いくら酔ってたからって、嫌いな奴とはそうはならねーだろうし。

あーあ。
銀さんちょっと拗ねたぞー。


「……零くん。お前まさか、酔うと男だろうが誰とでも寝るのか……」
「何言ってんだよ……!!違う!!」
「どうだかな……だって何にも覚えてないんだろ?」
「それは……」
「はぁ……」
「……銀さん、ごめん、本当に……!!」
「あん?謝らなくてもいいだろ。だって“覚えてない”んだし」
「それは……その……」


零くんの反応に、ズボンを履く手がとまる。

部屋着から外出用の着物に着替えようとしていた零くんに近づき、壁に追い込んだ。


「アレ?それとも、なんか思い出した?ココとかどんな風に触ったっけ?俺のちんこ硬かった?」
「思い出してないし……ッ!触るなよ、やばいって!ここ屯所だから!!」
「その“屯所”で昨日エッチしたんだけど……ん、零くん、痣がついて……」
「痣……?」


……あ。


ああ……、


うわああーーー。



「……うん、首のところ……」



やばい、やばい、やばい。



やばい。



「そ、そっか……見えないように気をつけるよ……」


零くんの首筋についてる痣を見て、少しだけ思い出した。
首についてる刀傷が妙にエロくて、執拗にしゃぶりついて噛んで吸い付いたことを。


「銀さん……」
「……え!?お、おう?!」
「痣といえば、銀さんの背中にひっかいた傷跡がいっぱいあって……多分、それ俺が」
「……ァ」


そ……、それも思い出しちゃった……。
“銀さんのちんこおっきい〜”とか、“銀さん大好き”とか、零くんにそんなこと言わせながらめちゃくちゃに突いて抱き潰したんだった。

屯所でなにやってんの俺?
こんなことバレたら即逮捕だよコレ。


「……銀さん、どうした?大丈夫か?」
「……零……」
「うん」
「……本当にシたのか、確認したくない?」
「ま、まあ……でも、もう証拠は出揃っただろ……?あとはカルピス原液を鑑識にまわしてDNA鑑定するぐらいしか……」


違うって、そうじゃない。
ギンッギンに硬くなってる竿を零くんに押し付けてゆるゆる腰を振ると、さすがの零くんも気づいたようで俺の身体を押し退けようとする。


「身体は覚えてるだろ」


零くんもギンギンじゃん。

イケる。
食える。



「銀さん……」
「ん、零」


オイ!
こっちはいい雰囲気だってのに、誰だ廊下を走ってる奴ァ。


「この足音!?やべ!!」
「は?イタタタ!!髪の毛ちぎれる!!!ひっぱんなよ!」
「黙って押入れに入れって!!」



「わりィ零!書類貰うのを忘れ……なにやってんだ?」



またお前か土方アアアァアアーー!!!
さっきと同じように襖の隙間から覗き込めば、憎たらしいV字前髪が見えた。
コイツわざとか?
わざと邪魔しに入ってきてるのか?
憎しみで殺してやりてェ……!!



「あはははははっ、あ、お、押し入れの戸が外れたから直してて!!」


零くんちょっと!
押入れを必死に押さえてんのはおかしいだろ!
見つかるだろ!
離れろ!
オイ!バカ!オイ!


「そうか、大丈夫か?」


ほらこっちに来ただろうがああああーーー!!
あっち行け!!しっしっ!!


「大丈夫大丈夫!!書類ですね!!そこにあるんですよ!ほら、机の上に!!持ってっちゃってください!!アハハ、も〜〜土方さんってばうっかりさんなんだからああ〜〜!!」
「ん……ああ、確かにこの書類だ。すまねえな。なーんかこの部屋さっきから甘ったりィ。換気しとけ換気。カビが生えんぞ」
「甘ッ!?換気ですね!!しておきます〜!」


よし……出て行ったな。

零くんが申し訳なさそうに開けてくれた襖から、のっそり這い出てしがみついてみた。
もっと俺のにおいがつきゃいいのに。


「痛かったんだけど……」
「見つかって殺されるよりよかっただろ……ほら、銀さん。ちゃんと上着も着て!!帰って!」
「ええーーー」
「いつまでも居られると心臓に悪い……」
「……へいへい」


俺的には“見つかるかも”っていうスリルが良かったりもするんだけど……。
酔ってる時の俺も同じこと考えてたんだろうな。


「零くん。また飲みにいこーな」
「……はあ……少しならな……」


嫌だって言わないお前に、“次”があると期待しとくよ。


「うしっ、じゃあな」
「すぐ左にまわれば、勝手口がある。鍵はあいてるからそこから出るといいよ……」
「おう、さんきゅ」


部屋を出る瞬間、零くんの頭をわざとぐしゃぐしゃに撫でて出てやった。
銀さんと次に会うまで大人しくしとけよ犬っころ〜。

とっとと帰って思い出しながら一発抜こーっと!




「見ーちゃったァ。いや〜旦那も零もなかなかやりやがるねィ。死ぬまでこのネタでゆすれるぜィ、ヤッター」







←前次→
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!