初恋ラブVOICE
オタクでドMで変態



ジュンと話しを終えると、例のオタクがオレの前の方から歩いてきた。

いつも通り素通りかと思えば、いきなり自分の名前を呼んで近づいてくる。


「色川くん!よ、よかったら一緒に帰らない?」

「…何でテメーなんかと帰らなきゃなんねーんだよ…。」

「だ、だって色川くんこの前雑誌見て驚いてたから声優の榎本さん好きなんだなって思って。だから話が合いそうだなーって。」



「………………。」









「こ、これが、榎本さんが初めて出演したドラマCD!」



何でこんな事になったんだか…。

今いる場所は例のオタク(名前は高坂っていうらしい)の部屋。
部屋中はポスターだらけで賑わっている。
ポスターだけでなく、他にも色々なオタクグッズが並べられている。


高坂が渡してきたものを手に取ると、驚いて落下させてしまった。


「なっ、」

「榎本さんってBLから入ってきたんだよ。」

「BLって…あれだろ…。」

「うん、男同士の恋愛とか、そういうやつ。でも声優さんって凄いよねー、BLもの聞くと余計にそう思うよ!」


こいつは勘違いしてる。
俺は声優になんか興味ない。

単に榎本良克という人間に興味があるだけで……確かに声優という仕事をしてる良兄は気になるけど…。


「とりあえず俺が持ってる榎本さんが出演してるのはこのくらいかな?」

「…こんなにあるのかよ。」

「うん。榎本さんってこの一年で人気になってきた人だしね。よかったら貸すから聞いてみてよ。」

「…おう。」


高坂はオレの目の前に並べたものを綺麗に袋の中に入れていく。



こうして見てみると、コイツってカッコいい顔つきだよな。
…髪型が問題あるだけで……ちゃんと整えれば、モテると思う。
身長だってオレよりデカくて、タロぐらいはある。

まあ、マイナス面(オタクでしかも最近言われる腐男子ってやつ)が多すぎるから結局モテないと思うけど。




「高坂、オマエもう少し見た目よくすれば?」

「え?」




高坂に顔を近づけ、前髪をあげて顔を見やすくする。


「髪型(もっさりヘアー)変えればカッコよくなんじゃねーの?」



オレがとった行動に高坂はびっくりしたのか、一瞬止まっていたが、すぐに顔を赤らめて話し始める。


「え、あ、そう?……あの…色川くん?」

「あ?なんだよ。」






「お、押し倒してもいいですか?」


「はあ!?」



「駄目なら、色川になら押し倒されてもいい!」


高坂が発する言葉に気持ちが悪すぎてゾワゾワとする。



「き、きめぇ!近寄んな!!つか、誰がテメーなんか押し倒すか!!!」

「ハアハア…、もっと言って!」




さっきよりももっと気味が悪くて、さっきの倍ゾワゾワとしてきた。



「キモすぎるっ!オタクだけでなくドMかよっ!!」

「あぁっ恵兎くん!もっと!!」


「名前呼びすんなあ!この変態!!」




高坂に強烈な一発を与えると、急いで荷物を持って家へと一直線に帰った。




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あきゅろす。
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