はるなLong 04 朝、今日はなんだか早く目が覚めてしまったのでいつもよりも少し早い時間に家を出た。いつもは武蔵野の制服でうめ尽くされている通学路もまばらにしか人はいない。 途中、グラウンドの前を通るとキーン、とバットがボールを弾く小気味いい音が聞こえた。フェンス越しに見てみると、野球部の主将らしき人が叫んだのと同時に野球部員がいっせいに走って散らばっていくところだった。どうやらボール拾いをしているらしい。 その内の1人が私の方へ近付いてきた。榛名だ。 「よう、今日早ェーじゃん。」 「はよっす。なんか早く目覚めちゃって。」 お前が早起きなんて明日は雨降るな、と言って榛名は額を流れる汗を拭いながら笑った。うん、こうやって見たらただの爽やかな野球少年なんだけどね。 「それよりさ、榛名。アンタ昨日の…」 「分かってっよ。昼飯奢りゃあいいんだろ。」 「ちゃんと覚えてたの。なら良いんだけど。」 私が昨日の確認を終えて満足していると榛名の背後に秋丸くんが走ってきてボール拾い終わったぞ、と声をかけてきた。 榛名は振り返ってすぐ戻る、とだけ言って再び私に視線を戻す。 「じゃーな、昼までに何食うか考えとけよ。」 そう言って榛名は野球部の輪の中めがけて走って行った。その背中にがんばれよ野球少年ー、と声をかけると彼は振り返らずに左手をあげた。 Commedia・dell'Arte4 がんばっている彼の背中を見て一瞬ドキッとしたのは、気のせいだと思いたい。 最初は秋丸とヒロインは知り合いじゃない設定だったんですが、榛名と中学時代ずっと同じクラスだったらそんなことはないだろって変えました^^ |