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一枚上手な彼
 
 
なかなか部活に来ない彼を捜しにやってきた教室の中をドアの隙間からこっそり伺うと、そこには慎吾の姿と………泣きじゃくる女の子の姿が。コレはもしかしてもしかしなくともアレですか、告白現場ってヤツ?泣いてるからOKはしてないんだろうけど、自分の好きな人が告白されてるのを見るのはあまり良い気はしない。


私が一人ブルーになっていると、その女の子はどうして私じゃダメなの?、と慎吾に問いただしていた。その言葉から、やっぱりその女の子が断られたことを悟ってほっとする。しかし、それも一瞬のことで慎吾の口から出た、好きなヤツいるから、という一言で私は再び頭を鈍器で殴られた気分に陥った。彼女もそれは同じだった様で一瞬呆気にとられた顔をしていたけれど、それなら仕方ないね、と言ってニッコリ笑ってみせていた。時間とらせちゃってごめんね、部活がんばって、そう言い残して彼女は私がいるのとは違うもう一方の扉から出て行った。




慎吾に、好きな人が。だって、今までそんな素振り全く見せなかったじゃない。なんでなんで、自分のつま先を見ながらそんなことを考えていると、私の目の前の扉が渇いた音とともに開かれた。視界に入ってきた足から辿って、顔を見てみると片方の口角だけをあげニンマリと笑っている彼と目があった。



「っつーことなんだけど。」
「………な、にが?」



慎吾の口から出た言葉の意味が分からなくて、聞き返す。オレには好きな人がいます、だからお前もオレのこと好きになっても無駄ですよ、そういう意味?



「オレ、好きなヤツいんだよ。」
「初めて聞いた、よ。」
「だって、誰にも言ってねーもん。」
「付き合ってんの?」
「いや、まだ。」
「そう…。」
「だけど、たぶん、ってか、絶対にそいつもオレのこと好きだと思うんだよね。」



そりゃ良かったですね。私、なんでこんな話聞いてんだろう、惨めになるだけなのに。この場からとにかく逃げ出したくて、早くグラウンドに行こう、そう告げようとするといきなり肩を捕まれてビックリした。目の前には、真剣な顔した慎吾。



「お前だよ。」
「へ、」
「だからオレの好きなヤツ、お前。」



オレの好きなヤツ、お前。慎吾の口から出た言葉を頭の中でリピートする。オレの好きなヤツ、お前。慎吾の好きなヒト、わたし。なんだか頭がウマく回らない。慎吾には好きな人がいて、その子も絶対に慎吾のことが好きで、その子は私のことで…。ヤダ、私慎吾のこと好きってバレバレだったの?そう思ったら一気に顔が熱くなってきて、彼の顔を直視できない。目を逸らそうとしたが、いつの間にか頬に添えられていた手のせいでそれは叶わなくて、次の瞬間、私の唇は彼のそれで塞がれた。




一枚上手な彼(島崎慎吾)




(ちょっと、あたしまだ返事してないよ。)(お前の気持ちなんかとっくに知ってる。)




080413 稲葉

Thanks:確かに恋だった
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削り過ぎてよく分からんことになった^^
もとはこれの3倍の長さだったことは内緒内緒(…)


あきゅろす。
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