異文化コミュニケーション 「お前って変わってるよな。」 お弁当も食べ終わり、今から寝ようか、と思った矢先に隣の席に座る少年に提言された。いきなりの失礼な発言に、頬を付きながらこちらを見つめる彼を一瞥する。すると、彼は私が怒ったと勘違いしたのか別に悪い意味じゃねぇよ、と頬を付いているのとは逆の手を振りながら訂正してきた。 「なんで?」 「なんつーか…、言葉では上手く表せらんねぇけど変わってる。」 アンタにそんなこと言われたくないね、と喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込んだ。こいつと口喧嘩をしたら私が勝てる見込みは万に一つ、いや、億に一つもない。 「よく何考えてんのか分かんねーって言われねぇ?」 「あ、それよく言われる。」 でもさ、人間なんてそんなもんじゃないの?他人の考えてることが簡単に分かれば誰だって人間関係で悩むわけないし、分からないものをだんだん開拓していくから人生って楽しいんじゃん。そう、泉に話すと彼は未だに頬を付いたままオレもそう思う、と賛同してくれた。意外に私たち気が合うのかもしれない。 「でもさ、オレお前が何考えてんのか分かるぜ。」 「ウソつけ。」 「分かるよ。今、眠いと思ってる。」 「そんなん見てたら誰でも分かるっつの。」 私が悪態をついて言えば、オレにはお前のことはなんでも分かるんだよ、だなんて真面目な顔して言われてしまった。ちょっとちょっと、アンタは冗談で言ったにしても、言われた側の私としてはドキドキしてしまうんだから。 「あ、今ドキッとした?」 ズバリ考えてることを当てられて私はひどく焦った。泉はというと楽しそうな余裕たっぷりな顔をして未だに頬を付いてこちらを見ている。ちくしょう、すっげー悔しい。やられっぱなしは私の性分じゃないので、少しばかり反撃を試みる。 「泉、私の考えてることまだあるんだ。」 「腹減ったとか?」 「さっきご飯食べたばっかだから。」 「んじゃ、退屈?」 「や、別に。」 分っかんねーな、という彼にたいしてアッレーあたしのことなんでも分かるんじゃなかったの、と少し上から物を言うと大きな目を鋭くさせて睨まれた。正直怖い、けどこんなところで負けるわけにはいかない。では正解言いまーす、と前置きして私は口を開く。 「好き。」 「は?」 「あたしの、想ってること。」 ここで何が?、と尋ねられて苺大福!だなんて答えて、ドキッとしたでしょ?と得意な顔して泉に先程問われたことと全く同じことを言い返すのが私の脳内プランだった、のに。一向に彼は口を開かない。さすがにおかしい、と思って泉の顔を見てみるとさっきまでの余裕綽々の表情はどこへやら。彼の顔は耳まで真っ赤だ。 「え、ちょっと泉くん…?」 「オレも。」 「はい?」 「オレもお前好き。」 未だに頬を付いたまま、少し目線を下げて言う彼の顔を見てたら今更冗談だった、だなんて言えなくなってしまった。どうやら、彼は私の考えてることなんか全く察してくれなかったようだ。 異文化 コミュニケーション やはり私の考えてることはイマイチ他人には伝わりにくいらしい。 0427 稲葉 |