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むりにいうことをきかせようとしてはいけません


挿れてないけど表に置くのはどうかと思ったので。
覚悟してきている人のみスクロールぷりーず。

















黄色と茶色とオレンジ、赤に黒に白もたくさん。
これでもかというくらい、画材屋で絵の具を買ってきた。
さあ、何をどれだけ混ぜたら金色ができるだろう。





「・・・あ、ちょっと・・・オイとら、動くなっつってンだろ」

屋根の上で寝そべっているとらを見つけて、スケッチブックを持って俺もよじ登ったのが1時間前。
それからずっと、俺はスケッチブックに鉛筆を走らせている。
髪の毛がむずかしい、目がむずかしい、なんて思いながら寝ているとらを夢中で描いていたら、いつの間にかとらの意識は覚醒していた。

「なにやってんだ、うしお」 「わしを描いてんのか?・・・・これわしか?」 「おい、いい加減腹が減った」
なんて好き勝手なことを並べ立てるとらを無視して(もしくは適当にあしらって)、俺はスケッチブックと睨めっこ。
途中で蝶に気を取られて動きそうになるとらを制しながら、目の前のとらと紙の中のとらを見比べる。

なかなかうまくできたと思う。だけど、表情がうまくいかない。
いつもは鋭い眼差しの目も、今は寝起きのせいか少し丸くまどろんでいる。
大きな口は、口角をあまりあげずに大きな弧を描き笑う。・・・むずかしい。
そもそも、描いている間にコロコロ表情が変わるのが悪いのだ、と自分勝手な文句を心中で呟きながらとらを見ると、
とらは今にも屋根から降りようと立ち上がっていた。

「アッ、おい、何してんだよとら!動くなって言ってるだろっ」

「誰がてめーの言うことなんか聞くかよ。わしはもう飽きたんだ、降りるからな」

腕(前足?)を曲げて、飛び降りる準備は万全のとらに、俺はわたわたと慌てながら叫ぶ。

「あっ、後10分でいいから、とらっ!」

「やだね。わしはてめーのぺっとじゃねえんだよ、くそチビ」

「わっ、わーかったよ、後でハンバーガーでも照り焼きでも、買ってやるっつーの!だからっ、じっとしてろよ」

俺がそう言うと、とらは少しだけ笑って元の位置に寝そべった。
俺は内心くそ、と呟きながら、続きを描こうととらを見る。

「・・・・っ、なん、だよっ」

前を向いた瞬間、鉛筆はピタリと止まった。
とらと俺の視線が絡み合う。とらは真剣な顔で、自分の絵を描く俺を見つめていた。
さっきまでの退屈そうな顔とは打って変わって鋭い視線。ドキリと心臓が跳ねる。

「アア?何がだ、はやく描きやがれド下手」

「う、うるせえ、クソ妖怪っ」

俺はどぎまぎとしながら、ゆっくりゆっくり鉛筆を動かす。
モデルに視線を向ければ自然と目が合ってしまうせいで、思うように描くことができない。
体はほとんど描けてしまっているせいで、必然的にとらと目を合わせなければ続きを描けない。
だけど、心臓がドクドクと、とらに聞こえるんじゃないかというような大きな音を立てて脈打つせいで、絵に集中できずに意識が散る。
そんなことをしているうちに、約束の10分はあっという間に過ぎてしまった。
とらは欠伸をしながら、俺に告げる。

「うしお、そろそろ時間だが、お前、そんなんで描けたのか?」

「うっ・・・うるせえや・・・」

とらの言うとおり、紙面のとらは完成なんて程遠い。
体は描けた、俺にしてはいい出来だと思う。
だけど、顔がのっぺらぼうだ。
でも、これは俺が悪いんじゃあない。とらのせいだ、と思って視線を向けると、とらは思ったよりも随分近くにいて、心臓が止まるかと思った。

「・・・おい、これがわしか?おめーにはこう見えてんのか、うしお」

「ちっ・・・ちげえ、よ!」

スケッチブックを覗き込んだとらが、顔を顰めながらそう吐き捨てた。
俺は焦って声を裏返らせながら否定。その間も心臓はドキドキとうるさい。

「じゃあなんで、顔が描いてねえんだ?」

「・・・」

「うしお、聞いてやがんのか」

「・・・っ、わーかったよ、描きゃーいいんだろっ。だからじっとしてやがれ!」

俺があっちへ戻れ、と右手でとらを追い払おうとすると、とらは思いきり顔を歪めた。
睨まれると、やはり少し迫力がある。

「あ?何だその言い草はよ・・・てめーのオネガイなら、もっと頼み方ってもんがあんだろうが」

「・・・っ、う、うるせえ!はやくしねえと、退治すんぞ!」

「てめーはすぐそうやって!・・・おめーがそういうつもりなら、いいぜ、てろやけはんばっかもいらねえ、絵も描かせてやらあ」

俺を見下して、ひどく悪役染みた笑い方をするとらを、俺は顔を赤くしたまま見つめた。
なんでいきなりそんなことを言い出すのかわからなくて、キョトンとしたまま次の言葉を待つ。
とらは俺の後頭部に手を伸ばすと、ぐい、と引き寄せて互いの顔を近付けた。
俺ととらの鼻先が触れ合う。
そのままの距離で、とらはニタリと目を細め、口を三日月型に歪めた。

「ただし、1分ごとに、おめーを一口喰ってやる。こうやってな」

「え・・・んっ、!?」

俺の唇を割って、とらの大きな舌が入ってくる。
体格差がこれだけ違うのと比例して、当然とらは舌もでかい。
俺の口の中に全部は収まりきらなくて、それでも口内をほとんど塞がれて息苦しい。

「・・ぁ、・・・ぐ・・・ん・・・」

とらも舌を自由に動かせないのがもどかしいのか、眉間に皺を寄せている。
それでももぞもぞと蠢く舌に口内をくすぐられて、俺は本当に自分のものか疑いたくなるような高い声をあげてしまう。

「ふ・・・あっ・・・」

「随分気持ちよさそーだなあ、うしお」

「んっ・・・うる・・さ・・・ぁ・・」

脳に酸素が回らないせいでくらくらする。目の前がチカチカしてきた。
もうダメだと思った刹那、とらの舌が俺の口からするりと抜けていった。

「・・あ・・・え・・・?」

俺は真っ赤な顔と涙の滲んだ目で、茫然ととらを見上げる。
とらは最初寝そべっていた場所に何も言わずに戻って行く。俺はつい、そんなとらの背中に声をかける。

「と・・・ら・・・っ?」

「あ?絵を描くんじゃねえのか?うしお」

にやにやと笑うとらの横顔が、憎たらしい。
こんな状態で絵なんてまともに描けるわけがないことを知っていて、そんなことを言うとらがむかつく。
だけどそれを言うのもまた悔しくて、強情な俺は力の入らない右手で鉛筆を握った。

「・・・っ、描いてやらあッ!」

意気込む俺とは対照的に、とらは至極楽しそうにニヤニヤと笑っていた。







「・・・っあ・・・・んんっ・・・」

「どーしたうしお?もう5分も経つが、全然進んじゃいねえじゃねーか」

「うる・・・さ・・・っい・・・」

5分経ったということは、とらの(自称)食事も5回目ということで。
俺はいい加減腰が立たなくなって、へたり込んだまま喉の粘膜を舌で撫でられる感覚に耐えていた。

「・・・ひっ・・・ん・・・ぅあっ・・・」

5分経ったといっても、1分毎にとらの舌に翻弄されながらの5分間は決して長くはなくて、
むしろ折角しっかり描けていた輪郭までそんな状態で手を加えたせいでぼやかしてしまった。
とらの舌が離れていっても頭はぼーっとしっ放しで、とても絵に集中なんてできやしない。
まして、絵のモデルはとら。心臓が跳ねるばかりで手は一向に動かない。
俺がぐるぐると考えている間に1分なんて短い時間はすぐに過ぎてしまい結局絵は進まない。
それでもちゃんと、一回分の食事(一定の時間が決まっているとは思えないが)が終われば所定の位置に戻っていくとら。
そろそろそれが、焦らされているようにすら思えてしまっている自分が嫌になる。

「・・・っあ・・・・と、ら・・・ぁ・・・」

「ア?なんだよ、うしお」

「・・も、・・むり・・・」

とらの舌を噛まないように喋ったせいで、呂律が回っていない。
ちゃんと伝わるか不安だったが、俺の言葉はしっかりととらの耳に届いたらしい。
とらは俺の口内から舌を抜き、耳元で囁くようにゆっくりと喋る。

「なんだ、我慢できねえってか?」

骨にそのまま響くような低い声に、俺の肩がビクリと揺れる。
目をぎゅう、と思いきり瞑って、耳にかかる吐息のくすぐったさに耐えた。
それでもとらは耳から口を離さない。

「うしお、返事ぐらいしやがれ」

「・・っ、だったら、耳から口、離しやがれ・・・っ」

それは自ら降参だと口にしたようなもので、悔しさに下唇を噛んだ。
とらは「ああ」とわざとらしい声をあげ、先ほどまで俺の口内にあった大きな舌で、俺の耳を舐めあげた。

「・・・っひ、あ・・・!?」

「そういや、うしお。おめー耳弱かったなあ」

クク、と楽しそうに喉の奥だけで笑う。
耳の中に舌を差し入れられた。
くすぐったいようなむず痒いような奇妙な感覚に肌がぞくりと粟立つ。
目尻に溜まっていた涙が、とうとう頬を伝って落ちていった。

「や・・・めろ・・・っとら・・・ひ、・・っ」

「やめろなんて言うわりにゃ、随分楽しそうだがなァ」

そうやってとらが喋る動きにすら反応する自分の体が憎らしい。
とらは俺の耳たぶを噛んで、中に舌を差し入れては抜いて、俺が音を上げるまで左耳をいたぶり倒した。

「やっ・・・もう、やだッ・・・・ん・・とらぁ・・・」

涙目でそう訴える頃には、俺は完璧に腰砕けになっていた。
足がカタカタと小刻みに震えて力が入らない。
もうどうしようもなくて、とらに向かって手を伸ばした。
だけどその手は、とらに掴まれてベロ、と大きく舐めあげられる。

「・・あっ・・・も・・なんだ、よォ・・・」

いい加減じれったくて、俺が非難の声をあげれば、とらは横目で俺を見やった。
ふ、と僅かに口角があがる。

「だから、喰ってんだよオメーをよ」

とらの口の中にある指に、軽く牙が立てられる。
痛いくらいのそれに、電気が流れるようなピリピリとした感覚が走る。
それすら快感に変換してしまう自分の体の浅ましさに嫌気が差した。

「・・っだからァ・・・も、むりだって・・・ゆって・・・っん・・・ふ・・っぁ・・」

「だったら、可愛くオネダリでもしてみやがれ」

槍で脅すんじゃなくってなあ、と、とらは先ほどの俺の発言を根に持っているようだった。
だけど俺に、“素直に可愛くオネダリ”、なんて芸当が、できるはずがなくて。
眉間に皺を寄せて、とらを睨む。

「ハッ、悔しかったらわしをその気にさせてみろよ」

とっくにその気のくせに、という文句は心の中だけで呟いた。
俺は掴まれていた腕を振り払い、とらの髪を掴んだ。
ぐい、と無理矢理引き寄せて、唇を合わせる。

「・・・・・っん・・」

「・・それだけか?その程度でわしの気分が乗るとでも、思ってンのかうしお」

とらに言われたこともあるけれど、何よりも俺が、ただ唇を合わせているだけというのに耐えられなくなって、とらの口を舌で割った。
とらの歯列をなぞろうと舌を動かすけれど、広すぎる口内にそれは思うようにいかない。
つりそう、なんて思っていると、とらの舌が俺のそれに絡んできた。

「・・っ・・・ふ、あ・・・・とっ・・・・ッ」

「がっついてんじゃねェ」

離れたお互いの舌を伝う唾液が糸のように伸びて、ぷつりと切れた。
とらは俺の唇をべろ、と舐めて少し離れる。
目を細めたとらの口から零れた言葉に、俺の心臓は高鳴った。

「そこはあとでもっかい喰ってやらァ」

歪めるという表現がよく似合うとらの笑顔で言われた台詞。
俺はその言葉に、顔を真っ赤に染め上げた。

「・・・っ、やだ」

「あァ?」

「・・・もっかい」

あとでじゃなくて、今がいい、なんて思うが早いか、俺はとらの口に噛みつくように口付けていた。
あまり力の入らない腕をとらの首に回してしがみ付く。

「・・っん・・・ん、ぅ・・・」

唇を甘噛みして、とらと目を合わせる。
とらがいつもやるように、唇を舐めあげた。

「・・ふん」

とらが小さくそう零したかと思うと、目の前に広がるのは青空だけになった。

「あ・・・あ?」

「ギリギリ合格、ってことにしといてやらァ」

俺のシャツをビリビリと破きながら、とらは口の端を吊り上げてニヤリと満足げに笑った。
後で冷静になってから考えて、合格、というのは“可愛くオネダリ”のことだと分かった俺は暫く蒲団から出てこなかった。




















次の日俺は、痛む腰をさすりながら画材屋までの道を歩いた。
肩にはいつものようにとらが乗っている。
大量の絵の具を買って楽しそうに笑っている俺を見て、とらが不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。

「なんだおめえ、ニヤニヤ笑って気色悪ぃぞ」

「うるせえ、やっと描けたんだよ」

「あ?」

とらは何だかわからないという調子で間抜けな声を上げる。

「オメーの絵だよ、このエロ妖怪!」







白いスケッチブックに描かれた、モノクロの獣。
その獣の顔には、どんな生き物よりも人間臭い笑顔が描かれていた。



黄色と茶色とオレンジ、赤に黒に白もたくさん。
これでもかというくらい、画材屋で絵の具を買ってきた。
さあ、大好きなとらを描いた大好きなこの絵に、俺の作った金色で色をつけよう。
























++++
きもちわるい(書いてる私が)
終わり方がものすごくきもちわるい(書いてるわry)
これ最初はほのぼのだったのになんかエロ描写入ってきたのは間違いなくこふじのせいです。
ただこんな残念クオリティだけどね!
とらの台詞が恥ずかしすぎて5回くらい死んだ。
うしおの喘ぎより恥ずかしいってどういうことだ。


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