Under Yシャツ (ブチャフ) 「フーゴ」 聞きなれた低音で名前を呼ばれたから振り返れば、ブチャラティが自分のYシャツを掴んで、僕の方に突き出していた。 ぱちくりと数回瞬きをしてブチャラティを見つめても、彼は何も言わない。 妙に瞳がキラキラと輝いているような気がして、嫌な予感が僕の脳裏を過る。 「・・・なんですか、ブチャラティ?」 「これ、着ろ」 「・・・なんでですか」 有無を言わさぬ命令口調。・・・なんて珍しい、と更に僕は訝しんで聞き返した。 それでも、ブチャラティは怯むどころか更に強引に僕に迫ってきた。 ずい、と体を僕の方に乗り出してきて、やけに顔が近い。 「・・・な、んなんです、か・・・っ」 「いいから」 何もよくない、と思っていたら、ブチャラティが僕のネクタイに手をかけた。 「ちょ・・っ!なにしてるんですか!」 「・・・だから、これを着ろって言っただろう」 「自分で着ます!」 ブチャラティの手から彼のYシャツを無理矢理引ったくり、彼から距離をとった。 恐らく顔を赤くしているであろう僕を見て、ブチャラティがくつくつと笑う。 「じゃあ、早く着ろよ?」 満足げに笑う彼の、憎たらしいこと。 それでも、自分で言ってしまった手前着ないわけにもいかず、僕はのろのろとネクタイを外す。 スーツの上着も脱いでYシャツに手を通した。・・・想像はついたけれど、だぼだぼだ。 ブチャラティのものなのだから当然ではあるけど、何だか悔しさが込み上げてきた。 袖は余っているし、裾はスカートのように太ももの真ん中まである。 ボタンを留めていると、ブチャラティがスウェットのズボンを僕の隣にあるベッドに放り投げた。 これも着ろ、ということなのだろう。 訳が分からないしブチャラティが見ているけれど、Yシャツがここまで大きかったら見えないし、どうせ、あっちを向いてくれなんて言ったら、 「なんだ?男同士なのに意識してるのか?フーゴ」なんてニヤニヤ笑いながらからかわれるに違いないと思い、ベルトを外してズボンを脱ぐ。 ベッドの上にあるスウェットに手を伸ばしたところで、その手をブチャラティに掴まれた。 「・・・え?なんです、ブチャラ・・・う、わ!」 そのまま右手を引っ張られて、姫抱きでブチャラティに抱えられた。 「なっ・・・ん、ですか!?何なんですかブチャラティ!」 自分で着ろと言ったのにそれを邪魔したり、そもそもYシャツとスウェットに着換えろなんていうのも意味が分からない。 普段から分かりにくいところのある人だとは思っていたけれど・・・今日の行動は、本当に意味がわからない。 僕がギャーギャー喚いて腕の中で暴れている間にも、ブチャラティは歩きだしていつの間にか部屋を出ていた。 向かった先はバスルーム。 本日2度目の、嫌な予感が押し寄せる。 「・・・ちょっと、お風呂、入るんですか・・?ブチャ、ぶっ」 湯気の出るお湯の張られた浴槽に、勢いよく投げ込まれた。 そこそこ広いとはいえ、足や腕をふちにぶつけた。 鼻にお湯が入って、奥の方がツンと痛んだ。 「げほ・・・っは、なに・・・するんだ、この・・・っ」 Yシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。 ギロリとブチャラティを睨んだが、ブチャラティはにこにこと楽しそうに笑っているだけだった。 玩具を買ってもらった子供のような顔、なんて、使い古された表現だけど、今の彼にはそれがぴったりだ。 「・・・なんなんですか、ほんとに、もう・・・」 そんな顔をしているのだから楽しいのは分かるが、どうして楽しいのかわからない。 彼がしたことといえば、僕を着替えさせて湯船に投げ込んだだけ。 新しいSMなのか?なんて考えたけど、それはあまりにもくだらなさすぎる。 「いや?ただ、昨日ミスタとアバッキオが話してたんだ。彼女にどんな格好をさせるのが好きかってな」 「はあ・・・?」 「アバッキオが自分のYシャツを着せるのが好きだ、って言ったらミスタがエロいってからかい出してな。 何でだってアバッキオがキレたら、「だってYシャツなんて透けるじゃんか!水被ったらもう着てないのと一緒だろ?やーらしいなアバッキオ!」 とか言って喧嘩になって」 「ちょっと待って下さい」 頭が痛くなってきた気がする。 けど、僕がびしょびしょに濡れているのはお湯だから、風邪を引いたとかじゃなくてこれは精神的なものなんだろう。 こめかみを指で押さえながら、僕はブチャラティを見上げた。 「・・・それとこれと、どう関係が?」 「関係、というか・・・見てみたくなったんだ」 当たり前のようにしれっと言ってのけるブチャラティに、頭痛が酷くなった気がした。 はあ、と大きくため息をついて、呆れた声で疑問を口にした。 「・・・それで?実際に見て、どうですか」 「・・・・・・そうだな」 ふむ、と顎に右手を添えて考え込む姿は男前だが、何しろ状況が状況だ。 この人は天然なのか、それとも単純に馬鹿なのか。 にやりと口が弧を描いて、真っ黒な瞳が細められた。 「・・・確かに、いいものだな。透けただぼだぼのYシャツ」 前言を撤回したい。この人はただの変態だ。 「・・・何言ってるんですか。二人が言っていたのは彼女の話であって、僕は男なんですからそんなの」 「俺が、好きでもない女のそんな姿を見て楽しいとでも?」 「・・・楽しい人は楽しいと思いますよ」 「少なくとも、俺は楽しくないぜ。お前じゃなきゃな、フーゴ」 更に口の端を吊り上げて笑うブチャラティは妙な色気を纏っていて、唐突な変化に僕は戸惑った。 ゆっくりと近づいてくるブチャラティから逃げようとキョロキョロと視線を彷徨わせるが、ここはバスルームでしかも僕は今バスタブの中。 逃げられるわけなんてなくて、ゆっくりと、ブチャラティの唇が僕と重なった。 「・・・っ、ん・・・ブ、チャ・・・」 ブチャラティがバスタブの中に入ってきて、ざば、と勢いよくお湯が流れ出た。 あくまでもそこそこの広さしかないバスタブは、大の男が二人も入ったことによってぎゅうぎゅう詰めになる。 必然的にブチャラティに触れる足や腕が、妙に熱を持つのはお湯の中に居るからなのか、そうじゃないのか。 「・・・は・・・・っふ・・」 熱さのせいもあり、長い口付けに早くも息が上がる。 目尻に溜まった涙を、ブチャラティの親指が拭った。 「・・・はっ・・」 ぜいぜいと乱れた息を整えようとしている僕の鼻に、がぶ、とブチャラティが軽く噛みつく。 「なっ・・・なんで、すか、っ」 「べつに」 そう言って、今度は下唇に噛みついて、軽く吸う。 瞼と額に口付けを落として、また唇に吸い寄せられるように戻ってきた。 「・・・フーゴ、口開けろ」 素直に従うのは悔しかったけれど、僕は少しだけ口を開いた。 そんな僕の様子を見て、ブチャラティはにやりと笑って舌を差し入れてきた。 「・・ふ、ぅ・・・・・・ん・・・」 「・・・は、・・」 ブチャラティが舌で僕の口内をくすぐる。 深い口付けに、口の端から飲みこめなかったどちらのものともつかない唾液と、僕の嬌声の混じった声が漏れる。 酸素があまり回らなくなってぼーっとしだしたところで、ブチャラティはやっと口を離した。 でもブチャラティの舌はそのまま僕の体を下って行く。 僕の首筋に、ブチャラティの舌が触れるか触れないかくらいの場所をなぞられて、ぞわりと背筋に何かが走った。 「んっ・・・」 ボタンを1つ外され(Yシャツが大きいせいで、ボタンをひとつ外すだけで大分肌蹴てしまう)、鎖骨をべろりと舐められた。 くぐもった甘い声が、自分の口から零れることに自己嫌悪。 「・・・きもちいいのか?」 僕を見上げて尋ねるブチャラティは、目は真剣だが口元が緩んでいる。 悔しくて、内心くそ、と呟きながら、僕は顔を逸らした。 するとYシャツの上から、かぷ、と胸にある突起を甘く噛まれた。 「うあっ・・・ん・・・・っ」 「聞いているんだぜ?フーゴ・・・」 「・・ぁ・・・うる、さ・・い・・・っ」 前歯でぐにぐにと押しつぶして、たまに少し痛いくらいに強く噛む。 反対側は指で弄んで、にたにたと笑っている顔が腹立たしい。 「ふ・・は、あっ・・・や、め・・・・んあ」 「やめろ?まさか、聞き間違いだよなあフーゴ?こんなに気持ちよさそうなんだぜ?」 普通の男なら何とも感じないであろう場所への刺激も、既に目の前のこの男によって開発されてしまった僕にとっては、甘い責苦でしかない。 ブチャラティが喋るたびに(その間も口を離していないから)、僕の口からは引っ切り無しに、 本当にこれが僕の声なのかと疑うような、甲高い声が上がる。 プライドの高い僕は、もう今更だと言われても反論できないのに、それにすら屈辱を感じる。 「・・・やっぱり、いいなYシャツ。アバッキオの言う通りだ」 きっと、ミスタはともかくとしてアバッキオはこんな意味で言ったんじゃないだろう、と思いはしたものの、 僕自身がとてもそんなことを言える状況ではないし、言ってやる義理もない。 むしろ、いつかあの下睫毛コンビに復讐してやろうと、心に誓った。 「う、あっ・・・ん・・・も、ブチャ・・・う・・・」 「もう・・・なんだよ?俺はまだ、質問に答えてもらってないぜ」 質問は既に拷問に変わってるじゃないですか、なんて、どこかで聞いたようなセリフを心の中で叫んだ。 「・・・は、・・・あっ・・い・・・・」 「ん?」 「・・・っ、いい、ですか・・・らっ!」 目尻に溜まった涙が、頬を伝ってお湯の中に消えた。 ブチャラティは僕の答えに少しだけ不服そうな顔をしていたが、「まあいいか」と呟いてそこへの愛撫の手を止めた。 そして、何かを考えているように黙り込んでしまった。 「・・・・」 「・・・・?ブチャラティ?」 僕が声をかけるのと同時か、それよりコンマ数秒早いくらいのタイミングで、ブチャラティは弾かれたように顔をあげた。 僕の頭上にある棚に手を伸ばし、その中から入浴剤を取り出す。 何種類かあるそれを手探りで探しあて、蓋を外してどぼどぼとお湯の中に流しいれた。 「ちょっ・・・何してるんですか!?」 「まあ、気にするな」 僕の頭を撫でてくるブチャラティの手をばしっ、と振り払い、目の前にある彼の顔を睨みつけた。 「それ!僕の私物じゃないですか!何勝手に使ってるんです・・・しかもそんな大量に!」 その入浴剤は僕のお気に入りで、ここ最近事務所に泊まることが多かったので家から持ってきたものだった。 お湯を白濁色にして少しぬめりの出るその入浴剤は、保温効果に優れていて冷え症の僕にはぴったりで。 ・・・付属の蓋2杯で十分だというのに、この男は。 「いいじゃないか。入浴剤くらい俺が後で買ってやる」 「そういう問題じゃなくてですね!こういうものは事前に本人の許可を得るのがぎゃっあ!」 「・・・色気のない悲鳴だな。少し萎えた」 油断していた。 お湯に色が付いて、水面下のブチャラティの手が見えなかった。 僕が文句を言うのに夢中になっている間に、ブチャラティはそろそろと手を僕自身に近づけていて、思いきり握られた。 僕にとってあまりに突然だったそれに、思わず悲鳴が上がった。 「・・・、なんなんですか、もう!」 生理的なものでない涙まで浮かびそうだ。 視認できない彼の手が、ゆるゆると動かされる。 「んんっ・・・ちょ、っと・・・ブチャ・・あっ・・・・ん・・ブ、・・・っ」 ぬめりの加わったお湯がまとわりついて、何とも言えない気分になる。 目をぎゅ、と瞑ってその感覚に耐えていると、後ろにブチャラティの指が伸ばされた。 もちそん目を瞑っている(開いていたとしてもお湯のせいで見えなかった)僕にはそんなことわからなくて、 突然そこに触れたブチャラティの指に、悲鳴染みた嬌声をあげる。 「ひっ・・・あ、・・・・」 入口を確かめるように何度か撫でて、つぷ、とブチャラティの指がそこに入ってきた。 「あ・・・あっ・・つい・・・ふ・・・」 「潤滑油がいらないから、湯の中ってのは便利だな」 お湯が入ってくるという奇妙な感覚に耐えながら、しみじみと感心したように言うブチャラティの言葉を聞いた。 そりゃ、確かに液体だけど・・・ローション等に比べて、明らかにぬめりの少ないこのお湯で、まさかそのままするつもりなのか。 僕がそんなことを考えて少し青ざめると、ブチャラティはそんな僕の思考を読み取ったのか、にやりと笑った。 「ああ、もちろんこのままやるからな?そのために入浴剤を入れたんだ」 何故この入浴剤が、ぬめりの出るものだと知っているんだ、さては勝手に使ったな、なんていう文句は、今はどうでもいい。 「やっ・・・ブチャラ、ティ・・・・っん・・・や・・・だっ」 「やだ?」 聞き返してくるブチャラティの言葉に、僕は首をガクガクと縦に振った。 ブチャラティはその間も僕の中に入れている指をぐにぐにと動かしていて、短い言葉が口から飛び出る。 「あ」とか「ん」とかの意味のない音の羅列は、僕の羞恥心を煽るだけ煽って宙に消える。 「やだ、じゃないだろ?」 「あっ・・・や・・ふ・・っぁ」 「なあ、フーゴ?」 「・・・っ」 耳に口を寄せて、いつもよりも低い声でねっとりと囁かれる。 熱い吐息と一緒に吐き出される言葉は、僕の腰に響いて体がびくりと揺れた。 唇を強く噛みしめて、迫ってくるような感覚に耐える。 「なあ、嫌じゃないだろ?」 「うあっ・・・やっ・・・動か・・・あっ」 僕の中を蠢いていた指が、二本に増えた。 バラバラの動きをする二本の指に翻弄され、まともな返事が返せない。 そんな僕を見て、ブチャラティは楽しそうに目を細めた。この変態。 「んあ・・・ふ・・・んんッ・・・や・・め・・・」 「まだそういうことを言うのか?」 ボロボロと生理的な涙が零れる。 ブチャラティはそれを舌で舐め取ると、ブチャラティは指を抜いて両手で僕の腰を掴んだ。 「え・・・あっ?」 狭い浴槽の中で無理矢理体を動かすと、僕とブチャラティの位置が反転していた。 ブチャラティの体を跨ぐように膝で立たされる。 「お前、騎乗位嫌いだったよな?」 にやりと意地悪く笑うブチャラティの顔が、今日ばかりは本当に悪魔に見えた。 「・・・だから、なんです」 「嘘ばっかり吐く悪い子には、お仕置きが必要だろう?」 本音を嘘呼ばわりされたことにも腹が立つが、それよりもこの子供扱いを僕が酷く嫌っていることを、この男は知っているはずだ。 それをわざとやっている、そう考えると、目の前のこの男にスタンドでも発動させてやりたいほどの怒りを覚える。 けれど、ブチャラティは僕の顎を掴んで引き寄せ、僕の唇をべろりと舐めた。 「っ!・・・な、に・・」 「ほら、はやくしろよ」 「・・いやです」 「ふーん・・・」 ブチャラティはつまらなそうにそう呟くと、いきなり僕の腰を掴んで貫いた。 「いっ・・・・あ、ああっ・・・・・ブ、チャ・・・・・ッ」 僕が痛みに悲鳴を上げると、ブチャラティは僕の耳に噛みついた。 痛みを感じるほどではないけれど、じわじわと感じるくすぐったさと、下肢からの痛みが体の中で渦巻いて妙な感覚になる。 ブチャラティは口を耳から離さないまま、ぼそぼそと呟く。 「ほーら、言うことをきかないからだぜ、フーゴ?」 ぞわりと肌が粟立つ。 見えていないブチャラティの顔が、確かに笑ったのがわかった。 「・・・んっ・・・痛・・・あ、いっ・・・いた、い・・・うあ・・」 「いきなり挿れたからな。そんなに慣らしてなかったし」 そんなことを口にしながらも、ブチャラティは腰を動かすのをやめない。 異物感はそれほどでもないけれど、あまり慣らされていない内側は痛みを訴える。 僕が苦痛に呻きながら涙を浮かべていると、ブチャラティがふ、と笑った。 「・・・っあ・・・なんっ・・です、か・・・ッ」 「ん?・・・いや、お前の泣き顔はかわいいと思ってな」 「・・・・」 「苦しんでいる顔とか、恥ずかしがっている顔とか・・・お前はかわいいなフーゴ」 そう言って、唇に軽くキスを落とされた。 「・・・あ、ブ・・チャラティ・・・っは、変・・・態、です・・・よね・・・っ」 仕返しのつもりで、できる限り嫌味っぽく吐き捨てた。 それでも、痛みと少しずつ引き出されてきた疼きに邪魔されて、言葉は途切れ途切れになってしまう。 荒い呼吸を何とか落ちつけようとしても、続けざまに与えられる刺激にそうもいかない。 ブチャラティはニヤリと笑って(ああ、今日だけで何度目だろう)、僕の肩に顔を埋めた。 「知ってる。・・けど、お前にだけだ。いいだろう?」 「んっ・・痛・・・・・・・え、ブチャラティ!?」 「なんだ?」 肩に、ちくりと小さな痛みが走った。 まさかと思って視線をやれば、そこには白い肌に咲く赤い花。 僕はわなわなと震えて、涙目でブチャラティを睨んだ。 「・・・痕!つけないでくださいって、僕いつも言ってますよね!?」 「ああ、そうだったな。すまない」 「絶対!覚えていたでしょう!?何してるんですかもう!いつもの服が着られないじゃないですか・・・っ」 「着なければいいだろう?」 そう言ったかと思うと、ブチャラティはまた僕の肩に吸いついた。 今度は、先ほどよりも強く。 少し位置をずらして咲いた痕は、先ほどよりも鮮やかな赤で溜め息を吐いた。 「・・・はあ」 「・・・そうしたら、俺以外がフーゴの肌を見なくて済む」 「・・・は?」 ぽかんとしてブチャラティを見ると、彼は至極真面目な顔をしていて。 照れてたりしたらまだ可愛げがあったのに、なんて考えながらも、真剣な彼の顔にむしろ笑いが込み上げてくる。 「・・・っふ、は・・・はははっ・・ふふ・・」 「・・・なんだ」 「べっ・・べつ、に・・・ははっ・・」 焼き餅にしては随分横暴。独占欲にしては大雑把すぎる。 けど、少しだけ嬉しく感じる自分もいて、僕は自嘲気味に笑った。 「・・・随分楽しそうだな」 「え?・・・う、あ・・っ」 いきなりぐ、と腰を突きあげられて、裏返った声が漏れる。 機嫌を損ねたらしいブチャラティが、不愉快そうに顔を歪めて僕を見つめる。 当たり前のように、その間も腰の動きは止まらないから、僕の口からは甲高い嬌声が上がり続けている。 「嘘は吐く、俺のことを笑う・・・まだ分からない悪い子には、もっとお仕置きが必要みたいだな?」 にたり。悪魔の笑み。 いつもだったらそれこそ笑ってしまうような陳腐な言葉も、今の僕には笑う余裕すらなかった。 「あああっ!肩・・・真っ赤じゃないですか!どうしてくれるんですか!?」 意識を失っていた僕が目を覚まして、ブチャラティの部屋の姿見に映る自分の姿を見て絶叫。 ・・・叫びたくもなる。これは酷い。 肩と胸元、首筋は痕だけじゃなく歯型もくっきりついていて、そこだけ色が変わってしまっている。 少しくらいなら何とかして誤魔化せるかと思っていたが、ここまでになったらもう無理だと僕は落胆した。 それにしても、意識が朦朧としている間に、なんてことをしてくれたんだこの人は・・・。 隣で寝そべっているブチャラティを恨みがましくじとりと睨むと、何故かふふんと得意げに微笑まれた。 僕が怪訝に思って眉を潜めると、ブチャラティは僕をぎゅうと思いきり抱きしめた。 「・・・なんなんですか。本当に、今日は」 「・・・別に。なんでもないさ」 この人は、大人なのか子供なのかわからない。 普段は僕らのリーダーとして本当に尊敬できる凄い人なのに、二人きりになると、たまにこうやって訳の分からないことをする。 それでも僕を子供扱いするのに、こうやって抱きついたりして甘えてきたりもする。 ・・・わけがわからない、けれど。 とりあえず、愛されているのは間違いなさそうだから、今日は疲れたしこのまま寝てしまおう。 そう思って瞼を閉じたけれど、あ、と思いだしてもう一度目を開ける。 「・・・服、どうするんですか。いつものは着れませんよ」 誰かさんのせいで、をわざとゆっくりと、嫌みっぽく言うと、ブチャラティはクローゼットの方を指差した。 「あれでいいだろ」 指さされた先にあったのは、僕が着るには大き過ぎる、ブチャラティのYシャツだった。 ++++ 「よくねーよ!!」とか自分でも心で叫びながら書きました。 ブチャラティがわけわからない人すぎる・・・。 友達のちま子の誕生日に、ということで(3か月遅れくらいで)押し付けたブツ。申し訳ない。 しかし彼女はもっと、くちではいやがっててもからだはすなおだぜー、みたいな奴の方が好みなようで。 私エロは甘いのしか書けないんです(′・ω・`) 今度フーゴ受でgoukanでも書いてリベンジしようかと思ってます。あくまで思ってます。 *BackNext# |