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だって君が好きだもの (ナラフ)

コツ、コツ。
ソファに腰掛け本を読んでいると、背後から足音が聞こえてくる。
僕が気にもせずそのまま本を読み続けていると、その足音の主は回り込み、僕の隣にやってきた。
テーブルにそっと、二つコーヒーを置いて僕の隣に腰掛ける。

「砂糖はひとつでいいんだよな?」

ナランチャが僕の顔を覗き込み、小首を傾げながら尋ねてくる。
僕は仕方なく顔を上げ、そうですよ、と言ってコーヒーを口に含む。
ちら、と隣を見ると、ナランチャが不安そうな、それでいてどこか期待を込めたような目で僕を見ていた。
それはまるで、投げられたボールをとってきて、主人に褒めてもらうのを待っている犬のようだ。

「・・・おいしいですよ」

僕はそのおかしさに少しだけ笑い、味の感想を告げる。
するとナランチャはぱあ、と音がしそうなほど目を開き、顔を綻ばせた。
あるはずもないのに、僕にはぶんぶんと振られているしっぽが見えた気がした。
まるで全身で嬉しいことを表すようなそれに、僕はまたかすかに笑う。

「・・・なんだよフーゴ。何笑ってんだよーっ」

ナランチャは僕が笑っていることに対して、少し不機嫌そうな顔になる。
僕はまたそれに苦笑を浮かべて、ナランチャの頭をぽんぽんと撫でた。
ナランチャはそれにまた顔をむっと歪めたが、俯いて大人しくなる。
僕がまたぽん、と頭を撫で、ナランチャから手を離した。
コーヒーをテーブルに置き、再び本を開く。
すると、ナランチャが僕との距離をつめ(つまり密着)、僕に凭れかかってきた。
顔は俯いているせいで見えないけれど、頬がかすかに赤い気がした。

「・・・ナランチャ?」

あの、本が読めないんですけど。
なんて僕が言うと、ナランチャは顔をあげて僕と視線を合わせた。
ナランチャの顔はやはり赤くて、目は少し潤んでいる。
僕がきょとんとしていると、

「・・・フーゴ」

熱を含んだ、甘えるような声でナランチャが僕を呼んだ。
僕は、もしかして、とひとつの可能性を考える。

「・・なんですか?」

僕の質問に、ナランチャはうー、と唸ってまたずるずると俯く。
耳まで赤くなっているのを見ると、どうやら僕の思いついた可能性は、外れていないらしい。

「・・・したいんですか?」

ナランチャがぴく、と反応する。
暫く固まっていたナランチャが、ゆっくりコク、と頷いた。
僕ははぁ、と大きなため息を吐く。

「じゃぁ、ベッドに行きますよ。流石にソファで、なんて、嫌ですからね」

ぱたん、と本を閉じる。
ナランチャの手を引いて、寝室に向かった。













どさ、とベッドに押し倒される。
見上げたナランチャの顔は、眉根が寄せられていて、何故か少し泣きそうだった。

「ナランチャ、大丈夫ですか?」

「な・・何がだよ・・」

ナランチャが少し上擦った声をあげる。

「なんだか、切羽詰まってませんか?どうか、したんですか?」

「な、なんでもねーよっ」

わたわたと慌てるナランチャ。やっぱり、どう見ても焦っているようにしか見えない。
でも、何でもないと強がるのに、理由を追求するのも面倒で、

「そうですか」

と言って、上半身を少し起こし、ナランチャに軽く口付けた。

「・・・え、あ・・・ふ、フーゴ!?」

「なんです?」

顔を真っ赤にして焦りまくるナランチャが、なんだか面白くて。
僕はにや、と唇を歪め、今度は深く口付けた。

「・・・ん、・・・っ」

「・・・は、ふ・・・ん・・」

体を起こしているのが辛くて、ナランチャの首に手を回し、ゆっくり引き倒した。
苦しくなったのかぷは、とナランチャが口を離し、泣きそうな顔で僕を見つめた。
僕はそれにふふ、と笑って、

「まだ、足りませんか?」

と言って、自分の唇を人差し指でなぞる。
ナランチャは眉間に皺を寄せ、勢いよく僕に口付けた。
ナランチャはキスがヘタで、歯は当たるし鼻で息をするのが苦手なのか、すぐに口を離す。
今日もやっぱり(当たり前だけど)上達しているなんてことはなく、ナランチャの歯と僕の歯ががちがちと当たって痛い。
でも、ナランチャは互いの舌を絡ませ、口内をくすぐってくる。
それに僕は、少し声を漏らす。

「・・・っ、ん・・・は、・・・ふ、ぅ・・」

ナランチャは少し口を離すと、今度は角度を変えて口付けてきた。
僕はナランチャに手を伸ばし、服を脱がせようと手をかける。
だけどナランチャの服は捲りあげないと脱げなくて、どうにもうまくいかない。
そんな僕を見ていたナランチャが、僕の服に手をかける。
たどたどしい手つきで、ボタンを外す。
元々露出の高いこの服は更に脱がせやすく、ナランチャは前を肌蹴させると鎖骨の辺りに痕をつけていった。

「・・・っ、あ・・・・んっ」

強く吸われる度に、目に少し涙が浮かぶ。
明日からは中にYシャツを着ないといけないな、なんて思いながら、ナランチャが大量に痕をつけるのを咎めなかった。
胸元が真っ赤になった頃に、ナランチャが顔をあげた。

「う、・・・」

と声を詰まらせ、何故かばつの悪そうな顔で僕を見ている。

「・・・?」

どうかしたのかと思い僕がナランチャを見つめていると、ナランチャの顔がじわじわと赤くなっていく。

「・・・う、・・あ・・・」

「ナランチャ?」

「っ!?」

僕が声をかけると、ナランチャはびく、と体を震わせた。
相変わらず泣きそうな顔で、僕を見つめる。

「・・・どうかしたんですか?」

どうにも様子がおかしいナランチャを訝しげに見つめる。

「・・・フー、ゴ」

やけに熱の籠った声で、僕を呼ぶ。
それが妙にかわいくて、僕はにやりと笑みを零した。

「どうしたんです?」

ナランチャは俯いて、何の反応も見せない。
僕は少し困ったような顔で、小さくため息をついた。

「何をしたいんです?言えたら、好きにしていいですよ」

その言葉に反応したのか、ナランチャが恐る恐る、といった様子で顔をあげる。
僕は体を起こし、ナランチャの肩に口付けて、そのまま強く吸った。

「っ、!?・・・フー、・・ゴ?」

目を見開いて、ナランチャが驚いているのが見なくてもわかる。
僕はそのままふたつ、みっつと痕を増やしながら、ナランチャを見もせずに言った。

「・・早くしないと、いつもの服が着られなくなりますよ」

「!?あ、・・わかっ、た・・・わかったよ!」

泣きそうな顔で僕を軽く睨みながら、ナランチャが叫ぶように言った。
僕はやっと顔をあげて、ふふ、と笑った。

「じゃあ、どうぞ。何を、したいんです?」

今度は親指で、ナランチャの唇をなぞる。
ナランチャの表情が強張るのが、至近距離でよくわかった。
ごく、とナランチャの喉が鳴る。

「あ・・・も、我慢・・できない・・・ん、だよ・・っ」

「・・・我慢できないって、」

僕がきょとんとして考えを巡らせていると、ナランチャが僕のズボンを下着ごと乱暴に取り去った。

「ちょ・・っ」

僕が驚いていると、ナランチャは僕の口に指を突っ込んだ。

「・・・っ、か、は・・・むっ、う・・」

乱暴に入れられた指に、僕は少し噎せる。
ナランチャは相変わらず泣きそうであるが、やけにギラギラとした目で僕を見ていた。
そして、

「舐めて」

と、口調は柔らかいのに高圧的に、僕に指を舐めることを強要する。
僕は仕方なく、ナランチャの指にできるだけ唾液を絡ませるように、丁寧に舐めた。
ナランチャは指を抜くと、僕に口付けた。
へたくそなそれは、位置が少しずれて唇の端に当たったけれど、ナランチャはそれを気にする余裕もないようで。
僕の唾液で濡れた指を、ゆっくりだけど無理矢理入れてくる。

「・・・い、っ・・・は、ぁっ・・・痛・・」

本来入れる所ではない場所に無理矢理入ってくるそれは、僕に苦痛を与える。
いつもならもう少し丁寧にされるその行為も、今日はやけに乱暴だ。

「・・・っ、あ・・ナラ、ンチャ・・ッ・・・も、少し左・・・」

あまりに痛くて、僕は自分のいい場所を教える。
ナランチャは、一応僕の言うことに耳を貸す気はあるらしく、指を左に動かした。

「・・んっ・・・あ、・・・は、ふ・・・」

何度もそこを刺激され、他の感覚が強くなり痛みが少し和らぐ。

「ひ・・・あっ・・・・・ん、・・・、え?」

やっと、少し慣れてきたと思ったら、指を抜かれた。
何がなんだかわからなくて、涙で霞む目でナランチャを見る。

「・・・・ナラ、あっ・・・いッ――――――」

下半身に、裂けるんじゃないかというほど鋭い痛みが走る。
ぼろ、と目尻に溜まっていた涙が零れた。

「は、あ・・・い、痛、あ・・・ナラ、あ、いた、いっ・・・!」

ぼろぼろ涙を零しながら、痛みを訴える。
でもナランチャは、まるで僕の声が聞こえていないかのように一心不乱に腰を動かす。
僕はナランチャの肩に噛みつき、痛みに耐えた。

「ふ、ぐ・・・んぁ・・・は、んんっ」

くぐもった声が口から漏れ、ナランチャが動く度に噛む力は強くなる。
でもナランチャはまったく気にする様子もなく、ただ律動を繰り返す。

「ナラ、は・・・あ、ナランチャ・・・っ、い、・・」

「・・・・っ、は、フー、ゴ・・・ッ」

ナランチャが僕の名前を呼び、僕の中で果てた。













「・・・ごめん」

ナランチャが、半べそをかきながら僕に謝ってきたのは、それから2回、ナランチャが達してからだった。
その間僕は痛みに耐えて、最後3回目に、漸くイくことができた。
僕はじとっとナランチャを睨む。

「・・・それで、どういうことなんですか」

「・・・うー・・」

ナランチャが俯いて言い淀む。
僕はナランチャの顎を掴み、無理矢理視線を合わせた。

「・・・っ」

「で?」

ぎろ、とナランチャを睨むと、観念したようでぽつりぽつりと話し始めた。

「・・・ミスタが、」

「ミスタ?」

思わぬ人物の名前が出てきて、僕は一瞬呆ける。
けど、すぐに眉間に皺を寄せ、

「ミスタが、どうしたんです?」

続きを促した。

「・・・その、ここに来る前に・・AVが、手に入ったから・・一緒に見ようとかって・・・」

涙声で、涙目で、むしろ泣かない方がおかしいような顔で、ナランチャは説明をする。
言い辛そうに、ぽそぽそと零される言葉は聞き取り辛かったが、つまりこういうことだ。
僕のところに来る前に、ミスタがAVを持ってやってきた。どうにも、珍しいものが手に入ったから一緒に見ようとしたらしい。
何でそこでナランチャのところに行くのかは謎だが、他のメンバーに言っても鼻で笑われるだけだとミスタもわかっていたんだろう。
そして、断ろうとするナランチャの言葉も聞かず、ミスタはナランチャにそれを無理矢理見せた。
それで、ナランチャは逃げ出して、僕のところに来た。
だけどナランチャも男で、AV見てまったく反応しないわけがなく、コーヒーを淹れていても全く落ち着く気配のないそれに困って、つまり、

「・・・ここに来る前にAVを見せられたから、余裕がなかったと?」

「・・・」

ナランチャは気まずそうに黙り込み、俯いて、こく、と小さく頷いた。
なんだそれ、と憤慨しそうになったけれど、目の前で小さくなっているナランチャが少し可哀相に思えたので、怒るのはなしにしてやる。
代わりにミスタにどんな仕返しをしてやろうかと頭で考えながら、僕は少しナランチャを苛めた。

「・・・そういえば」

びく、とナランチャが大げさに反応する。
それが面白くて、僕は笑いそうになるのを堪える。

「何をしたいか、言ってないですよね」

「え・・・あ・・」

「何をしたいか言ったら、好きにしていいって言ったんですけど」

僕が拗ねたような顔で言うと、とうとうナランチャの目から涙が零れた。

「・・・ご、めん・・フーゴぉ・・・」

泣きわめくまではいかないものの、ぼろぼろと涙を零しながら謝るナランチャに、僕はふう、とため息を吐いて、

「怒ってないですから、泣かないでください」

苦笑を浮かべて涙を舐め取り、目尻にキスを落とした。

「っ、!?」

「反省してるみたいですから、許してあげますよ」

僕がそう言うと、ナランチャは泣きやむどころか更にぼろぼろ涙を零し、

「ごめんなぁフーゴ!!」

と叫んで、僕に抱きついてきた。
僕はナランチャの背中を撫でながら、はは、と笑った。
とりあえず、明日ミスタの銃弾を4つだけ残して捨てようと、心に決めた。












++++
こんなナラフは嫌だ。


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