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しろの小説(短編倉庫)
【土銀】柳の下にどじょうは沢山いる(後日談)

「ん…」

気持ちいい。
額のひやりとした感触に目をゆっくりと開けると見慣れた万事屋の天井が視界に入った。
えっと…俺、一体何してたんだっけ?
天井を見つめながらぼんやりと考えているとこれまたよく見覚えのある顔が覗き込むようにして声をかけてきた。

「気が付いたか」

「…なんでお前がここにいんの」

「なんでって聞きたいのはこっちなんだがな」

土方は俺の質問に質問で答えるとそのまま言葉を続ける。

「近藤さんが休みからこっち、また行方がわからねェからどうせまたあの女の所にでも行ってるんだろうと踏んで足を運んでみたら入口でテメーが倒れてたんだよ」

あー…、ヅラから解き放たれたあのウイルスから逃げる途中で倒れたのか俺。…つーかよく逃げ切れたなオイ。

「なんか知らねェ外人もいたが…」

「…っ!!そうだっ!新八と神楽は!?…っく」

ハッとして起き上がるも思うように体が動かず、倒れそうになったところを土方に抱き留められた。

「いきなり起き上がんじゃねぇよ。まだ熱下がってねぇんだ、おとなしく横になってろ。……チャイナ達は見かけなかったが同じ顔の外人が沢山いたな。なんだアレは?六つ子かなにかか?」

…どうやらあの中で助かったのは俺だけらしい。
まぁ、ヅラがあの姿でピンピンしていたぐれぇだ。死にはしねぇよな。それにしても…

「ホントにオメーんトコのゴリラは馬鹿な。せっかくみんな治りかけてたのに事態をややこしくしやがるし、ストーカーだし、ゴリラだし」

「は?意味が分からねぇ。近藤さんが一体何したってんだ?」

「色々だ色々。……テメーは不在のゴリラの分もやらなきゃいけねー仕事とかあるんじゃねぇの?さっさと屯所にでも戻れや」

俺はそう言うと寝返りをうち、土方に背を向けた。
風邪ぐらい一人でどうにでも出来るさ。

「まだこんなに熱があるじゃねぇか。こんな状態で自分の飯もろくに作れるとは思えねぇけどな」

土方は俺の肩を掴み、ぐいっと振り向かせると額同士をコツンと重ねて言った。

「どうせテメーのことだ、このまま一緒にいたら俺にまで感染(うつ)っちまうとか思って帰らせようとしてんだろうが見え見えなんだよ。……雪が降る中、お前が倒れてるのを見つけて俺がどんな気持ちになったか…あまり心配かけさせんじゃねぇよ」

真っすぐ見つめてそんなこっぱずかしいことを言ってくるものだから、俺は思わずその視線から目を逸らした。

「バッ、別にテメーに俺の風邪が感染ろうが知ったこっちゃねぇっつーの。自惚れんなバカ」

「…感染ってもいいなら問題はねぇな」

何をどう解釈したらそんな結論に辿り着くのか。
逸らした視線を戻すと土方はニヤリと楽しそうな笑みをこぼしていた。
そして次の瞬間。

「…は?…ちょ……んんっ…んぅ…ぁ……ちょっ…、ちょっと待てって!!」

顔が近いと思ったらいきなり口付けてきた土方に流されそうになるのを堪え、俺は熱でなかなか思うように動かない体をなんとか動かし土方を押し退けた。

「いきなり何すんだっ!?風邪感染るだろーが!!」

「感染ってもいいんだろ?」

「う…」

自分で言った言葉を撤回するのもなんだか癪で俺は言い返すことが出来なかった。

「昔から言うだろ。風邪は人に感染したら治るってよ。とっとと感染してとっとと治せ」

「…ホンットお前バカな。真選組の連中ってみんなバカなのな。ご愁傷様」

ゴリラと同じ事言うのかコイツも。…溜め息が出らぁ。

「うるせぇ。バカって言う方がバカなんだってよ。……それにお前がエロいのが悪い」

熱で上気した表情、汗ばんだ肌、荒くなった息遣い…そういうのが男はそそるんだそうだ。分からないでもないが普通そういうのは女相手に感じるものではないのだろうか。

「おまけにインナーもズボンも着ずに着流しだけたぁ風邪ひいてるにしては薄着すぎねぇか?」

土方はそういうと俺の首元をつつ…と撫でると、そこに顔を埋めてくる。熱に加えてさっきのキスで触られる感覚に敏感になってしまってるせいで感じてしまう自分が忌々しい。

「んっ、…まさかオメー、病人を襲う気じゃねーだろうなぁ?」

「…風邪引いた時は汗を流した方が治りが早いらしいぞ」

「いやいやいや、銀サンいま体力低下中だから!そんな時にヤッたら死んじゃうから!!」

「安心しろ。優しくしてやるよ。…いや、汗かいた方がいいなら激しい方がいいのか?まぁどっちにしろ俺がリードしてやっからよ」

「そういう問題じゃねぇっ!!バカなの?死ぬの?」

「怒鳴ってると余計熱が上がるぞ」

どっちにしろ熱上がって体力無くなるわっ!!…と言い返す前に再度唇を重ねられ深く何度も角度を変えて舌を絡められると快感と酸欠のせいでもう何も考えられなくて俺は無意識に土方の背中へと腕を回していた。

「ん…んんっ…ぁ…土方ぁ…」

「銀時…」

もうこのまま流されてしまってもいいかなぁなんて思ったその時。

「旦那ァ、いますかィ?」

襖を軽く叩く音の後、沖田の声が襖越しに聞こえてきた。

「風邪引いたそうじゃないですか。いま流行ってますからねィ。入り用なものいくつか持ってきたんでリビングにでも置いときまさァ。金の方は土方さん持ちでツケて来たんで心配無用なんで」

沖田がそのまますぐ襖を開けて入ってこないのは正直救いだった。この状態を上手く乗り切れるほど今の俺は思考が働いていなかったからだ。

「…あと土方さん、旦那にあんまり無理させねェでくださいよ。それと奸なことするならちゃんと玄関に鍵かけてからにしてくだせェ」

「総悟…お前いつからそこにいやがったんだ?」

「さぁ…いつからでしょうねィ?じゃあ俺はしばらくリビングでくつろいでいるんで」

最悪だ。どうやら結構前にいたらしい。俺ははだけた着物を着直すと土方を押し退けるように布団を顔のあたりまでかぶった。熱が上がったのか顔がやたら熱い。
土方は俺の上に乗り上げるようにしていた体勢を起こすと、今まで気付かなかったが俺の頭元に置いてあった洗面器の水でタオルをしぼり、俺の額の上に乗せた。…あぁ、俺が目を覚ました冷たい感触はコレだったのか。

「…ちょっと待ってろ。総悟が買ってきたモンでなんか使えるヤツ無いか探してくる」

土方は立ち上がり、襖の方へと歩くと開ける前に立ち止まり口を開いた。

「…悪ィ。熱に浮かされてるお前見てたらなんかたまらなくなってセーブきかなくなっちまった」

そう言うと土方は襖を開けリビングへと消えて行った。
…熱のせいでセーブきかなくなってたのはこっちも一緒だっつーの。
しばらくして土方が持ってきたもの。それは氷嚢と氷枕、そして玉子粥に沢庵だった。

「コレ…お前…」

「テメーがうわごとで言ってたから食いてぇのかと思って作ってみたんだが」

「…マヨぶっかける以外にも料理出来たんだな」

「こんなの料理の内にも入らねーよ。起き上がれるか?無理なら俺が口うつ…」

「お、起きれるっての。手ェ貸せ」

土方の言葉をさえぎると手を伸ばしひっぱってくれと促した。…ったく、なんでそんなセリフがつらつら出てくんだよコノヤロー。
自分で食べようとしたら俺がやるとか言い出して挙げ句吹いて冷ますとか…恥ずかしいヤツ。

「…ん。まぁ、上出来じゃね?」

一口食べて粥の感想をいうとそのまま俺はソレを最後まで平らげた。

「銀時。お前昔からこんなにしょっちゅう風邪引いてたのかよ?」

「しょっちゅうってワケじゃねーよ。まぁ昔から時々は風邪引いてたけどよ。…ガキの頃、そんな時に作ってもらったモンって大人になってからも風邪引くと思い出して無性に口にしたくなるっていうか。作ってくれた人の優しさとかすごい身に染みるのな」

普段は口にしないような話を自ら進んで話するなんて俺自身よく分からないけれど何となくコイツに聞いてほしかった気がする。
…きっと熱のせいだろう。

「大切な人か」

「…あぁ、そうだな……今はもういない人だ」

土方は「そうか」と答えると俺の頭を軽く撫でた。

「飯も平らげたし、治るのも時間の問題だろ。今は何も考えずゆっくり寝ろ」

「…ちょっと何?この手」

土方がごそごそと布団の中へと手を突っ込んできて一体今度は何をする気だ?と思っていたら俺の手を握ってきた。

「安心して眠れるようにその間俺が手ェ繋いでいてやる」

「つくづく恥ずかしいヤローだな」

「早く治してもらわねぇと俺のムラムラもおさまらねぇしな」

「…そっちが本音じゃね?」

「全部本音だ」

「うわ」

「だから早く治せよ」

「ん…」

そういうと土方は触れるだけの優しいキスをして、俺は目を閉じた。



――数日後。
風邪も治って俺の体調はすっかり元通りなわけだが。
風邪引いた俺にアレだけ濃厚なヤツかましたアイツは今頃風邪感染されて唸っている頃だろうか。……見舞いぐらいは行ってやってもいいかな。
団子屋の長椅子に腰掛けて団子を食いながらボーッとそんなことを考えていると。

「よぉ、風邪治ったみてぇだな」

アイツが目の前に立っていた。いつもと変わらない顔で。

「なっ、おまっ、なんで元気なワケ?」

「予防接種のおかげで感染らなかったみたいだな」

ゴリラが非番の翌日にあって、本来なら真選組全員が受ける予定だったものらしい。
…マジでか。

「まぁ俺が風邪引いたらその時はお前に看てもらうつもりだったけどな。…さて、お前の風邪も治った事だし」

「え…」

「オヤジ、コイツの団子代ココに置いとくぜ」

そう言うと土方は団子の皿に代金を挟んで俺の手を引き歩きだした。

「今まで我慢して溜まってた分、きっちりテメーの体で払ってもらうからな。覚悟しろよ、銀時」

「ちょっ、銀サンまだ病み上がりなんですけど〜」

「テメーも溜まってんだろ?」

「なんのことだか」

「すっとぼけるつもりか。思い出させてやろうか?」

「出来るモンならやってみやがれ」

「上等だ」

まぁ見舞いに行こうと思ってた手間も省けたし、コイツのいろんな表情を間近で見るのも久しぶりだからたまには流されるところまで流されてみますか。
そんな事を考えながら俺は繋がれたままの手の温もりを感じていた。


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