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しろの小説(短編倉庫)
【土銀】サプライズは幾つになっても嬉しいモンだ【土誕2009】

5月に入ってすぐのよく晴れた日のこと。
土方が沖田と巡回パトロールで町内を歩いていると、前方にある団子屋の長椅子によく見慣れた男が腰掛けて団子を食べている姿が二人の視界に入った。向こうもこちらに気が付き、団子を食べる手を止めた。
「奇遇だねぇ、こんなトコで会うなんて。何?お前らも団子食べにきたの?」
「お前と一緒にするな。こっちは仕事だ」
座ったままの態勢を崩さずしゃべりかけてくる男に土方はきっぱりと否定の言葉を返す。…が、
「じゃあ俺は一休みしていきやしょうかねィ」
沖田は土方の言葉に反する様に男の隣に腰掛ける。
「オイ総悟、てめーも仕事中中だろうが。叩っ斬られてぇのか?」
「土方さんは二言目には『斬る』とか言い出すから物騒でいけねェや」
眉を寄せながら叱ると沖田は肩を竦めて言うが、お前には言われたくねぇなと土方はさらに苛立ちを募らせ、そんな二人の様子を見て男は「お前ら相変わらずだな」といったような顔をすると、沖田に向かって抜刀寸前な状態の土方にしゃべりかけた。
「土方ぁ、明日ってなんか予定入ってる?」
「…は?なんだよいきなり」
なんの脈絡もなく突然明日の予定を聞かれたことに土方は思わず聞き返した。
「…いや?なんとなく。つか俺が聞いてんのに質問を質問で返すなよバカ。空いてんの?それとも仕事か用事でもあんの?」
「誰がバカだと?上等だ…」
「確か明日は土方さん定時でしたよねィ?」
今にも喧嘩になりそうな二人の会話を遮るように沖田が口を挟む。それは普段、『火に油を注ぐ』どころか『火があったら進んでガソリンを注ぐ』沖田にしてはとてもめずらしいことだった。
「…で、確か翌日は非番でしたかねィ」
土方は何か違和感のようなものを感じながらも少し落ち着きを取り戻し、沖田の言葉に付け足しをする。
「なぜだかよくわからねぇが近藤さんがそうしろって半ば無理矢理にな」
それを聞いて「コイツひょっとして気付いてねぇのか?」と沖田をちらりと見ると沖田は土方に気付かれないように小さく頷いた。
「へぇ〜、そうなんだ。じゃあ明日の夕方。用事あるから家に来いよ」
平然とした表情をしながら男が言うと土方が口を開くよりも早く沖田が土方を煽るようなことを言い出す。
「土方さんが行かないなら代わりに俺が旦那のところ行きましょうかねィ」
「誰も行かねぇなんて言ってねぇだろ!!…俺が行く。仕事が終わったらそっちへ向かう。それでいいな?」
沖田の発言に思わず強く意義を唱えた直後にハッと我に返った土方はごまかすように軽く咳払いをすると男に向かってそう言った。
「あぁ、じゃあ明日。絶対来いよ」
その言葉と共に心地好い風が吹いて男の柔らかい銀色の髪が揺れてキラキラと光る。
男は話が終わると残りの団子を再び食い始め、土方と沖田はパトロールへと戻ったが、立ち去る途中ふと振り返った沖田はその男が普段見せないような笑顔をしていたのに思わず見入ってしまった。そして「いいものを見せてもらいやした」と思う反面、あの笑顔が自分のものにならないことを正直悔しいとも思っていた。



そして当日。
昨日から今日にかけてなぜだかやたら忙しく土方は結局今日が何の日か思い出す余裕すらもてなかった。
攘夷浪士の活動云々でというよりデスクワークや雑用をかなり大量に押しつけられ、おまけに雑用を部下にさせようと思っても全くつかまらなかったのだ。おまけに沖田が率先して面倒事を増やすものだから自分のことに思考を回すヒマもなく、コレは残業確定か?と思ったその時、誰かが土方がいる部屋の襖を開けた。
「おぉ、トシ。今日はもうその辺で切り上げて上がってもいいぞ」
「近藤さん」
最初の予定どおり定時で上がっていいという近藤に土方は「まだかなり仕事が残ってるから」と言おうと顔を上げると近藤は改めてストップをかけた。
「あとは俺と他の奴にやらせるからお前はもう帰れ。コレは局長命令だ」
近藤はそう言うと土方を退けて机に座り腕を捲ると「さぁやるぞ」とやる気満々な姿勢をとり、そして言った。
「お前、今日約束があるんだろ?総悟に聞いたぞ。相手もきっと待ってる。だから行ってこい」
にかっと笑うと近藤は「さぁ行った行った」と土方を部屋から追い出した。



残業で今日は行けないかもしれないと思っていた土方だったが近藤の配慮により、最初の予定どおり土方はあの男の家に向かっていた。
一階の『スナックお登勢』の上の階にある『万事屋銀ちゃん』に辿り着きインターホンを押す。…だが、いくら押しても、しばらく待ってみても誰も出てくる様子は無く、不審に思った土方が玄関の戸に手をかけると鍵がかかっておらずガラガラと簡単に開いた。
「鍵もかけずに留守たぁ不用心じゃねぇか…つか、人を呼び出しといていねェたァどういうつもりだ」
独り言で文句をブツブツと言いながらも「邪魔するぞ」と一応声をかけ土方は家に上がった。部屋の中はシンとしていて誰かが家の中にいるとは到底思えなかった。
仕方無ェ、中で待たせてもらうかと居間の戸を開けるとパンッパンッと勢いのいい音と共に紙テープと紙吹雪が土方向けて飛んできた。
「土方さんおめでとうございます」
「マヨラー、おめでとうネ」
「おめっとさん。土方」
音の正体は新八と神楽が持ってるクラッカーだった。
「な…?」
「何お前、今日が何の日かまだ気付いてなかったのか?」
土方が銀時の方を見ると銀時のテーブルにはごちそうとケーキが並んでいて、ケーキの上に乗ったチョコプレートには「土方たんじょう日おめでとう」と描かれていて、ようやく今日は自分の誕生日だったのかと気付いた。
だからコイツは俺の予定を聞いてきて、近藤さんは俺に「休みを取れ」と言っていたのかとようやく合った辻褄に納得していると
「早く座れよ。みんな腹減ってるんだからよ」
銀時は土方を急かすとケーキを切り分けはじめ、チョコプレートを乗せたケーキを土方に渡した。
「せっかく甘さ控えめに作ったんだ。ちゃんと食えよ?」



時間は経ち、並べられた料理をほとんど平らげた4人はすっかりくつろぎムードになっていた。ケーキも料理も全て銀時のお手製で「鉄人も真っ青だぜ」と自ら言うのもあながち嘘じゃ無かったんだなと土方は感心していた。
「こんなごちそう久しぶりネ。私毎日誕生日でもいいアル」
「神楽ちゃん、毎日誕生日だったら一気に年とっちゃうよ?」
「むぁっ!?それは困るアル。じゃあ代わりに定春と新八が毎日誕生日でいいアル」
「ごちそうは滅多に出ねーからごちそうなんだよ。毎回食えると思ったら大間違いだぞコノヤロー」
3人のやりとりを見ながら「たまにはこんな風に過ごすのもいいな」と思いながら土方はタバコをくゆらせていた。
そろそろ後片付けするかと立ち上がる銀時を見て新八と神楽はアイコンタクトをして頷くと、神楽と新八も立ち上がり、新八は銀時の背中を押し土方の横に座らせ、神楽は土方にこっそり耳打ちをすると二人とも玄関の方に向かい、銀時を驚かせるようなことを言った。
「じゃあ、僕達姉上のところに行くんで後は二人でゆっくりしてください」
「私達がいない間、存分にいちゃつくがいいネ」
「…えっ!?ちょっ、何言って…」
銀時は二人が出ていく背中を追って立ち上がろうとしたが、それは土方にあっさり阻まれてしまった。
「あいつらなりに気を遣って席を外したんだろ」
銀時はため息をひとつ吐きそっぽを向いてしばらく黙ったかと思うと土方にぽつりと言った。
「…今年は誕生日プレゼント用意できなくて悪ィな」
「あぁ、競馬ですったんだったか?テメーが滅多にかけてこない電話してきて迎えに行った時はさすがに驚いたな」
謝る銀時に土方は正面を向いたままタバコを吸い、今回の金欠の原因をつつく。
「あの時は電車賃もなくてよぉ仕方なかったつーか…」
モゴモゴと口籠もる銀時に土方は思わず怒鳴っていた。
「パンツ一丁でうろついて他のヤローに目を付けられたらどうすんだよ!!」
「いや、そんな物好き早々いないと思うんだけど…。モテないし」
「テメーは自覚無さすぎだ!!…他の奴にあんまり肌見せんじゃねぇよ…」
土方はタバコを灰皿に押しつけると銀時の肩を掴んで懇願にも似た声を上げる。
「土方…」
そんな土方を見て銀時が何かを言おうとしたその時、土方は掴んでいた手を背中へと回し銀時を力強く抱き締めた。しばらくして土方は腕の力を弱め銀時と見つめあうと唇を重ねた。何度も角度を変え、口内を貪るように舌を絡めあい、手は互いの体をまさぐるように動く。その激しいキスに銀時の口の端からは飲み込めきれなくなった唾液がこぼれ伝った。
「んっ……はぁ…んんっ、…ふっ…ぁ」
声が、表情が、妖艶な姿が、銀時の全てが土方を興奮させる。
キスから解放された銀時の乱れた息遣いや上気した顔を見て土方が理性を保っていられるハズもなく、押し倒すと再び唇を重ね、銀時のインナーやズボンに手をかけ肌を露にすると、肌に触れるか触れないかの力でそっと撫で回し、首や胸、太腿へと舌を這わせ強く吸い付き愛の証をいくつも刻み付け、銀時はその行為に思わず甘い声を上げた。
「ん……ぁ…んん、ちょ、どこに付けてんだテメー」
こんなところにキスマーク付けたら目立つじゃねーかと文句を言う銀時を見て土方はククッと笑って言った。
「他の奴の前でそう簡単に肌晒さねぇようにしねーとと思ってよ。……お前は俺だけのモンだ、銀時」
こんな至近距離でそんなこと言うなんて卑怯だ、と思いながら銀時はぷいと横を向く。
「……バカ」
そう言った銀時の顔が耳まで紅潮していくのに気付いた土方は続けて耳元で囁いた。
「愛してるぜ。銀時」
「っ…!!」
直球ストレートな愛の言葉に言葉を失った銀時はやっとのことで言葉を紡ぎだしたが、
「うるさいっ!!」
天の邪鬼な銀時が素直に応えられるハズもなく、ただただ動揺を抑えこむのに必死で、それが手に取るようにわかりやすい反応を返す銀時を見て、「素直じゃねぇなぁ」と思いつつもやはりこの男が「愛おしい」と思ったのも事実で。
「機嫌直せよ銀時」
「……」
すっかりへそを曲げてしまったらしい銀時は何も応えずただ黙っていて土方はちょっとからかい過ぎたか?と銀時の機嫌をとろうと試みる。
「明日何か甘いモンおごってやるから」
「…いい。お前の誕生日だから大目に見てやるよ」
銀時は俯きながらそう言うと土方の首へ手を回し、今度は銀時の方から触れるだけのキスをした。
「続き…やるんだろ?」
「上等だ」
銀時の挑発に土方は応え、こうして二人の夜は更けていくのであった。


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