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しろの小説(短編)
【高銀】梅霖【攘夷時代】
6月も後半に入り数日経ったある日のこと。
部屋に入ると銀時が一人、難しい顔をして座っていた。

「むー」

「どうした?」

「あ、高杉」

声を掛けられやっと気付いた銀時は顔だけを高杉の方へ向ける。

「いや、なんでもねぇよ。ただ、雨が降りそうだなって思ってな」

「雲行き怪しいからな」

窓の外に目をやると空はどんよりと暗く、いつ雨が降り出してもおかしくない。

「それもあるけどよォ…」

そこまで言うと再び難しい顔をして言葉を切った銀時の横に高杉は腰を下ろし、じっと見つめたあと、「あぁ」と何かに気付く。

「銀時ィ。お前の髪、湿気含んでいつも以上にフワフワ跳ねてんじゃねーか」

胡座をかき頬杖をついてニヤニヤと笑いながら言うソレにキレた銀時は自分の頭をぐしゃぐしゃと掻き毟ると睨み付けた。

「あーっ!!てめぇぇぇ!!人が気にしてることをとうとう言いやがったなコノヤロー!!」

途中で自分のやったことに気付き、はたと動きを止めると手櫛で必死にぴょんぴょんと跳ねまくる髪を落ち着かせようと試みる。

「ちくしょー。梅雨なんて嫌ぇだ。髪はこんなだし、まんじゅうにカビ生えっし、洗濯物なかなか乾かねぇしで、ろくなことねェ」

そして恨めしそうな視線を高杉に送った。

「いいよなぁ、さらっさらストレートな奴はよォ。俺もストレートだったら湿気に困る事も減るし、今頃モッテモテなのによー」

溜め息を吐きながら項垂れる姿を見て、高杉は銀時を後ろから抱き締めていた――。

「てめぇはそのままでいい」

『自分はモテない』なんて嘆くが高杉は銀時が老若男女問わず惹きつけて止まないことを知っている。
だが、そんなことを銀時が知る必要はない――

「いいワケあるかよ。他人事だと思いやがって」

「他人だなんて思ってねぇよ」

「高す……」

後ろから抱き締める高杉と振り返る銀時の視線が交わる。
近付く高杉の顔が名を呼ぼうとする銀時の言葉を遮った。

「……はッ…ァ……ん…、ふ…」

角度を何度も変えながら重なる唇。
求め合い深く絡み合う口付けは二人の間で水音を響かせ、くちゅりと音を立てて名残惜しそうに離れる。
飲み込みきれなくて銀時の顎へと滴った唾液を高杉は親指の腹でグイと拭うと抱き寄せフワフワとうねる銀髪に顔を埋めた。

「いいじゃねぇか。俺は好きだぜ?」

「……オメーに好かれても別に嬉しくねェし」

銀髪を一房指に絡めてクルクルと弄び、頭を撫でる高杉に銀時はぷいとそっぽを向く。
言葉とは裏腹に耳まで赤くなっているのを見て高杉は笑い、腕の中にいる銀色を強く抱き締めた。


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