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しろの小説(短編)
【高銀】記憶【歌詞がベース】※E/L/Tの『キ/ヲ/ク』より

――ひとつの想いが俺の胸の奥にはあって。
色褪せてしまった写真の中ではアイツと俺が笑っていた。
「出会わなけりゃよかったな」なんて冗談でもどうしてそんなことを言ってしまったのか。
アイツが傷付く顔を見たかったわけじゃねェのに。
俺はお前の優しさに気付かねぇフリをして甘えてしまっていたのかもしれねェ。
ソレはずっとお前が傍にいるものだと過信していたせいだ。
記憶の中のお前は薄紅色の花びらが雪のように舞い散る中に佇んでいて、それがひどく儚く見えた。
あの時と同じ風が今も吹いていて俺の頬を掠める。
俺はまだ上手に笑うことなど出来ずにいた。


時間なんてものが経つのも忘れるほど、互いの気持ちを確かめるように俺達は幾度となく心と体を重ねた。
あの頃はそれがただ嬉しかった。
躊躇いも無く、「好きだ」なんて言えてしまうアイツが俺は羨ましかったのかもしれねぇ。
『好き』だという気持ちに理由なんて何も要らなかったのに。
ずっと一緒にいられるものだと、そんなささやかな願いぐらいは叶うものだと信じていたかった。
抱きしめた感触を、この手に残るぬくもりを俺は思い出には出来なかった。


伝えたい想いがあった。
それは本当はすごく簡単なことだった。
失って初めてかけがえのないものだったのだと気付かされたんだ。
隣を見れば、いつでもそこにはお前がいるような気がして。
桜の花が舞い散る中、今日もあの頃と同じ風が吹いていた。

記憶の中、俺はお前をずっと探し続けていた――


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