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冬の日、馬鹿ふたり




「シカマル」

「ん」

「でてきてよ」

「やだ」



外は寒い。なんだこれ、雪とかありえねーだろ真面目に。
そんな俺に外を元気に動き回る体力はなかった。正直、雪と凍ったような空気が吹き荒れる中で俺ん家まで徒歩で遊びにきたコイツの気が知れない。
流石にキバには、寒空の下俺に会うために走ってきたコイツより玄関の戸を開けることで外気が逃げることを心配して居留守使おうとした…なんて言えないけど。
だって寒いもん。寒いのは嫌いだわオレ。
出来るものならもう冬眠したい。あー…馬鹿なこと言ってる自覚は多いにあるけど、とりあえず今近くにオレより馬鹿がいるから気にしないことにする。



「部屋暖かいって、さっき付けた暖房効いてきたから」

「布団の方が温い」

「…ぬくいって…じじいかよ」


心持ちでも暖かい方が好きだから、とキバに告げてお茶だけ出して布団に潜り込んだけど、コイツはなんだか不満の様。まあでもキバだからいいか、と俺の脳は即座に対応した。ので、今も俺は埋まったままだ。



ボスン、とオレの上に何かが飛び掛かってきた。正式に言うとオレと布団の上に、だ。
顔まですっぽりと布団に潜り込んでるから少し息苦しい。それなのに乗っかられたら肺潰れる。窒息するっつーのバカ犬!


「…重い」

「じゃあ出てこいよ」

「やだ」


布団から顔だけ出してキバを睨んだら、ニッと笑い返してきた。意味分かんねぇ。


「んー…じゃあ出てこなくていいから、入れてよ」

「狭いじゃねーか」

「いーじゃん」


なあなぁ、とオレの上に跨がっておねだりしてくるキバ。やだよ暑い、と言おうとして気づいた。暑い方がいいんだった、今は。仕方ないな、口が裂けても言わねぇが、オレはキバの目ェキラキラさせてねだってくる顔に弱い、なんかバカ可愛い、バカワイイ。なんだそれ。



「……どーぞ」

「…!どーもっ」


もぞもぞと動いて奥にズレた。一瞬布団がガバッとめくられて、

(あ、寒い……)

まあそう思ったのはほんの一瞬。隣にいるキバがオレに密着してくるので寒くない、寧ろ暑い。

でも別に、嫌じゃない。




「暖かいな」

「うん」

「シカマルもオレみたいにぎゅーってしてよ」

「……………」

「えっシカトは酷くない!?」


ねえねえ、とキバの声がかなり耳に響く。さっきはなあなあだったな、今度はねえねえ、か…
仕様もないことを考えても行き着く先は同じで、五月蝿いと言ってキバを一蹴にしてやった。


「なんだよ…いいじゃんシカちゃんの意地悪ぅ………」

キバの拗ねた様な声は勿論耳に入ってたけど、反応を見たくてそっぽを向いた。 そしたら、離れていく体温。オレに伸びていた手が大人しく引いていった。オレの視界には壁しかなくて、首だけを回してキバを見た。キバも向こうを向いていて。


「………………」

バカなオレ。別にあと10分もすればいつものキバに戻ってまた擦り寄ってくる、っていうのは分かってるんだけどどうしても体が先に動く。オレの許可なくキバに向きを合わせた自分の体が、許可なくキバを後ろから抱きしめた。


「…!」

一瞬跳ねたキバの体。顔を見なくても分かる、コイツ笑ってる、多分。
キバが体をこっちに向かせようと動いたけど、ぎゅっと抱き着いてやってそれを阻止した。


「ありがとシカちゃん」

「…別に、したかっただけ」

「照れてる?」

「うっせーよ」

はは、と笑ったキバの声が耳に響いてどうしようも無く愛しくなってきた。愛しいなんてオレのガラじゃねぇ、んだけど。
キバから手を離すと案の定寝返ってオレを抱きしめてきた。さっきより強く抱きすくめられて、オレはその腕の中に収まるかたちに。まぁいいか、今だけは。

「今お前の顔、緩んでてどーしようもなく不細工だけど許してやるよ」

「それ禁句!……まあシカマルが甘えてきてくれてんだから顔が緩むのは当たり前じゃん」


生意気。
そんな親バカならぬ俺バカのコイツ。でもキバの腕の中で、ああ俺もコイツバカなのかと気づいてしまった。


「キバ」



名前を呼んだら間の抜けた声で返事がきた。今日だけは馬鹿でいいや、と思って無理矢理キバを俺から引きはがし、驚いて半開きになったその唇に噛み付いてやった。




















シカマル馬鹿なキバと隠れキバ馬鹿のシカマル。
お粗末様です!

2010/1/6

  


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