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Sweet Smel (銀桂 VD)



テレビ番組が午前零時の時報を告げると銀時はソファーから立ち上がった


大好物のチョコが貰えるかもしれないとドキドキソワソワした一日が終わる

思いもかけないところから貰えたチョコは新ハと連名とはいえ四個になった

まぁ、一つ食すに堪えないものと、一つ形のないものはあったが‥‥‥ふっと笑みを浮かべる

さておき、肝心のヤツが来ない

数日前からしつこくねだってやったのに‥‥‥だ

ちょっとヅラくんバレンタイン終わっちまったんですけど

面倒そうに頭を掻きながら廊下を歩き玄関へと向かう

心配ィ?そんなんしてませんよただね、約束忘れてるんなら思い出させてやらなきゃダメでしょ?ヅラくんが嘘つきになっちまうんだから

一方的に取り付けた約束というのは棚に上げ銀時は心の中でうそぶく、ブーツを穿き外出用の半纏を羽織ると引き戸を開けた。一年で最も冷える二月の空気に思わず身がすくむ

「うわ、さみぃ‥‥‥」

なんだってこんな寒い夜に男なんかを訪ねて行かなきゃならねーんだ
苛々としながらも一歩外へと踏み出した

カタン

音のするほうをみれば先ほど新八が不振に思っていたポリバケツがあった

なになになになにっ!!やっぱ、コレ前はなかったよね?

固まっているとポリバケツの後ろから真っ黒な影が覗く

「えっ‥‥あ‥‥こっコナンの犯人?」

「‥‥コナンの犯人じゃない桂だ!!」

と、立ち上がったシルエットそれは確かに桂だった

「どしたの‥‥ヅラくん‥‥‥」

問えば黒の中に唯一白く目立つ目に涙を溜めながらうっくと声を詰まらせた




「あーあ、見事にコーティングされちまって‥‥」

それはなに?銀さんに食べて欲しいってことなの?ヅラくん。茶化すように訊けば、むぅと口を小さなへの字にし、違うのだ玄関まできたはよいが、こなん殿に推理される犯人のような影に驚いて思わずそこにあったポリバケツに隠れたのだ。そしたらこうなった‥‥と言う

「全身甘ったるくて気持ち悪い、銀時」

しょうがねぇなぁ、銀時は桂を引きずり風呂場へと向かう。ぐすんと鼻をすすりながらも桂はおとなしく連れられていった

まだ温かい風呂の残り湯をかけながら固まったチョコを溶かしてやる。桂の髪からぱたぱたと水滴が落ちる。

湯気と共に甘い香りが立ち上る。銀時の好きな香り。

湯をかけるたび茶色の部分は溶けていき、桂の白い肌、艶やかな黒髪が露になっていく

「もったいねぇ‥‥」

髪から首元あたりまで綺麗になった桂の項に顔を埋める。「銀時?」と桂が振り返る

「これ‥‥好き、あめぇ匂い」

まだ冷たい桂の身体を抱きしめると腕に、ぬると解けたチョコがまとわり付く

「つめてぇ、冷え切っちまってるじゃねぇか」

ん‥‥とうなだれる桂に再び湯をかけ続ける。溶かされて流れて排水溝に吸い込まれていく茶色い液体。

そのたびに甘い香りが立ち上り風呂に広がっていく。

じわりと胸に甘く染み渡っていく。


「銀時ぃ、今度は着物が張り付いて気持ち悪い」

すっかり綺麗になったとはいえずぶ濡れである。無理もない。

湯を吸った衣はしっとりと肌にまとわり付いていた

「‥‥甘えたこと言ってんじゃねーよ!きもちわりぃな!!」

まるで挑発だ。そんな姿。だが、そんなに天然な誘いに乗るのは癪だ。

「銀さんだって濡れて気持ち悪いの!追い炊きしてやるからさっさと脱ぐ!風呂入ってあったまる!!」

脱いだものを洗濯機に突っ込みながらそう言う

「んで、出たらそのコーティングされてる箱に入ってんの食ってやるから‥‥」

と、脱衣所にある茶色い塊を指差した。

そうか‥‥と、桂がほのかに笑みを浮かべて頷く。

悔しくも綺麗だと思わずにはいられない。

匂いで胸いっぱいなだけだ‥‥と、銀時は自分に言い聞かせた。




fin




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