話
Little party (銀桂 神楽視点)
音も無く開かれた襖の気配に反応して神楽は寝床から飛び起きた。
和室からするりと出てきた人影に飛びつき小声で囁く。
「ヅラ。まだ帰っちゃ駄目ネ」
驚いて瞬きをする。
まったく世話の焼ける大人二人だと神楽は心の中でため息をついた。
桂がしばしば泊まっていっているようだとは勘のいい神楽は薄々気がついていた。酒に酔って揃って帰ってくることもあったし、ときには二人で話しこんでいるうちに神楽は寝てしまい、なんとなく桂はいるのだろうと夢心地に思ってたりしていた。しかし翌朝その姿を見たためしがない。
自分が寝坊なせいかと思い、銀時より早く起きてみることもしばしばあったが、やはりいなかったのだ。
一度銀時に問うてみたことがあった。
歯を磨いていた手を止めしばらくの沈黙の後「しらねー」とはぐらかされた。が、神楽は思った。
もしかして銀時も知らないうちに桂は帰ってしまうのではないか、と。
二人の間に流れる一種独特な雰囲気。それはまだ自分にははっきりとはよくわからない。
だが、桂が朝一番に、今日、いてくれれば銀時は喜ぶのではないかと思った。
そして銀時が喜べば桂もきっと嬉しいと、なぜだか確信があった。
「さぁヅラこれを持つアル」
手渡されたそれは銀色に輝く小さな円錐‥‥クラッカーだった。桂は目を丸くする。
「マダオに景気良く一発くれてやるアル!!」
良く見れば神楽の目の下はうっすらと黒ずんで眠気と戦っていた痕があった。
この子はこのために、自分を引き止めるために寝ずにいてくれたのかといとおしく温かかった。
手のひらの神楽の込めた祝いの祝砲を微笑みながら見つめた。
早朝だが銀時を起こしてリーダーを寝かせてやらねばなるまいな
きゅっと手の中のものを握る。
「心臓が止まるかと思ったと叱られそうだな」
にかと笑う神楽に向かって桂がふわり笑った。
fin.
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