話
エンゼルライク (高桂)
ぎんときの髪はふわふわキラキラしていて、まるで天使みたいだ
と桂が言う
興味がなさそうに黙って視線だけ向ける
やつの話など聞きたくないのだ
そんな俺の様子は気にも留めず桂は身を乗り出す
「きっとあいつは天使なのだ。晋助」
机に手をつき瞳を輝かせながら熱く語る桂にいらりとする
天使というのはな晋助
神様の使いでな、天と下界を行き来している者なのらしいぞ
「なぁ、だったら銀時のやつはこの世の者じゃねえな」
桂が眉をひそめる
「いつか帰っちまうんじゃねぇの?」
表情を失って一瞬凍りつく、さきほどまでの元気はどこへやら、桂はうつむいてひざに置いた手で拳を握った
そんな桂によりいっそう腹がたつ
そんなにいなくなられたくないのか。あいつに
桂は力なく、そんなことはない‥‥とだけ呟くと意地悪げなうす笑みを浮かべているであろう俺の前から立ち上がり自分の席へと戻っていった
おまえはおせっかいでなんにでも首を突っ込みやがるからな
銀時にかまう桂にそう納得はしているものの、時折襲う苛立ちに不機嫌にならざるを得なかった
桂が教本を開いて読み始めてしばらくすると銀時が教室に現れた
桂が銀時を呼び止めると銀時は足を止め桂を見る
それでも座るわけでもなく刀を抱えたまま顔だけ桂に向けていた
この苛立ちはそんな礼儀のなっていない銀時に憤慨しているだけなのだ、と自分に言い聞かせる
銀時と桂がなにを話しているかは聞こえなかった
が、銀時が何かつぶやく。すると桂は嬉しそうに笑った
あいにくおれはおまえを笑わせるような気の利いた冗談なんざ吐き出せねぇんだ
盗み見た肩越しに見える桂はすっかり空気が変わり、結んだ黒髪を揺らし頷いたり首を傾げたりしながら銀時を見上げて嬉々として話していた
おまえのほうが、と思う
おまえのほうがよほどこの世の者じゃねぇみたいだ
いつかその名を冠した星に帰ってしまうんじゃねぇか‥‥‥
黒い夜空に浮かぶあの柔らかな光の中へと
そこに帰るのは天使ではなく、罪を犯した、さしずめ堕天使と呼ぶに相応しい女だったけれども
そんな思いに囚われた自分が可笑しくなって、付いている肘を組み替えやつらを視界から消した
〜fin〜
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