攘夷派で伍の御題


「お前さんはいい女だ」

「ぅふ そう?」


い や だ …



「…だがな、俺が護りてぇ女じゃねぇよ。残念ながら」

「……え」

「いい女だが、それは職業柄を誉めてのことだ」

「……晋助さん…?」

「それでもいいなら連れてってやらァ。ただし俺がお前さんのために命張ってやるかどうかは別だ」

「―――っ…」


女の人が唇を噛むのが伝わってくる。
ひどいことを言うなぁと思った。


「それに俺はまだ命張っても自分の女護れるかどうかが知れねぇ。だからみすみす失う危険性のあるところに大切なモン持っていきたかねぇんだ」


あたしの思考は依然ぼーっとしたまま。

晋助が…らしくないこと言ってる…


「それなのに離れねぇって聞かねえバカはいるけどなァ…ククク…
オイ、いるんだろ、高杉に一途な娘」



――、…


「聞いてんだろ。そういうわけだ」

「…晋助さん?」

「お前、俺のこと好きになんなら察しろよなァ?こんなこといちいち言わせんじゃねぇ」


――…晋助…?
…ソレ、ほんとにあたしに言ってるの…


晋助は明らかに隣の女の人に向けて言っているような話し方じゃなかった。少しだけ空を仰いで、声を遠くに飛ばすような姿勢で微笑んでいる。

けれどあたしは自分の耳を疑わずにはいられなかった。


「俺の目の前で傷つくな。俺がやること全て終えて帰ってくるまで待ってろよ 高杉に一途な娘」

「……」

「ここまで言わせてそれでもまだついてくる気か?そんな身体でも」


――ばか…


泣いたら負けだと今まで思ってきた


けれど あたしは高杉に完敗。
あんたには勝てないや。


自分の嗚咽する声が 恥ずかしくも夜の川に響いた。





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あきゅろす。
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