攘夷派で伍の御題



そして月日は経ち、何度目かの満月が闇を照らした頃、

晋助が帰ってきた。


…鬼兵隊は壊滅した。
隊士のほとんどはさらし首にされ、生き延びたのは晋助のみかもしれない、と後から聞いた話。


ボロボロになった鬼兵隊の制服を身に纏い傷ついた体を引きずるようにして、待ち焦がれた姿があたしの目に映った。


「――しんすけっっ!!」


あたしの身体は脳みそよりもいち早く反応して、愛しい人の側に駆け寄った。

血や泥塗れになった晋助。こんなに傷付いた彼は見たことない。
そんな姿を目の当たりにして、足元が底抜けしたような酷い焦りに襲われた。


「よくここが分かっ…」

「…クク…生きてたか」


苦しいはずのに、余裕そうな笑みを浮かべて喉を鳴らしている。


「…うん。晋助が帰ってくるの待ってたんだから」


晋助がやられる前にあたしが死ぬわけに行かないよ。
あたしは、あんたを守りたい。


細める晋助の両瞳に揺れ動く陰がいつまでも印象に残った。



鬼兵隊の敗戦は、敵の士気を高めるきっかけになった。
ますます激しさを増す戦争。
あたしたちはろくに休まず昼夜戦場を駆け巡る事もしばしば。


それは、あたしも限界を感じずにはいられなかった。傷が癒えるのにも今まで以上に時間がかかるようになった。喰い縛って歯が欠けそうな程の苦痛を耐えて何度も刀を握り直した。


久しぶりに休める日が巡ってくると、あたしは空き家の片隅でうずくまっていた。足や腕が重たく、自分の物で無いような気がしていた。

辰馬やヅラや銀時が、励ましているのか心配しているのか茶化しているのか知らないけど、側にいてあたしを気に掛けてくれる。

もう、あたしが動けないことにみんな気が付いてるみたいだった。


…あーあ。
あたしも所詮女だった。

お荷物になるなんてまっぴらなのに…



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