攘夷派で伍の御題



寺の参道の石段を駆け降りていると、下の方から銀色が左右に揺れながら近づいてくるのが見えた。


「ぎんときィィィーー!!」

あたしは渾身の声でその天然パーマの男を呼ぶ。

タルそうにこちらに顔を上げる銀時。手には紙袋を提げ、口にみたらし団子を加えて虚ろな双眸がこちらを向いた。


「晋助知らなーい?」

「知ってるって言ったら?」


みたらしのタレで汚れた口元が悪戯な形を作っている。


「…なによ。何かおごれっての?」

「えっ!マジでか♪じゃあ三沢屋の鯛焼き十個入り♪」


タン タン と、あたしはリズミカルに階段を降りていって、そのままその勢いを使って

「――ぶがほっ」

下から顎に拳を決めてやった。


「他人の恋路を邪魔すんな」


銀時は惨めにも叫び声をあげながら階段を数段転がり落ちていった。


「――何ナニ!?何でそんな怒ってんの?!冗談も通じなくなっちゃったよこの娘υ」

「あたし真剣に探してんだよ。ふざけるのも大概にして!知ってるの、知らないの、晋助の居場所!」


頭やら身体やら痛むところを擦っている能天気男をギッと思いっきり睨み付けてやる。

焦ってんのよ。晋助は今にも本当にどっかへ行ってしまう。
あたしがちゃんと掴んでいない限り、何も言わず去っていっちゃう。

…そういうやつなのよ…


「…ねぇ 銀時、ホントは知ってるんでしょ?」

「……υ 知らねぇよ。お前はホント、高杉の事になると周りが見えなくなるな。今にすっ転ぶぜ?」

「いーもん別に。晋助のためならどこ傷つけたって痛くない」

「御上かよアイツぁ」


そんな嫌味も聞き慣れた。
だってほんとの事だもん。

だから今こうして攘夷戦争にも参加して、尚且つ晋助がこれから結成させようとしている鬼兵隊にも加わろうと。

晋助の右腕に、…うぅん、毛の一本だっていいよ。
傍にいて役に立ちたいんだ。


あたしはそのまま石段を降りてって、町へ向かった。


…けれどあたしの浅い土地認識では、こっそりと集う攘夷志士の居場所なんて見つけられっこなかった。




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あきゅろす。
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