攘夷派で伍の御題


長い髪を風になびかせ、男は去っていった。


守りたいものがあるから、戦うことをやめない、己とは一生戦い続ける、と亡き恩師に誓いながら。






墓前に残った娘の耳を、再び蝉たちの合唱が占めた。

置かれた簪に視線を落とす。


「お礼…言われてしまった…」

たまたま今日は足を止めて、もうなかなかこの墓地にも来れなくなるだろうと感じた故の、餞別にも似た想いからだったのに…。






男も娘も、墓前というのは不思議な場所だと思った。

普段甦らせることの無い記憶や自分の本当の気持ちが素直に湧き出てきたのだから。



人というものは、生きているうちにいつの間にか来世に縋ることを覚えるらしい。
今自分が生きている価値や方向性や目的の答えを見出したいがために、
人は亡き人の言伝を守り、思い出す。




想う来世の人の面影を胸に、それぞれは今を生きていく。





fin...



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あきゅろす。
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