攘夷派で伍の御題
2
「――晋助ッッ!」
あたしは部屋の中から障子戸を勢い良く開けた。
外の明るい日差しと一緒に視界に飛び込んできたのは、振り返った二人の男。
「高杉はここにはおらぬぞ」
「え〜〜〜っ」
「アッハッハ!元気じゃの〜高杉に一途な娘」
いつもながら冷静な声音のヅラと、最近あたしたちの仲間に加わった天パ笑い上戸の辰馬。
「〜〜っ、まーたフラフラどっか行っちゃうんだからぁ」
一体どこにいんのよっ。
「町にでも下りてるのではないのか?」
「こんな真っ昼間から女に会いに行っちょるちゃァ、高杉も抜け目ないの〜」
「Σえッ!?女んとこ?!」
「オイ坂本υ、…鬼兵隊の談会だろう。最近は夜の幕府の目が厳しいから、日中の方がかえってやりやすいんだと思うぞ」
「また行っちゃったの〜っ?」
女のとこは一番ヤだけど、たとえ鬼兵隊の話し合いでも今はとにかく嫌だ!
あたしの膨れっ面を笑ってくる辰馬と、やっぱり微笑しているヅラをじっと見つめた。
「…鬼兵隊…あたしも入りたいって言ったのに…」
何度お願いしても、返ってくる返事は『ダメだ』か何も言わずソッポ向いちゃうか。
「高杉に一途な娘、気持ちはよく分かるがな…」
「銀時は知ってるかな、晋助がいるとこ。聞いてみよっと。ヅラ、辰馬 ありがと」
「ヅラじゃない 桂だ!――オイ高杉に一途な娘っ…υ」
「高杉も愛されてんの〜。羨ましい限りじゃ」
ヅラの言葉さえぎっちゃったけど、今あたしは晋助しか考えられない。
豪快な笑い声を背後に聞きながら寺を駆け出した。
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